~ちっこぃお局ちゃんとドジっ子新社会人~
昔、会社にはお局さまと呼ばれる生物がいたとか、OLがよく読む新聞で考察されているのを見ながら私は、視線を自分のとなりの島のディスクへとむける。
その絶滅危惧種らしいお局さまが、私の入社した会社にはいるのだ。
それも・・・なぜか無邪気な小学生の姿で・・・・。
「・・・ここが、最終面接の場所・・・」
思えば、大学3年生の春、震災があって面接を受けに行くことができなかったあの日から、ずっとこの日から逃げてきていた気がする。
就職ではなく、大学院へすすみ、ずるずると教授の手伝いを続けて4年。
小鳥遊 七里はこのままではいけないと立ち上がりました!
大学の外でバイトしてみては失敗し、ハローワークに行けば、「ふなっしーみたいになりたいんです!」と胸を張って言い過ぎて職員を悩ませてきた私だけど!
今日、ついに、こうして・・・
「・・・逃げられないよ、私、頑張れ!」
スプリングコートを脱いで、やってやるぜとばかりに地元ではそれなりの歴史を持つ会社の玄関へと足を踏み入れたのでした。
「っと・・・確か、そのまま上がって総務部に行けばいいんだよね。」
時間は約束の7分前。
5~10分前がよい、しかし早すぎても仕事の邪魔というネットの情報と縁起を担いでだした結果がこの7分前行動。
大学とは違う落ち着いた雰囲気にどきどきしながら、私はエレベーターを待ちます。
緊張が落ち着くまもなく、たどり着いたその場で・・・私は信じられないものを目にしました。
「だーかーら!!そうじゃないって言ってるのー!わかりゅ?谷君!」
「お局ちゃんさん、すいません!」
「謝るより先に、こうどー」
「はい!ごめんなさい!」
「上司には、申し訳ありませんでしょーがー!」
・・・・・・舌っ足らずな小学生?に怒られている、スーツの男性・・・。
んん??
とりあえず、自分のいる場所を確認してみると、右に総務部と書かれた看板。
間違ってはいない。
次に、時間を再度確認。
ややすぎて約束の11時の6分前・・・間違ってない。
「あ、面接の小鳥遊さんですね。少しこちらでお待ちください。」
谷君と呼ばれていた方に、ぼーっとしているところを気がつかれて総務部のなかへと促される。
気がつくと小学生?はいなくなっていたから・・・きっとあれはテンパリすぎた私の幻覚だった・・・いた。いやいやいやいや、おかしいでしょ!普通に案内された部屋の中の机のひとつにさっきの怒れる幼女が座っていた。
しかも足がつかないからか、座布団に丁寧に正座している。
すべての緊張が、この目の前の状況をどうするかという問題によって持っていかれています。
聞いていいのかな?それともやはり踏み込んではいけない理由があるのかな?
あぁ・・・もう分からない。
こんなこと、大学じゃ教えてくれなかった。社会に出ようとして早速私は大きな困難にぶつかってしまったようでした。
「あぁ、小鳥遊さん、おはようございます。今日はわざわざありがとうございます。面接は上の階でおこないますのでちょっと待っていてくださいね。」
「あ、三滝さん!!おはようございます!!」
三滝さん、私の大学の教授の知り合いで、この会社の人事を担当している方。
わざわざ大学院に来てくれて、私に会社の説明をしてくださったので少し、面識があります。
・・・そういえば
ーあとは、わが社のお局さんとうまくやっていけるかどうかかな・・・ー
ーおつぼね・・・さん?ー
ーあぁ、いやいやそれは面接のときに分かるからー
・・・前回会った時に聞いた不安なワードが頭をよぎっていくのです。
今、聞くしかない!!今しかない!!
「あの、三滝さん、聞いても宜しいでしょうか?」
「うん?なんだい?なにか困ったことでもあったかな?」
「困ったことといいますか・・・いえ、困っているといえば困っているんですが・・・あの、そこに座っているお子さんは、どなたかの娘さんでしょうか?」




