男は転生する2
『それを踏まえて、私はあなたしかいないと選んだのです。それに、あなたを選んだ理由はもう一つあるわ。』
女が再び指をパチンッと鳴らすと、床の【写真?】が変わる。
床の写真は右と左と二種類別れ、左右別の場所を撮った物のようだ。
『これは、あなたの世界と混沌の世界の映像よ。』
そこには、右の写真と左の写真とは全く別の背景が写しだし、左右一人ずつ、見知らぬ男をとらえていた。
「なんだこれは?」
左右写しだしている男の顔、全く同じ顔だったのだ。
『この映像の二人は同一人物です。』
「この世に俺と同じ顔がもう一人いるって事か?」
『正確に言うと。【この世】ではありませんけどね。』
そこで、男は一つの疑問が生まれる。
「じゃあ、あっちの世界には俺がもう一人いるのか?」
『それが、あなたを選んだ理由の一つです!』
女は笑いながら指を鳴らすと、写真が消える。
『本来は、同じ世界に同一人物は存在してはいけない。同じ世界に同一人物がもし存在してしまうと…死ぬわ。』
先ほどまで、笑顔が急に真顔に変わる。
「じゃあ、俺は?」
『あなたは、混沌の世界には存在していないわ。何故存在しないのかは分からないけど、産まれる前に死んだりすると存在してない事になるのよ。』
そうか、これでわかった
俺が選ばれた理由が、、、
ということは、もしかしたら、あの人やあいつらがあの世界に…
『さぁ、最後はあなたが選びなさい。神の使者となり混沌世界を救うのか、このまま未来の世界で記憶を失い平和な世の中で暮らすか。』
女は男に手をさしのべる。
男は決断したように、女の手をとった。
ゴホン
女はわざとらしく咳払いをする。
『さぁ、あなたはどんな力が欲しいですか?』
「力?」
『そうです!せっかく、蘇らせた神の使者が一瞬で死なれては笑えないわ。だから力を与えます。例えば、【無限に魔法を使える能力】【時間を止める能力】【相手の能力を奪う能力】など、いろいろあるわ。』
女はまるで、商人が商品を並べるように能力を言い並べる。
「俺は……」
男はしばらく考える。
「例えば、折れない刀とか?」
『そんなのでいいの?』
女は呆れるように聞く。
「ああ、はっきり言ってお前が言っている言葉の意味がイマイチ理解できない」
男は【魔法】という言葉は知らない
いきなり「能力がどうのこうの~」など
意味が分からないのだ。
「それなら、俺が願う力というか、最高の武器が欲しい」
男の今まで何本の刀を折り、自分の記憶では先ほどの戦いでも自分の愛刀が刃こぼれしていた。
『そんなの簡単。これ、あなたの刀よね。』
女はどこに隠し持っていたのか、一本の刀を取り出した。
「その刀は…」
女が持ってる刀は【和泉守兼定】男の愛刀であり、魂といえる名刀である。
『そうです。あなたの愛刀です。死ぬ寸前まで握っていたものです。これを改良しましょう。』
女はそういうと刀を抜き、刃こぼれでボロボロの刀身を軽く撫でる。
撫でた刀は光りだし、数秒後には消える
光りが消えた後は、先ほどまであった刃こぼれが無くなり、元の刀に戻っているように見えた。
『はい。出来上がりです。』
女は刀を鞘に戻し、男に渡す。
「うっお!」
男は刀を受け取った瞬間、床に落とした。
この刀は男の愛刀、何回も振り、腰に差してきた。
だが、今まで馴染んでいた、刀の重さの何倍…いや、何十倍以上の重さを感じ、刀を床に落としたのだ。
『あら、重いの?』
女は、不思議そうに男の行動を見る。
「当たり前だ!一体何貫あるんだ?」
『元々の刀の80倍くらいかしら?』
※通常の刀の重さは約1.5キロ
男はなんとか刀を持ち上げる。
『あらあら。こんな重さの物も持てないの?これだから下界の者は…』
「こんなもんで、戦えるか!」
『でも、これより刀を軽くしようとおもったら、脆くなるわ。この刀の素材は【ゴッドメタル】といわれる、この天界でしか手に入らない鉱物に変換したのだから。』
女から【ゴッドメタル】という単語が出たが、見た目は今までの刀とは変わらないように見える。
『仕方ないわね。』
「なっ!」
女は男の下に向かい、男の額に指を当てる。
その瞬間、男はドンッと尻餅をついた。
「刀がいきなり軽く!?」
男は、刀の重さの変化についていけずバランスを崩したのだ。
『刀はこれ以上、軽くできないけど、あなたの力を上げることで、その刀を昔のように振れる身体に変換することができるわ。』
刀を振ると、ヒュンと空気が切れる音がする。
男は思う。
80倍の重さがある刀を今まで通り振ることができるということは、自分の力も80倍に上がったということなのかと。