現状把握
「あの、名前を聞いても宜しいですか?」
「はっ!すいません」
いつも気付いたら自己完結してしまう。悪い癖だ。
「凛...リンカと言います。」
思わず、素の名前を言いそうになったが、ここはとりあえずゲームの名前にしておこう。
一文字しか違わないけど、正直PNの方が気に入ってるって言うのもあるんだよね。
「リンカ殿ですか、それではもう一度聞きます。どうしてこのような場所に?」
「気付いたらここに...」
「ふむ、見た所その角からして魔族であることは間違いなさそうですが、何族がわかりますか?」
「角...?」
角と言われても、私は普通の人間だから角なんてないはず...と思ったところで気がついた。
昨日の夜に魔潜の森でレアドロップ集めをした時に使った、魔物をおびき寄せるための頭アクセサリーである吸魔の角を付けたままだった。
「あのー、質問に答えていただけませんかね...」
「あっ、すいません。種族とかは分かんないです。」
また質問に答えるのを忘れてしまっていた。
失敗失敗。
「そうですか、ではここで何を?」
「気付いたらここにいたので現状の確認を。」
「なるほど...」
この執事っぽい人は何かを考えている。
たぶん、嘘か本当かをかんがえてるんだろうね。
普通だったら怪しすぎるもんね。
ていうか、よくよく考えてみたらここ魔国アルスターとか言ってたし、けっこうやばい所なんじゃない?
「あの...」
「あっ、はい。なんでしょう。」
「これからどうするおつもりでしょうか。」
「あー、うーん。」
どうしようか。まだ、現状が完全に把握出来てるわけじゃないし、落ち着いて現在の情報を整理したい。
「宜しければ、ここに泊まりますか?」
「いいんですか?」
「流石にこんな少女を見捨てるわけには行きませんからね。」
「助かります!」
うん、助かる。
実はもう既に18歳だから少女というには年をとってる気がするんだけど、勘違いしてくれたっぽいしおっけーおっけー。
あ、そうだ。私のステータスとかってどうなったんだろう?
鑑定が使えたってことは他のスキルとかも使えるかもしれない。
うーん、ゲームと同じ動作をしてもステータスは出ないか...
こういう時は...
「ステータスオープン...?」
わっ、出た。
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リンカ Lv.164
ステータス略
ユニークスキル:『無幻影剣』
スキル:
鑑定Lv.10
召喚Lv.10
白魔法Lv.10
光魔法Lv.10[━神聖魔法Lv.10]
闇魔法Lv.10[━暗黒魔法Lv.10]
空間魔法Lv.10
剣術Lv.10[━神剣Lv.10]
...以下略
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と、まぁだいぶ端折ってこんな感じ。
んー、ゲーム内での性能に加えてなにやら、不思議なユニークスキルとやらが追加されてる。
名前かっこいいな。
なんというか中二心をくすぐられるというか...
閑話休題
試しにアイテムボックスとか言ってみたら、本当にアイテムリストが出てきて、しかも中身そのままで、お金もちゃんと入ってた。
これはとてもありがたい。
この執事っぽい人。セバスって名前らしいんだけど、この名前だとどう考えても執事だよね。
この人に聞いたらお金はこの世界どこでも共通して使えるらしい。
ちゃんと変換してくれてたらしくて助かる。
「ふう。」
このお屋敷古い様に見えたのは只の幻だった。
実際は普通に凄いお屋敷でどこもかしこも高級感あふれる感じだった。
で、なんとお風呂があったんです。
異世界なのにお風呂があるなんて、これは完全にあたりパターンですわー。
...にしても、こんな広い屋敷にセバスさん一人だけで暮らしてる...?そんな訳ないよね、執事っぽいし、ちゃんとした持ち主がいるんじゃないのかな?
勝手に泊まらせてくれてるけどいいのかな?
うーん、まぁいざとなったらゲーム内で稼いだ阿呆みたいな量の金があるしなんとかなるか。
「セバスさん、お風呂ありがとうございました。良い湯でした。」
「そうですか、それはよかった。お食事の用意がそろそろ出来ますので、そちらへどうぞ。」
「はい。」
...すごく大きいテーブル、良くアニメとかで見るような長いやつ。蝋燭も立っている当たり、テンプレを完全に再現している。
流石に屋敷の主が座るポジションに座る勇気はないので、無難なところに座る。
さて、改めて状況を確認すると、現在いる場所は異世界の魔国アルスター。
その王都の外れにあるお屋敷。
ゲームの中で使えたスキルとかは問題なく使えるっぽくて、ステータスとかも同じなのに姿は現実のそれになってる。
...他のギルメンはどうなったんだろうか、まだあのギルドハウスで待っているのだろうか。
うーん、彼らもこの世界に来てる可能性がなきにしもあらずなんだよね。
暇ができたら探してみようかな。
ガチャ
おや?玄関の扉が空いたっぽい?
誰か入ってきたのかな。
可能性として考えられるのは...この屋敷の主...
はっ!挨拶しとかなきゃ!
慌てて椅子から立ち上がる。
さぁ、来い!ドアがあいたら、腰を90度に曲げて「行く宛がないので一晩止まらせてください!セバスさんに許可はもらっています。」だ。
よし、これで行こう。
さぁこい!
「そんな身構えなくてもお前が今日此処に泊まることくらい既に聞いている。」
「!!?!?」
後ろからいきなり声が聞こえて、振り向くとそこには金髪碧眼の男の人。
ビックリしすぎて声も出なかった。
どうやら、この人が屋敷の主らしい。