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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

17歳。

作者: 奇言夜命

暑い今年の夏のある日のこと……

16年前の惨殺事件と、洋館で起こる不思議な出来事がからみ合う。


 夏休みも始まり暑さも少し和らいだ曇の日、祖父母の家に家族4人で遊びに行くことになった。



 祖父母は、良い場所に在る洋館が空き家になっていたのを、かなり安い値段で購入して住んでいる。

 それは白い壁が美しい一部三階の建物で、昔ココに住んでいた外国人が建てたと云うかなり古いものでしたが、とても祖父母は気に入っていて、


 「この家はとても良い買い物だった、少しローンが残っているから2人の年金でぼちぼち返済していこうと思ってる。」と、意欲も満々だったはずの祖父でした、が…… この家に来て半年くらいたったある日、

 残念なことに亡くなってしまったのです、三ヶ月前のコトでした。とても急だったから私たちは本当に驚いたのです。



 久しぶりに会った祖母はなんだか元気がない。


 「お祖母ちゃん大丈夫? 暑さのせいかな、」大学生になったというのに、サッカーばかりしている兄が祖母を気づかった。



 「お母さん、もう60歳になるんだから無理しないでね、」


 「お義母さん、無理なさらないでください。後は自分たちでやりますから、」


 母と父は一通りの挨拶をすると自分たちの部屋へ荷物を起きに行ってしまった。



 「お祖母ちゃん、お祖父ちゃんが亡くなって、まだ時間たってないから……」


 私は祖母のことが心配だ。一緒に住もうかとも思ったけど現在17歳の女子高生では…… どう仕様も出来ない。


 一家で遊びに来たのも、一人になってしまった祖母をはげますためで、なかば強引に私たちで決めてしまったことだった……



 「そ、そうね、今年は暑いからね、大丈夫よ……」


 祖母は力無く返事をすると、そそくさと台所へ入ってしまって…… 私は後を追おうとしたけれど「あなたも自分の部屋に荷物を置いてきなさい、」との母の声に従い二階に用意された自分の部屋へ行くことにしたのです……



 「まさかコノ家を買うなんてな、」


 「しっ! あの子たちに聴こえるわ……」


 私が隣りの部屋の両親に、荷物を置き終わったコトを伝えに行くと、二人は何か話していたけれど、内容は分からなかった。


 「もうクローゼットにも服を掛けてしまったわ」


 「そ、ぁそう! リビングに下りましょうか、」


 母と一階のリビングへ行こうとして、実寸大の日本の鎧のオブジェの前を通り過ぎた時、視線を感じたのは気のせいだろうか……



 リビングへ下りてきたけど祖母の姿はなかった、



 「ギャー、たすっ、助けてーーー!!」



 上から声がする、父の声だ! 私は、急いで二階へ階段を上がると父に、さっきの鎧が覆い被さって、槍で父を突こうとしている! それを必死に両手でかばう父だが、赤いものがミストに飛び散って、絵具を散らしたようになっていた。

 私は身体が動かなくなってしまって…… すると、母が鎧へ体当たりをして押し退ける、

鎧は横に倒れたけど、もの凄い速さで起き上がると廊下を脱兎だっとの如く走り、向こうの階段へ居なくなってしまった……


 「何だ、今の鎧は!?」目の前を走り去った鎧に驚く兄の声がした、そのまま追いかけて行ってしまったようだ。


 「救急車を、早く、救急車を!」


 母の叫びに私は我に帰ると、スマホで119番して救急車に来てもらった。

 その間、両親は何事か小声で話している、



 「事件性は有りそうですか?」救急隊員の問いかけに母は、


 「いいえ、鎧が倒れてきただけですから、」と答え、一緒に救急車に乗込んだ。


 兄は鎧だけを三階で発見し「中身は見失ってしまった、」と言っている……



 お祖母ちゃんの姿はしばらく見えなかったけれど、さっき下りてきたみたいだった。




 …… しばらくして、リビングのグランドピアノを引く音が聴こえてきた。母が戻って来たようだ。母は小さい頃習っていたことが有って…… クラッシックなどの音楽が好きな母は、自分の気持ちを落ち着かせるために弾いているのだろうか。

 ピアノは元々あった物で、前住んでいた家族が置いていってしまったらしいと祖父が話していたっけ……



 「ガァン!! ガァン! ガァン!!」


 凄いピアノの音が3回して…… ピアノの音が止まった。


 「オイ! 早く! 早く救急車を!!」兄の声だ!


 下りて行くとリビングで倒れた母を、兄が抱きかかえているところだった。ピアノの白い鍵盤が赤く染まり、倒れた母の両手は血だらけだ……


 「フタが…… 閉まったんだよ!」


 呼んだ救急車に乗せられる母は「あなた達、あの家を出なさい! お祖母ちゃんの事はいいから、」と言い残した。

 病院には兄が付いて行くことになって、私はやはりお祖母ちゃんが心配で残ることにした。



 私とお祖母ちゃんはリビングで一言も話さず、ただ古い掛時計の振子のカチカチという音だけが響いて、二人の呼吸のリズムと共鳴し。

静かなはずの広い部屋は五月蝿く雑音に満ち、耳を手で今すぐに塞いでしまって、外に飛び出したい衝動にかられるのを私は我慢していた。




 病院から帰ってきた兄はとても興奮していて、そして祖父が大切にしていたゴルフクラブを持ち出すとそこら中で振り回し、


 「出て来い! 出て来い!」と大声でガ鳴りたてる。


 「どうしたのお兄ちゃん!」


 「いいかお前! ココを動くなよ、」と言ったかと思うと階段を駆け上がってしまう、祖母も後を着いて行く。


 私は、そんな騒ぎをまるで実感出来ずにいた。リビングの深いソファーに身をゆだね、なぜだかとても落ち着いた気分だったのだ。



 リビングに祖母だけが入ってきた、私は前から疑問になっていた事を思い切って祖母に質問する気になったのだ。


 「ねえお祖母ちゃん。お祖父ちゃんはどんな風に死んだの? 詳しく聞いてないんだけど。」


 「お、おぉ…… お祖父ちゃんはねぇぇ…… 突き落と、いや…… 三階の窓から飛び降りたんだょ…… 三階でね、」

 「三階でね、いつも変な音がするから、今日こそは! それを確かめてやるって…… ゴルフクラブを持って上がっていってね……」


 …… 話しの途中で、祖母は台所へ入ってしまった…… ショックだったのだろう。震えた声で、精一杯説明してくれる祖母が、私は愛おしくなった。


 台所から出てきた祖母は話しを続ける。


 「しばらくしたら、ギャー!って、すごい声が庭からして、庭へ出たらお祖父ちゃんが倒れてたの……」

 「それでね、それでね…… こんな風にだよ!!」


 何かがブウんと跳んだ!「グワァ……」


 祖母のこの声に私は驚いて、後ろを振り返り祖母を見た! 祖母が鼻血を出して倒れている、手には包丁が固く握られていた。


 「大丈夫か……」兄だ! 兄がゴルフクラブを祖母に投げつけたのだ……


 兄は祖母から包丁をうばい投げ捨てると、祖母をビニールひもで縛り上げている。


 突然のことに私は固まってしまったけれど…… やっと立ち上がり「どうしたのお兄ちゃん!」と声を出すことが出来た。


 「オレは、祖母ちゃんに三階から突き落とされたんだ! たぶん父さんや母さんも、そして祖父ちゃんも…… 祖母ちゃんにヤラれたんだヨ!!」

 「ただチョット可笑しな処も有るんだけど…… なんで祖母ちゃんがオレたちにこんな事、しなきゃならないのか…… それが分かんないんだヨ。ただ…… とにかく、救急車 呼んでくれないか、オレも流石に限界だ……」


 そう言い終わると、兄は膝を付き肩で息をしている。サッカーで鍛えた兄の体力が、祖父とは違う結果を招いたのであろうか、


 救急車が来ると気絶して縛られている祖母の事情を兄が話し、三階から落とされたと言う兄も乗込んだ。


 「お前も来い! この家にお前一人を残せない……」兄が私にそう言った、そうだなと思い、祖母の落とした包丁を拾い上げると、それをバックに入れ私は救急車へ乗り込む……




 運転席では、二人の隊員が噂話をしていた。


 「ココの家、出動要請多くないですか?」若い隊員が怪訝けげんに思ったのであろう。先輩隊員に質問する、


 「ココは前からだよ、前から!」先輩隊員はそれに応じると、ゆっくり重い口を開いた……


 「俺が知る限り…… 誰かが住み着くたびに何かがあって、警察が呼ばれたり…… 救急車で搬送される人が続出したり…… とにかく、誰も居ないのに物音がして…… 夜、白いもやみたいのが動いたとか、聴くんだよネ……」

 「…… なんでも、これは聴いた話しだよ……」

 「…… ええっと、16年前、あそこに住んでた3人家族の親が。男女二人組の強盗か何かに二人とも惨殺されたんだよ。そりゃあもーーむごいモノだったらしい……」

 「…… それで、1歳になる女の子が居たんだそうだけど、その子が…… 行方知れずになってるんだよ、多分…… 強盗にさらわれたんだな、生きてれば現在17歳。」




 救急車は走って行く、


 …… 私は、祖母が落とした包丁をバックの中で今、握りしめたのだ……


【夏のホラー2018】参加作品。

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