冒険者登録をしよう
「冒険者登録しようと思う。」
「お、おう。」
割りあてられたアルツ王国王城の一室で、私達は集まっていた。
そこで私は、そう口にした。
今更だけど、定番とも言われる冒険者に私はなっていない。
冒険者組合っていうのがあるらしいから、それに登録しようと思ってる。本当はザーラ公国で登録しておきたかったんだけど、みんなと合流してからにしたかったからね。
「あー、その、すまんな。俺達はもう既に登録してあるんだわ...」
「えっ...」
なん...だと...
え、じゃあ私が登録を我慢していたのは無駄だったの?1人だけ後回しにしてて馬鹿みたいじゃん。
「いや、本当すまん。リンカを探すっていうのが俺達の目的の一つだったんでな?とりあえず登録しておこう、って事になって...」
「ぇぇぇ...」
そんな理由じゃ、怒るに怒れないじゃんかぁ...
「まぁ、いいや。とりあえず行ってくる。」
「おう。あ、まて。バルマ王に推薦状貰ってけ。俺等もそうしてもらったから。一応冒険者組合の組長と副組長には俺達の事を教えてあるらしい。」
「了解。それじゃ、行ってきます。」
「おう、いってら。」
ーーーー
「ここが、冒険者組合かぁ。」
目の前にあるのは木で作られた3回建ての建物。
...どう見ても酒場なんだよね。
とりあえず入ってみようか。
カランカラン
「おお。」
想像してた感じの内部がそこにはあった。
冒険者の仕事用のクエストボードに受付。それと、情報を仕入れたりする為の掲示板に酒場。
そこには、強そう(あくまで強そうなだけ)な男達が座って酒を飲んだり、料理を食べたりしている。
...つい解説っぽい何かをしてしまった。
まぁいいや。とりあえず登録をしよう。
「すいません、冒険者登録をしたいんですが。」
「あ、はい。少々お待ちください。」
受付の女性に話しかけると、その人は奥に引っ込む。
その瞬間、後ろからすごく視線を感じる。
きっと、お前みたいな小娘は冒険者にはなれない。とか言ってくる輩が...
「お前みたいな小娘は冒険者にはなれないぜ?」
「...ぉぅ。」
どんぴしゃ。
何故わざわざ絡んでくるんだろうか?そんなに面倒事を起こしたいのかな?
「帰んな、怪我するだけだぞ。」
「...」
あー、面倒臭い。無視でいいや。
っていうか、受付のお姉さんはやくー。
「おい、聞いてんのか?」
「...」
「おい!」
無視を決め込んでいると、ビビってると思われたのか、強気で怒鳴ってくる。
その上、ほかの冒険者までニヤニヤと笑っている始末だ。
イラッ
「...うるさい。」
「あぁ!?」
「うるさいっつってんでしょうが!」
振り向きざまに回し蹴りを叩き込む。
男は入口に向かって吹っ飛び、そのままドアごと外へ吹っ飛んでいった。
「お待たせしまし...た?えぇ!?」
「ドア壊しちゃいました、すいません。修理費は払いますんで、とりあえず登録お願いします。
あ、これ推薦状です。組長に渡してください。」
「え、あ、えっと...その...」
どうすればいいのかわかんなくなったのか、わたわたとし始める女性。
いっそガンド達を連れて来ようかと思った時だった。
入口の扉が開き、外から警備騎士のような人が、そして2階から大柄な男の人が降りてきた。
「今しがた大きな音がしたが...」
「すみませんが、この建物から人が吹き飛んできたのですが...」
「「...」」
「えっと...」
冒険者が全員私に視線を向けてくる。
そして、警備騎士の人と男の人も顔を合わせた後、こちらを見る。
「く、組長!」
「組長?」
この人が組長か。
それなら話は早い。
「この騒ぎは君が起こしたのか?」
「君が彼を吹き飛ばしたのですか?」
「はい、馬鹿にされてイラッと来たので。」
「......彼、全身骨折の大怪我なんですが。」
「知りません、自業自得です。それより、登録をお願いします。」
受付の人に受け取ってもらえなかった推薦状を組長に渡す。
それが推薦状だと分かると、こちらを見る。
「何者なんだ?」
「それ読めばわかるよ。」
「ふむ...」
封筒を破って中身を確認する組長。
だんだんと読み進めていく内に、だんだん顔が青くなっていく。そして、ゆっくりとこちらを見て、再び推薦状を見て、もう1度私を見た。
「し、失礼しました。先ほどの無礼をお許しください。」
「組長!?」
いきなり頭を下げる組長に対して、受付嬢が叫ぶ。
そして、警備騎士や他の冒険者も騒ぎ始める。
「すみませんが、私の部屋まで来ていただけますか?あと、そちらの方も。」
「あ、はい。わかりました。」
警備騎士の人も組長の頼みでは断れない様だ。
そんな訳で、私達は組長の部屋に案内された。
ーーーー
「先程の無礼な態度、今1度謝罪をさせて頂きます。申し訳ございません、リンカ様。」
「あー、そういうのいいから。」
いちいち面倒臭いのは無しで。ていうか、警備騎士の人は無視なんだね。
「リンカ様...?」
「あぁ、こちらの方は伝説の六英雄『幻想の魔剣士』リンカ様だ。」
「えぇ!?あの...リンカ様ですか...?」
警備騎士の人はこっちを見て愕然としている。
もうこの反応にもなれたなぁ。
「そうだよ。」
「えっと、先程は...その...あの...」
「あぁー、もう。そういうのいいから。」
ガタガタと震えながら謝罪してこようとする警備騎士の人を手で抑える。
「あぁ、この事は私達の事が公に発表されるまで口外禁止だからね?」
「か、畏まりました!」
「それでは、帰ってくれて構わない。」
私と組長がそう言うと、警備騎士の人は複雑な表情をして部屋から出ていく。
「では、リンカ様。冒険者登録についてお話をさせて頂きます。」
「うん。」
「我々、冒険者組合は各国に存在する冒険者組合支部とここ、冒険者組合本部により成り立っています。
冒険者組合の目的は主に魔物討伐ですが、それだけではなく、例えば薬の原料となる植物の採集や、一般家庭の手伝い等もあります。
例えば...掃除の手伝い等ですね。」
「ふむふむ。」
これは多分、小さい子が少しでも稼げるように作られたシステムだろうね。
ただ、治安が良くないとそういうのは無理だと思う...この国はそれなりに治安が良いのかな?
「この世界に住む人々...犯罪者は含みませんが、犯罪者を除く全員がこの冒険者組合に依頼を持ち込む事が可能です。そして、全ての依頼には報酬を出す事が義務付けられています。」
「うん。」
「報酬は金だけでは無く、物で支払われる事もあります。あぁ、両方を同時に報酬に出す場合もありますが、多くは現金ですね。」
「うん。」
「冒険者にはランクがあり、受けられる依頼の難易度が設定されています。ランクは上から虹、金、銀、銅、黒、白となっています。
こちらのギルドカードの枠の色がランクを示しています。
虹ランクの冒険者は現在、5名います。」
「もしかして...」
「はい、他の六英雄の方々ですね。こちらの虹ランクは新たに作られたものになります。
さて、依頼の話に戻りますが、受けられるクエストには制限があり、非常事態を除きランクの一つ下の依頼しか受注する事ができません。
金なら金と銀の依頼。銀なら銀と銅の依頼しかうけられません。」
「上も駄目なんだ?」
「はい、金と銀、銀と銅にはそれぞれ大きな壁があるため、上を許してしまうと無茶をする者が出てきてしまうのです。」
「なるほど。」
だったらもっと細かく区分けすれば...とか思ったけど、そんな口出しする事じゃないね。
「さて、ここで虹は特別となります。虹ランクの冒険者でおる六英雄の方々は虹、金の依頼に加えて銀の依頼を受けることができます。」
「へぇ、どうして?」
「それは、今のところ虹ランククラスの依頼が起きる事はまず無く、銀ランクの依頼が全てのランクの中で最も多いからです。」
「なるほどね、納得したよ。」
「その代わりですが、虹ランク...わかりやすく言うと軍隊や冒険者が数百単位で出撃しなければいけない依頼ですね。」
「あぁ..."暴龍"とかね。」
「はい、その通りです。その虹ランクの依頼はその場にいる限り強制依頼となってしまいます。」
「そりゃ、そうだよね。被害を最小限に抑えれるのに、出し惜しみして被害が出たら元も子もないしね。」
「ええ。六英雄の方々はその点に納得して頂き、虹ランクになって頂きました。
さて...リンカ様はどうなされますか?」
虹ランク...かぁ。
自由にこの世界を旅したいけど、依頼ぐらいならちゃちゃっと終わらせちゃえばいいし、それでいいかな。
「よし、私も虹ランクにするよ。...虹ランクにできるんだよね?」
虹ランクにするとか言っちゃったけど、そもそもできるんだよね?
「えぇ、勿論です。それでは、こちらのカードに血を一滴垂らしてください。」
「おっけー。」
ほっ、大丈夫だった。
置いてある針で指に傷をつける。
HPが1減り、血が流れる。
流れた血はカードに吸い込まれ、カードが薄く発光する。
「ありがとうございます、これで登録は完了です。一応今は金ランクという扱いになっているので、公での発表まではそのようにお願いします。」
「うん、わかったよ。」
「なにか質問がありましたらその都度お願いします。それでは、これから宜しくお願いします。」
「うん、よろしく。...あ、ギルドカードの虹色はどうすればいい?見られたらバレちゃうと思うんだけど。」
「幻影魔法が付与されていますので、登録者と私、それから副組長以外には金に見えるようになっています。」
「そっか、それじゃ安心だね。」
よし、とりあえず登録完了!
VRモノも書いてみたいなぁ...




