男は転生する1
─箱館─
ここは、銃弾が飛び交う戦場
その男は、銃弾の雨に撃たれてなお、立ち上がるり
俺がここで死ぬわけにはいかない!
ここで倒れたら、死んでいった、あの人、あいつらに顔向けできねぇだろうが!
そこで、男の意識が途切れる。
持っていた刃こぼれした刀と共に
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男は、目を覚ます。
ここはどこだ?
俺は戦っていた筈だ
誰と?
どこで?
何の為に?
俺は……誰だ?
男はハッと起き上がる。
完全に意識が覚醒したのだ。
今、何が起きているのか分かっていない。
周りには黄金に光る柱
天井には、きらびやかな硝子でできた、飾り
その飾りは、白く明るい。
今まで見てきた光の中では太陽の次に強い光を放っていた。
男はようやく、ここが建物内と分かった。
その、建物は広く奥まで続いてる。
早く戦場に戻らないといけない
刀を探す、だが刀は見つからない。
『あら、ようやく目が覚めたのかしら?』
頭の中に声が響く。
「誰だ!」
男は始め声をあげる。
『そんなに怖い顔しないでください。』
顔?
振り向いても周りに誰もいない。
「ここはどこだ、何故俺はここにいる?お前は誰だ!?」
『ここは神の部屋、私は部屋の奥にいます。お出迎えできなくて申し訳ありませんが、このまま廊下の奥にいる私の下までお越しくださいませ。』
その声に従う
ここはどこで、どういった経緯でここに来たかのか分からない以上、出ることができないと判断したのだ。
果てしない黄金でできた柱に囲まれた廊下は、廊下というには広すぎる
俺はその廊下を歩く。
そして、廊下の突き当たりにまるで壁のような強大な扉の前までついた。
男が開けようと、その扉を触れようとした瞬間、扉は勝手に開く。
扉が開き、その部屋の奥に豪華な装飾日に飾りついた椅子に気品ある女が足を組み、こちらを見下ろすように座っている。
『お疲れ様です。いつまでそこに立っているの?早くこちらにいらっしゃい。』
女の声は先ほど、頭の中に響いた声の主と同一人物だと理解できるには十分だった。
『椅子を用意しましょう。』
女が指をパチンッと鳴らすと何もなかった空間から椅子が現れた。
その椅子は女が座っている椅子よりも明らかに粗物に感じる。
『据わらないの?』
女は男に笑いかける。
男は驚きを隠せないまま、椅子に腰掛ける。
椅子に座ると腰が沈む、女が座っている椅子より粗物に感じた椅子は、男の人生の中のどの椅子よりも良い座り心地だ。
「それで、何故俺はここにいるんだ?」
男は、数ある質問の中から
最も気になる問いをかける。
今、男の中にある情報はここは[神の部屋]という場所
この女は強大な資産があるのだろう、この部屋と先ほどの黄金や、目の前にある豪華な装飾に囲まれた椅子
妖術か…?
今、自分が座っている、椅子を撫でながら考える。
『あなは、私によって蘇った魂、あなたは新しい身体を手に入れ生まれ変わるのです!』
「生まれ変わる?ってことは俺は死んだのか…?」
『その通りです。当たり前でしょう?あなたの身体は蜂の巣のように穴だらけだったのよ?』
男は自然と自分の身体に手を回すが、外傷は感じない
だが、確かに自分が銃弾の雨を受けた事を記憶の片隅にある。
「戦争は終わったのか?みんなは?どうなったんだ!?」
男は立ち上がり、声を荒げる。
自分が今やらなければならなかったこと、自分の使命を思い出す。
『みんな死にましたよ。』
女はまるで、人気のように感情無く答える。
「そ、んな…俺達は負けたのか…」
正直、負けることは分かっていた。
だが、まさか、全員が戦死したとは…男は崩れ落ちる。
「俺は何のために…」
『なにか勘違いしてますか?あなた達は確かに戦争には負けましたが全員が死んだわけではありませんよ。』
「え?」
『人間には寿命というものがありますからね~』
女は再び指をパチンッと鳴らすと、床が光だし[写真?]が映りだした。
『これは、あなたが死んで、えっと…約200年くらい前?の世界です。』
「なんだ、これは…?」
自分が生きていた世界とはまるで違う世界に驚く
今まで見てきた、どの街よりも目の前に広がる街は輝いて見えた
いつも道端に飢えた子供はいない、目が死んでる民もいない
その[動く写真?]には、はしゃく子供達、首に襟締を巻き何か薄い板のような物に話しかけているのが分かる。
「輪廻転生だったか…」
昔、京の僧侶から聞いたことがある。
人は生まれ変わり・死に変わり、車輪が回るように繰り返すと
自分が、新しい世界に生まれ変わるのか
『少し違うわね。今回私があなたを蘇らせるには理由があるの、私はあなたは使命を与え、別の蘇らせる予定です。』
「別の世界?」
『そう!あなたはその世界の救世主!神の使者として降臨し民を導くのです!』
女は立ち上がり、両手を広げ高々と掲げる。
「断る!」
即答する。
『はい?』
「何故、俺がそんなことをしなければならないんだ、だいたい、俺なんかよりも適任者がいるんじゃないか?」
男は考える。
民をまとめるのだったら、俺達に道を示した【あの人】…
強さなら、若くして亡くなった【あいつ】…
男は過去の仲間達の顔を浮かべる。
『いいえ。あなたしかおりません。人々をまとめる力だけでは敵には勝てません。強いだけでは誰もついていきません。それに、あなたには可能性があるんですよ?』
「可能性だと?」
『そうです。あなたには強くなれる可能性があるんですよ。今よりずっとね。それに…』
女は続く。
『実は、先日あなたを呼ぶ前に一人転生させた人がいるんです。』
「俺を呼ぶ前にって、さっき『あなたしかおりません。』って言いながら、俺以外にもいるんじゃねぇか!」
『そうなんです。はっきり言って失敗しました。前回の転生者は、まさに【悪】。神の使者どころか、あろうことか魔王側についてしまったんです。』