契約
「やぁ、おはよう。」
「あ、おはようございます。」
魔王様起きるの早いですね。
なんか、魔王ってこう偉そうにしてて、ふんぞり返ってて我儘みたいなイメージがあるからこうやってコーヒー?みたいなやつ飲みながらのんびりしてる所みると違和感バリバリ。
「主よ。ただいま戻りました。」
「帰ったか、報告を頼む。」
私と魔王が朝の挨拶を交わした直後に昨日、魔王が人間の国、アルツ王国だっけ?に偵察に行かせた影が帰ってきた。
勇者関係のことを調べてきてくれたんだっけ。
「はい、勇者はどうやら5名。それもアルツ王国に伝わる伝説の六英雄の様です。」
「ふむ、続けよ。」
「はい、勇者の名前はガンド、アレン、シアン、ルスタ、レイミスの5名。
六英雄の内リンカと呼ばれる英雄は召喚されなかった模様です。」
「......え?」
ガンド、アレン、シアン、ルスタ、レイミス
全員私が所属するギルドのメンバーの名前だ。
それに、六英雄?
「やはり...か。」
え、魔王様気付いてたの?
「君がリンカ、それも使う武器が刀と言った時点でほぼ確信していた。
と、言うより昨日召喚された勇者は君の仲間の可能性が高いと話した筈だが?」
「いや、そこじゃなくて。」
「?」
「六英雄って何!?私この世界に来たの初めてだと思うんだけど!?」
「なんだと...?」
「同じ名前の違う人とかいう可能性は?」
「...ふむ、では聞くが君の使う魔法は神聖魔法ではないか?それ加えて刀と空間魔法を織り交ぜた連続攻撃や、隙を付いて暗黒属性の弱体化魔法等も使う。あぁ、召喚獣も使うのだったか...」
「な、なんでそんなに...」
「大昔から伝わる本に記されていた。万が一六英雄と戦うことになったら絶対に勝てないから降伏しろ、とな。」
「...」
開いた口が塞がらない...
というより戦闘パターンほぼ全部筒抜けなんですが。
今、魔王と戦おうと思っても勝てる気がしないよ?
それに、あれはゲームの中だったから割と無茶な動きとかできただけだと思うし...
「何はともあれ、君が伝説の六英雄『幻想の魔剣士 リンカ』と同一人物である事は間違いないだろう。」
「!?」
何そのめっちゃ恥ずかしい二つ名!!
ほんと、ファンタジーの世界の人はこういうの簡単につけるから困る...
「それで、どうする?」
あ、そういえばこの後の行動を今日の朝までに決めるって言ってたっけ。
まぁ、もう決めてあるんだけど。
うん。
「私は、他のみんなに会いたい。会って、話をしておきたい。だから、アルツ王国とかいう国に行かせてほしい。」
「わかった。お前ならきっとそういうと思って準備しておいた。」
そういうと、魔王様は巻物みたいな物をテーブルの上に置く。
「この紙には"契約"の力が込められている。
契約に反する行動は自動で制限されるが、無理矢理に契約が破られた場合には、破った側に定められた裁きが与えられる。
契約内容は、お互いの不利益になる行動の禁止。
破った場合には破った側への永久強制命令権だ。」
無理矢理契約破ったりって出来るんだ。
てか、リスクでか過ぎない?あ、でももし魔王が契約やぶったら魔王好きなようにできるのか。
国の存続がかかってるんだしこのぐらいは当たり前かもね。
「もし、アルツ王国に行きたいのならこの紙に魔力を流せ。
私の方は既に魔力を流してある。」
「わかった。」
準備いいね。
と、いうより昨日から思ってたけど魔王様普通にイケメンのいい人だわ。
紙を手に取る。
広げてみると複雑な魔法陣が書かれている。
魔力の込め方はゲームと同じ感覚で......行けた。
魔力を流すと、紙は弾け飛んだ。
...弾け飛んだ。
「弾け飛んだけどいいの?」
「あぁ、大丈夫だ。そういう仕様だからな。」
そういう仕様なんだ...
「さて、晴れて自由の身だがどうす『ドーン!!!』......!?」
なんか凄い音が...なんか、嫌な予感。