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うんこ大爆発  作者:
5/25

5

「ボンバーチーム……出動要請。すぐに来い……! ボンバーチーム……!」

 爆炎の傍らに転がっていた暴走族の一人が、息も絶え絶えながら、携帯に向かって叫んだ。

「ボンバーチーム?」

 俺は言った。

「おまえら……覚悟しろよ……」

 暴走族の男は不敵に笑った。

「うちはただの暴走族じゃねえ……。警察とでも互角にやり合えるように訓練、編成されている……。その中でも一番の攻撃部隊が、ボンバーチーム……。このチームが作られたのは今日、つーか、ついさっきだが、この意味がわかるか……? くくく……」

『総長、あんた、喋りすぎだ』

 そのとき、スピーカーで拡声された声が聞こえてきた。

『そして、今から俺たちボンバーチームは、あんたから独立する』

「なにッ……」

 どうやら総長らしい暴走族は、途端に青ざめた。

『部下に力を持たせるとはどういうことか、もっとよく考えるんだったな。――GO TO HELL(地獄へどうぞ)』

 総長の頭上に、うんこが降ってきた。

 俺は叫んだ。

「伏せろーーーーーーーーーっ!!!」

 ドァオオオオオオン!!

 吹き付ける茶色の爆風を、俺たちは倒れたバイクに隠れてやり過ごした。

「ぐうっ、あちィ!」

 美良野が叫んだ。空気が火傷しそうなほどに熱されている。

 これまでのうんこ爆発でも温度の上昇はあったが、ここまでではなかった。

「ぐうあああ………」

 総長以下、爆発をまともにくらった暴走族たちは、体から煙を上げてのたうち回っていた。

『昨日食ったニンニクのせいさ』

 声が聞こえたかと思うと、爆炎の立ち込める路地に、一台の乗用車が音もなく現れた。

 それは、トヨタのプリウスだった。

『ほう、お前たちはまだ無事なようだな。……だが、俺たちボンバーチームの連続無音爆撃に耐えられるか?』

 搭載されたスピーカーからだろうか、そのような声を発すると、プリウスはまた音もなく走り去った。

 間をおかず、うんこが空高く上がって、落下してきた。

 ボンバーチーム……車内でしたうんこを投擲する戦術か……!

「ヤベェ!」

 美良野が伏せようとしたが、

「いや、タイミング的に今したばかりだ! 二十秒は余裕がある! 逃げるぞ!」

 俺が言って、他二人とともに走りだした。

 民家の陰に隠れたところで爆発が起きた。地響きと、ブロック塀の崩れる音がした。

 ドォォォォン!!

 ドォオォォォン!!

 さらに続けて、二度、近場で爆発が起きた。

「デタラメにうんこを投げてきてるのか」

 俺は言った。

 ドォオオオオオオオオン!!!

 今度は塀を挟んだすぐ間近での爆発。容赦ない熱風が吹き付けてくる。

「ちげえ! こっちの位置バレてるぞ!」

 美良野が叫ぶ。

「あ……。あれ、もしかして」

 優陽が指した上空、それも、うんこの飛散も届かないような高度に、ドローンが浮かんでいた。

「あれで俺たちを見てるのか」

 俺は言った。

「一方的じゃねえか! こっちには連中が全然見えねえのに!」

 美良野が言った。

 優陽はじれったそうにしている。敵の場所さえわかれば、彼女の直接攻撃ですぐに決着はつくはずだ。

 しかし相手はプリウス。

 噂には聞いていたが、本当に静かな車だ。

 憎いことに、今のこの状況におけるドローン、そしてうんことの相性が抜群に良すぎる。

「デタラメに動かなきゃなんねえのはオレたちの方だぞ長浜!」

 美良野が叫んだ。

「散れ! 散れ! 三人バラバラに逃げるぞ!」

 俺が指示を出した。

 こくりと頷く優陽。

 俺たちは駆け出した。

 しかし三人とも全く同じ方向に向かったので、俺と美良野の足が絡まり、そこに優陽も衝突して、結局全員転倒した。

「!」

 仰向けで見た空に、うんこが三つ放られた。

「三つも……」

 俺は呆然とつぶやいた。

「どんだけうんこするんだ……」

 美良野も諦観の表情で言った。

 優陽は歯を食いしばり、落ちてくるうんこを睨みつけていた。

 そのとき、彼女の袖が何かに引っ張られた。

「こっち……。早く……!」

 先程、暴走族に略奪を受けていた男の子だった。

 彼が示す先では、うんこまみれの家の窓が開いて、彼の母親が顔を出していた。

「どうぞこちらへ!」

 俺たちはバタバタと這うように走って、窓から家の中へ飛び込んだ。

 俺が窓を締めた直後、

 ズゥウウウウウウン!!

 大爆発が家全体を揺らした。

「すげえ、この家、こんな近距離の爆発に耐えてるぜ」

 男の子を抱えた美良野が言った。

「積水ハウスの家なので、頑丈なんです」

 と母親が言った。

「マジかよッ」

「さすが積水だ」

「すごい」

 俺たちの中で、積水ハウスの株がブチ上げになった。

「しっ……!」

 男の子がその騒ぎを制した。

 外からスピーカーの声が聞こえてきた。

『どこに隠れたんだ? まあこの辺りの家の中だと見当はついているが。……一つ一つあたっていこう』

 ズウウウウウウンン……!

 爆発音がした。家が一つ潰されたのだろう。

『ふむ、瓦礫の中にいない。まだ生きているようだな。別にお前らに恨みはないが、会うやつ全部を糞にまみれさせる、それが俺たちボンバーチームの信念だ。言っておくが、弾切れを期待するだけ無駄だぞ。五人乗りプリウスの、運転手以外は全員爆撃兵――排便コントロールに長けた精鋭だ。まだ余力の三分の一も出しちゃいない』

 ズウウウウウンン……!

 また一軒、家がやられた。

『残ったのは……積水ハウス!』

 スピーカーの声が間近で響いた。

「見つかっちゃった……」

 男の子が絶望の声をあげた。

「大丈夫だ」

 美良野が言った。

「お前はママと一緒にここに隠れてな。うんこを家に放り込むってことは、目の前にプリウスがきてるってことだ。やられる前に、オレたちが出ていって、逆にヤツを叩く」

 俺もうなずいた。

「プリウスだって至近距離の爆発は避けたい。接近するのがむしろ安全なはずだ」

「行ってくるよ」

 優陽が男の子の頭を撫でた。

『ちょっと待てよ、今、でかいのをひねり出してるからな。こいつを、割った窓からぶち込んでやるからな』

 スピーカーからの唸り声が聞こえてきた。

 今しかない。

 俺たちは、うんこまみれの窓を開けて、外に飛び出した。

『……なーんちゃって』

 そこにいたのは、ドローンだった。

 スピーカーがついていて、声はそこからしていた。

『迂闊に近づくわけないだろ。その女子の半端ない強さは、俺たちもドローンで観てたからな。――ところで、周りを見回してみな。なにがある?』

 うんこだ。

 周囲は大量のうんこに囲まれていた。

『親切に教えてやろう。二十七秒経過。あと三秒でアデュー』

「――窓を閉めろオッ!」

 美良野が振り向いて、積水の家に叫んだ。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

 男の子の泣き声が響いた。その隣で母親が窓を閉めようとするが、うんこがこびりついていて、女性の力ではうまく閉まらない。

「間に合わない……」

 そう言う以外、俺は何もできない。

 三秒経過。

 うんこが、爆発する――。

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