1章 エピローグ 前
短いです。
後少しでテスト週間なので更新頻度が上がると思います。(勉強からの逃げ)
何処かの暗い洞窟に、一組の男女が石でできたテーブルの上に置かれた水晶を覗き込んでいる。
「あー、やっぱりこんなもんじゃ相手にもならないよね。辛うじてあの従魔を倒せそうだったぐらいか。」
「...」
どちらも、周囲には誰もいないのにフードを被っており、顔が見えなくなっている。
女の方は、軽い調子で話しているが男の方は何目喋らずただじっと、水晶を見ていた。
「うーん、でも少し衰えた?」
「...武器」
「ああ!そういえば、あの六人の本当の武器って大層に奉られてるんだっけ。」
「認証、型の封、印が、されて、るから、俺、たち、でも、無理。」
男の方は途切れ途切れに成りながらも言葉を発する。あまり喋るのは得意ではないようだが、女の方は、変わらず話し続ける。
「うーん、別に取ろうって訳じゃないんだけど。...まぁ、リンカ達がちょっと弱いのはそれが原因かぁ。
うーん、でもなぁ。準備が整うまで1年はかかるだろうしなぁ...」
「今は、ダメ。」
「わかってるよぅ。―――――――――にしても、あの合体とかいうスキル使ったあとのリンカ可愛すぎ!」
「...う、ん。」
急に、雰囲気が変わる。
残業疲れした社員のような雰囲気から、まるで仲のいい友達と話しているような雰囲気になった。
話の内容は、リンカについての事らしい。
「もー、何あれ?天使じゃない。はぁー、抱き枕にして一緒に寝たい!いや、それじゃ足りないわね!同じベッドで一晩中...」
「俺、は見て、るだけで、いい。」
「―――あんな事やこんな事も...はぁぁぁぁ...」
「?」
「早くあいつら帰ってこないかなぁ。あいつら悔しがるだろうなぁ、私達だけリンカのあんな姿を見ることが出来たんだもの。自慢してやりたいわ。」
「...」
どうやら、この2人には仲間がいるらしい。
「特にイジは怒るでしょうね。あいつは、直ぐにキレるから。」
「...仕方、ない。」
「そうよねぇ。私もこんな性格なのと一緒だし...でも、あなたはマシよねぇ。ただサボり癖が酷いだけだもの。」
「...馬鹿にされるのは腹立つ。」
女の方が男の方を馬鹿にすると、男は急に普通の喋り方になる。
「そうそう、それよ。その喋り方の方がよっぽど自然だわ。」
「...保つのは無理。」
「でしょうね。本当の事言うと私もリンカの顔を見ただけでもう体の疼きが止まらないもの。本当に、厄介なものよねぇ。」
どうやら、彼女達はそれぞれが特殊な体質らしく、愚痴をこぼしている。
「ま、暫くの所は見守っておきましょうかね。リンカはその他の六英雄の仲間なんかじゃない。
私達のリンカであるべきなのよ。」
そういうと、フッと洞窟内に灯っていた光が消える。
そして、何も無かったかのようにそこは只の洞窟に戻っていた。
ーーーー
アルツ王国 王城
大きなテーブルが置かれた会議室に、アルツ王国周辺各国の重鎮が揃っていた。
そこで、魔国アルスターとの会議の結果について報告をしていた。
「さて、この度我がアルツ王国は魔国アルスターと正式な同盟を結ぶ事となった。
詳しい内容は...リーガス」
「はい、私より説明させていただきます。まずは...」
宰相であるリーガスが、会議中に取ってあったメモを見ながら説明していく。
それを聞いていく各国の重鎮達は苦い顔をしている。
「―――以上です。」
「なにか質問がある方はいますかな?」
「...魔国と手を組むなど、正気ですか?」
そう口を開いたのは、ザーラ公国と隣接している国の王様だった。
その姿は若く、つい最近王が成り代わったと、この場の全員が知っている。ただし、その手腕は見事で、王としてはここにいる誰よりも才能があるだろう。
「もちろん、正気で本気ですとも。」
「...裏切られるに決まっている!」
「そうだ!あの魔族の国だ、きっと何かを企んでいるに違いない!」
その言葉に続くように、次々と非難の声が上がる。
それらはすべて魔国を否定するものや侮辱するものばかりだ。
「ふむ、ではこれを見てもらおう。」
バルマ王が取り出したのは一枚の書状。
「なっ!?」
「それは...」
「ここには、魔国アルスターと我が国の永久不可侵条約について書かれておる。
更に言えば、これを持ってきたのは伝説の六英雄の1人"幻想の魔剣士"リンカ様だ。」
「あの...」
「リンカ様...だと...」
「私はリンカ様を信じ、そのリンカ様の信じている魔王、しいては魔国を信じてみようと思う。」
「...」
そう言われては何も言い返せないと、先程までの喧騒は嘘だったかのように会議室は静かになる。
「異論が無いようであればこれからについて話そうと思うが...」
「「「「異議なし。」」」」
「それでは、会議を続けよう。」
その会議は、暫くの間続いた。
ーーーー
スタンピードより2週間後
アルツ王国、更には人族と魔族の関係が一転した。
その事実は一般の人々にも公開された。
だが、民衆の魔族に対する不安や不信感は拭えず、国内の空気は良いとは言えなかった。
そんな中、王都だけが活気に溢れ、王都民は明るい顔をしていた。
そして、それを不思議に思った旅人が聞いた。
「お前は魔族を信じる事ができるのか?」
と
それに対する王都民は言った。
「俺達が信じているのは魔族じゃない。英雄様だ。」
と
その言葉は旅人は理解ができなかったが、旅人はその意味をその2日後に知る事になった。




