夢の続き
「うぅん...」
あれ?私いつの間に眠ってたんだろう。
しかも見たことのない部屋...
ジャラジャラ
「んん??」
金属の擦れる音がして首を動かして視線を体に向ける。
すると、手首と足首に枷が付けられ、ベッドに固定されていた。
「え?」
「おや、やっとお目覚めか??」
その声がすると同時に入ってきたのはビルヘルマさん。
...あれ?どういう事だ?
寝起きで頭が働いてない。
とりあえず体を起こして━━━
ギィン
手枷に繋がれた鎖によって仰向けに戻された。
「おやおや、どうやら状況が把握出来ていない様だな。」
「...なんで私はここに繋がれているんですか。」
「私自らの手であんたをここに連れてきたんだよ。」
「どうやって...?私は貴方と戦って負けるほど弱くは...」
「どうやら本当に寝惚けているようだ。結論から言おう。あんたには私の性奴隷となってもらう。」
...ん?聞き間違い?
セイドレイって何だ?
「そうだな...表向きは私がリンカ様を妻として迎え入れ、リンカ様は私の虜になったとでもしておこうか。
その実であんたはここで私の子を産み私の性欲を発散させてもらう只の道具にでもなってもらう。」
一気にまくし立てるビルヘルマさん。
その長い言葉を時間をかけて少しずつ頭の中で整理していく。
...は?
「あぁ、そうだった。ここではあんたは魔法を使えん。加えて、スキルや武技の使用も不可能だし、あんたのステータスは低下中。抜け出せるとは思わない事だな。ははは。」
その言葉で、ハッと思い出す。
この男について行った後、遺跡の前まできた瞬間に、私の立っていた地面が消えて落とし穴に落ちたのだ。
咄嗟にスキルを使おうとしたもののスキルは発動せず、アイテムボックスやチャット等も使えなくなった。
スッ
「ひっ!?」
「おや?随分と初々しい声を上げるじゃないか。」
そう言いながらビルヘルマは私の足を触る。
気持ち悪い!
「おっと、あんまり暴れんなよ。」
「ぐぅ!?あ、がぁっ!?」
ビルヘルマがリモコンの様なものを操作すると、私の手足に電流が流れる。
その衝撃で一瞬、目の前が真っ白になる。
「ふふふふ、伝説の英雄ともあろう方が魔法やスキルを封じられるだけでこうも簡単に...さて、続きは後にしようか。
じっくりと私好みの性格に調教して差し上げよう。
幻想の魔剣士リンカ様。はははははは。」
そういってビルヘルマは部屋から出ていった。
部屋の中には私1人。
魔法もスキルも、武技もシステムの力も使えない。
状況は今までになく最悪だった。
ーーーー
森の中を歩いていく。
ただひたすらに前を見て進んでいく。
たまにエンカウントしてくるモンスターは相手が動き出す前に剣で切りかかって倒す。
そうして30分近く歩いたところで、ようやく第1エリアの最終フィールドに到着した。
休憩はしない。
次こそはあの2体の狼を倒すのだと、心に決めて前に進む。
あと少しでボス部屋に付くという所で現れたのはアサシンウルフとファングウルフいう名前のモンスター。
2体が同時に湧くのは珍しいが、どちらも今の自分に取っては雑魚同然だ。
そう思って前に一歩踏み出そうとした。
が、体は動かなかった。
「え?」
足元を見ると、足は震えていて今にも倒れそうになっていた。
さっきの白狼と黒狼を思い出して体が恐怖を感じていた。
アサシンウルフとファングウルフは二手に分かれて左右からの挟み撃ちを狙おうとしてきている。
さっきの白狼と黒狼と同じ行動だ。
それを見てサークルスラッシュを発動させようと...
「あっ」
剣を鞘から抜こうとして取り落としてしまう。
前に一歩踏み出して剣を取ろうとしても足は動かない。
狼が迫る。
私は目を瞑って死に戻りをする衝撃を受け止めようとした。
「ホークショット!」
「フレイムブラスト!」
その瞬間に、遠くから矢と魔法が飛んでくる。
その二つの攻撃は二体の狼をそれぞれ撃ち抜き、一撃で体力を削りきった。
「大丈夫か?」
「...」
「おい、お前...ここまで1人で来たって言うのか?」
男の人が話しかけてきた。
その人達は5人組で1パーティを組んでいるようで、丁度ここを通りかかったらしい。
狼がいなくなったからか、体の硬直が解けて脱力してしまった私は5人と一緒に休憩を取ることにした。
ーーーー
「改めて聞くが、お前さんは1人でここまで来たのか?」
「はい...さっきボスに挑んで負けて、デスペナが解除されたのでもう1度挑もうと...」
「「「「「ボスに挑んだ!?」」」」」
「はい、ボスは白と黒の狼で...」
「いやまて、1人で挑んだってのか?」
「そうですけど...」
「...そこまでの実力があったのにたった今あんな雑魚に倒されそうになってた理由を聞いてもいいか?」
「あの二匹を見ただけで白狼と黒狼を思い出して...気づいたら手足がうまく動かなくなってて...」
「トラウマになってんじゃねえか!」
「落ち着けよガンド。それで、君はどうするんだ?」
「どうするもこうするもないです。あの狼は倒します。」
「まてまて、そんな状態じゃ倒せるもんも倒せねえよ。
何でそこまでして倒したいんだ。」
「...自分が自分を認められないからです。」
「何故そうまでしないと認められないんだ?」
「だって、私は...」
ぽん、と頭に手が載せられる。
その手は大きく、仮想の物なのにとても暖かい。
「まぁ、なんだ。お前がそう言うならそうしたらいいだろう。
だけどな、お前がここまで一人で来れてるっていう事実だけでも俺等はお前を認めてるぜ?」
「っ!」
ガンドと呼ばれていたその男の人の一言で、私は救われた気がした。
我ながら単純だと自嘲する。
「ま、そんな訳でボスに挑むなら一緒に行く事をオススメするが、どうする?」
「...お願いします。」
「おう、俺はガンドだ。
で、そこのチャラいかんじのがアレンとルスタ。でかいのがレイミスで細長いのがシアン。」
「リンカです、宜しくお願いします!」
「「「「「おう、宜しく。」」」」」
そして私達はゲーム内で最初のエリアボス討伐者となった。




