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先ほどの6と七宮の戦いを陰で見ていた3は次の標的が自分であると考えていた。彼は二葉との戦いの後、宗教国家を出て帝国に潜んでいた。あのままあの国にいれば間違いなく見つかっていた。彼にとって二葉は攻撃が通用しなかった天敵である。今のところ何の対策もできていなかった。再び彼女との戦いに備えて先に他の転移者の情報を得ようとしていた。二葉への対策のヒントを得られなくても先に敵を減らすことができる。いつまでも他の転移者を放置していれば転移者同士で同盟が組まれる可能性もある。
3「あいつ、最後の転移者は本体じゃないって言っていた。どこかで憑依か何かしらで操っているということになる。幸い俺の存在はまだ知られていない。しかし、一人目の転移者が見つかるということは情報戦ではこちらが不利か。だが……」
もう日は落ちてすっかり夜になった。
七宮『そこの男、ゆっくりこちらを向け!』
七宮が差し向けた大勢の刺客が一人の男の周りに集まっていた。囲まれた男はこの世界では見慣れない服装をしていた。
3「は、早くも見つかったか!もしかしてお前は転移者か?」
七宮『まあ、そういうこと!本体じゃないけどね。僕の仲間も近くにいるから君の負けだね。君の能力は何か知らないけど最強の僕には勝てない!』
3「ただ命令しているだけの臆病者が勝てると思うな!」
その言葉を聞いた七宮は怒り狂う。
七宮「僕が臆病者!!??たかが雑魚が生意気だ!!殺しちゃえ!!」
七宮に動かされている者たちが一斉に3を襲う。わずかに抵抗するものの圧倒的な数に押され刃物でズタズタにされる。
3「俺は……ち……が」
そういって3を名乗った者はあっけなく死亡する。
七宮「雑魚が図に乗るからだ。」
そう七宮が思った時だった。いきなり先ほど操っていたはずの者たちの視界が真っ暗になり操れなくなった。
七宮「一体何が!!」
慌てて近くにいた他の者の視界で様子を見ようとしても次々に操れなくなる。突然の事態に七宮は一切対処ができなかった。
七宮「どういうこと?能力が使えない?この僕が?そんなはずはない。現に他の場所の奴は操れる。なのにあの周辺の人間だけ操れなくなっている!?まさか、能力を妨害する能力でもあるというの?」
3「これでこの辺の人間はこれで全員か。」
この周辺で七宮が操っていた人間は全て3が始末していた。さきほど死んだ3は3を名乗った現地の人間だった。3が拉致した人質解放を条件に服装を交換させ七宮をおびき出した。
3は殺した人間の持ち物、服装を確認する。ただの村人から軍人までさまざまな者がいた。
3「ここまで幅広いレパートリーならこの国の大半が奴の支配下と考えた方がいい。それに隠密行動していた囮が見つかったということは捜査能力も半端ではない。そして、奴はこの国で最も安全な場所にいる可能性が高い。俺が目撃される前に今晩中に攻め込むか!」
3は七宮がいそうな場所に向かって行った。近くに人がいないか警戒し、いればすぐさま切りかかった。
七宮「能力が一時的に不備があってもここにいれば……」
3「やっぱりここにいたか!」
七宮の目の前に3が現れる。全く予想していなかったことだ。
七宮「誰だ!お前は!?」
3「転移者だよ。3だ、よろしく。」
七宮(3だと?さっきのやつも3って名乗っていた。まさか、あれは偽物!?)
3「その顔だと今気づいたみたいだな。」
七宮「どうしてここが分かった!?」
3「簡単だ。人を操れるならまず権力を持っている人間から操る。この国では皇帝だな。当然、軍人を操れるのだから皇帝に近づくこともそれほど難しくない。それにお前は操り人形を自らは動かずにウイルスが感染するように増やせるみたいだな。でなければこんな大勢を短期間には不可能だ。それならば本人は安全なところに引きこもるわけだ。そして、この場所がここだ!」
この場所は皇族が住む皇居の五階。下の階には大勢の見張りがいるため安全だったはず。
七宮「下の階や外にも見張りがいたはずだ!ここに来れるはずがない!」
3「馬鹿だなあ?今は夜だぞ?奇襲すれば楽に殺せる。それに馬鹿なお前があいつらを操ってくれていたから基本棒立ちだったな。いくら操れても全てを同時には脳が処理できないだろう?」
七宮は信じられない様子だった。こんなあっさりと守りも突破されるつもりではなかった。
七宮「でも、お前がここにいるなら僕はお前を操れるぞ!!」
七宮はハッタリで3を脅そうとする。
3「できるならとっくにできているはずだ。お前の能力は近くにいる人間が自動的に操れるようになるものじゃない。だとしたら何かしらのコンタクトが必要ということだ。たとえば操っている者かお前本人が対象に触れるとかな?」
七宮「く、くるなあああ!!」
七宮の反応で今の推測が確信へと変わった。後ろの扉は鍵をかけており逃げられない。七宮の後ろには窓があるがここは五階、飛び降りたら無事ではすまない。
3(能力も判明した。後は……)
3「殺すだけだ!!」
3は僅かな警戒心を残しつつ刃物を七宮の左右に来るように投げ飛ばす。自身は急接近し七宮との距離を一気に詰める。すぐさま仕留めなければ反撃される可能性もあった。
諦めたのか死を選んだのか七宮は窓に突っ込み飛び降りた。着地は失敗し体が衝撃に耐えられず大量の血が出る。3は壊れた窓からその様子を確認し、息の根を止めに階段を下る。
七宮「こんなところで、僕があああ!!!」
動けない重症の体で叫ぶ。だが、3が間もなく近づいてくる。彼にとって初めての殺されるという恐怖が襲う。今まではゲーム気分でいた。前のデスゲームの時もほぼワンサイドゲームだった。しかし、今回はなすすべもなく追いつめられていた。全くの想定外でもう残る手は神頼みだった。
七宮「なんで!?この僕がこんな目に遭うんだよ!!!!僕は手を下していないのに!」
3「なんで自分だけは殺されないと思った?所詮、他人任せの人殺ししかできないクズにお似合いの最期だな。」
3と七宮の距離が縮まっていく。もうダメだと思い七宮は叫んだ!
七宮「聞こえるか!!神ぃぃぃ!!!!今回のデスゲーム分、二回目の蘇生を今すぐしろ!そして、王国の王の前に僕を転移させろ!」
七宮は一度蘇生しているがそれは一回目の異世界デスゲームの分。二回目の参戦のさいは生きたまま転移している。原則、この異世界デスゲームは死んだものを転移させるもの。七宮のみ例外で参戦しているため、蘇生は不可能ではない。それに七宮を転移させた神7は七宮に借りがあった。
七宮「あははは!!これで僕を殺しても僕は負けない!」
七宮は最後の力でナイフを使い自害した。死体となった七宮の体はどこかへ消えた。
3「これで終わった……わけじゃないな。王国に転移したか。…………神、お前は卑怯だぞ!!能力差は構わない。だが、命はいまあるものだけのはずだ!!何がデスゲームだ、何が異世界だ!こんなのただのインチキじゃないか!!」
3はこの理不尽さに腹を立てていた。あのままいけばまちがいなく3は七宮を殺せていた。それなのに殺し損ねた上、王国で力をつけられる。3の能力も七宮にばれている。こうなっては二葉よりも強敵となる。




