旅立ち
「それじゃ、合鍵を渡しておくぞ。」
「うん、有難く使わせてもらう。」
よし、家ゲット。
借りるだけだけど。
「食材等と用意しなくて本当に良いんだな?」
「大丈夫、食べ切れない程の量を持っているから。」
「にしてもアイテムボックスのスキルか...」
「んー、正確にはスキルじゃないんだけど...」
アイテムボックスはこの世界のシステム的なサポートであって、スキルではない。
まぁ、辻褄合わせみたいなものだね。
「よし、それじゃ行くぞ。アルツ王国は北...あそこに山が見えるだろう。あっちの方角に向かって歩いてゆけばいい。
長い旅になるだろうが、頼んだぞ。」
「うん、多分大丈夫だよ。もしかしたらもっと早くつくかもしれないけど。」
「早い分には問題ない。むしろ大歓迎だ。」
「そう、それじゃ私は行くよ。」
「あぁ、頼んだ。」
私は、魔王達と分かれてアルツ王国へ向かって歩き始めた。
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山に向かって歩き続けること数時間。
全く人と合わなかった。何故なら道から外れたところをあるいているから。
面倒な事になるからそうしろと言われたんだけどね。
気づいた時には空に赤みが指していた。
長い間無心で歩き続けていたようだ。
とりあえず、適当な所にワープ用の標を設置して、と。
よし、館へとワープ。
帰ってきました、魔王の別荘。
夜歩いてもいいんだけど暗い中一人で歩くのはちょっと...ねぇ?
と、言うわけでささっと夕飯を適当に作って、お風呂入って寝よう。
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エリア1/10のとある宿。
そこで私は蘇生された。
...ああ、昨日の夢の続きね。
私はステータスに出ているステータス低下中の文字を見る。
『レジェンド』では、デスペナルティとして、一定時間の取得経験値が減り、ステータスも低下するというデスペナルティがあった。
すぐにでも再戦を挑みたかったが、どうしようもない。
ステータスが万全であれだったのだ。
ステータス低下中では話にならないだろう。
気まぐれに掲示板を開いてみる。
そこには
第一エリア攻略度99%到達した奴おる?
というタイトルのスレッドが一番上に表示されていた。
恐らく、私が攻略して99%になったのを見てから誰かがスレッドを立てたのだろう。
やることもないので、会話の内容を見てみる。
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156.名も無きレジェンドプレイヤー
で、結局だれが到達したん?
157.名も無きレジェンドプレイヤー
噂ではβテストの時からいる金色の騎士鎧付けた奴って話だ。
158.名も無きレジェンドプレイヤー
>>157
いや、あいつ今日は酒場でナンパするとか言って街の至る所で目撃されてる。
159.名も無きレジェンドプレイヤー
さっきまで地道に探索勧めてたけど、平原なのに迷うっておかしなフィールドだよな。
つか、こんなフィールドが初っ端から用意されてるのがおかしいと思うんだが。
あと>>158
あの人なにやってんだw
160.名も無きレジェンドプレイヤー
>>159
それな。てか、それを99%まで進めるってどんだけやり込んだんだって話よ。
161.名も無きレジェンドプレイヤー
でも、俺らもいつかやるんだぜ?
まぁ、その時にはマップ情報が公開されてるだろうから楽だろうけど。
162.名も無きレジェンドプレイヤー
もう、エリア1で生産職として遊んでようかな。
正直レベル上げだるいし、マップ埋めもだるい。
163.名も無きレジェンドプレイヤー
>>162
そういう行動はデスゲームになった時にしような。
てか、ゲームの作業が嫌いな奴がなんで、このゲームやってんだw
164.名も無きレジェンドプレイヤー
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と、ゲームの愚痴大会が始まっているが、私には関係ない。
個人的に、なんとなく一番を取りたいだけなのだから。
それは多分、ただの八つ当たりという奴だ。
自分の中で渦巻く負の感情が行き場をなくして、それをゲームにぶつけてるだけ。
そんな考えを振払うように、私は掲示板の内容を読みふけった。
そんな感じで掲示板を見ていたら、いつの間にかデスペナルティのステータス低下が解除されていた。
もう一度、あのボスに挑もう。
そして、今度こそ倒してみせる。
私はこのゲームの世界で一番になると決めたのだから。
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