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紺碧の月桂樹と鳥  作者: 音塚 和音
本編
8/12

8

いよいよ『星まつり』当日。

日が暮れ始め、美しい夕日が祭り会場を照らす。


舞台とその周辺に魔力が強い者…神官・巫女・魔導師などが集まり、舞台中央に集められた拳ほどの魔石に光の魔力を注入するパフォーマンスが始まる。

光の魔力を注入された『魔石』を、巫女や神官から受け取った者が、会場中のランタンの中に入れていく。

広い会場が優しい光で溢れ、ほのかに明るくなる。


神官の祈り、巫女が捧げる舞い、子どもたちの歌、各集落に伝わる踊りなどが行われ、たくさんある露店も皆趣向を凝らし賑わっている。


夜が更けてくると、小さな子どもを連れた人々が減り始め、入れ替わるようにプリエラの髪飾りを付けた娘とそれを待つ若者が増え始める。

祭りが始まってからずっとソワソワしている私も、そろそろ待ち合わせの場所に移動する。


私が選んだ場所は舞台から少し離れ露店も無い、会場の端になるひっそりとしたところだ。

祭り会場は普段は大きな公園なので噴水やビオトープ、ベンチもあり、休憩したり景色を楽しんだり森林浴もすることができる。

私は置かれているベンチに腰を下ろして、想い人が現れるのを待った。


「ここか?」と声がして、シルベスが現れる。

落胆が私の顔に出ていたのだろう、彼は笑いながら言った。


「こんな人気のないところに、可愛い妹を一人で行かせられるか。」


それはそうだ…と思っていると、シルベスの大きな体の後ろからマリアンヌが出てきた。


「ではな、あまり遅くなるなよ。いいか、ちゃんと送り届けないと今後はお前の味方はしないからな!」


そう言ってニヤニヤしながら、シルベスは我々の前から立ち去った。


二人きりになると珍しく緊張して言葉が出ない。

姿勢を正してマリアンヌときちんと向き合う。


彼女が着ている白地のふんわりとしたシンプルなワンピースには、左肩から裾に向かって広がるようにつる植物が黄緑の糸で刺繍されていた。

彼女の柔らかなはちみつ色の髪はハーフアップにされていて、私が贈った白い小花と黄色いプリエラの髪飾りが、花冠のように彼女の頭上に飾られている。

まるで花の精だな…などと見とれてしまっていた。


「私、星まつりに来たのは初めて。変じゃないかしら?」


見とれてしまい何も言わない私に、そうマリアンヌが言った。


「綺麗だよ。 … 綺麗だ。」


もっと気の利いた言葉や若い娘が喜ぶようなセリフが言えればよかったのだが、何一つ浮かんでこないので思ったままを言葉にするしかなかった。


私はマリアンヌをベンチまでエスコートし座らせる。

そして地面に跪いて彼女の右手をそっと取って言った。


「マリアンヌ・フィルダナ嬢、私はこれからの人生をあなたと共に歩んでいきたいのだが、お許しいただけるかな?」


頬を赤く染めたマリアンヌは


「本当に…本当に私でよろしいのですか?体が弱くて何もできない、こんな役立たずの私でも?」


と涙ぐみ、声を震わせながら言った。


「何もできないなんてとんでもない。君は僕の身を案じ、想いを刺繍に込めた。実際それは僕を守ってくれ、今も守られている。僕も君を守りたい、そして幸せにしたい。それが僕が生きる意味なんだ。」


と言った私に、マリアンヌは震える小さな声で


「私もあなたを幸せにしたい。一緒に幸せに…生きていたいの。」


と言った後、居住まいを正して今度はハッキリと大きな声で言った。


「アーノルド・オルスター様、私もあなたと人生を共にしたいです。」


そう言ってふわりと笑う彼女の笑顔は眩しかった。

私は取っていた彼女の手の甲に口づけを落とした。


0時の「祈りと誓いの(とき)」が近づき、何もなかった暗闇に、大聖堂がライトアップされ浮かび上がる。

魔導士たちが作った光の玉が天に向かって放たれ、花が開くように爆ぜた。

ここはこれを見るためのとっておきの場所だった。


「まあ!…素敵。」とマリアンヌがベンチから立ち上がり、空を見上げる。

大聖堂の鐘がゆっくりと鳴らされる。

夜空を彩る光の花を見上げる無防備なマリアンヌの額に、私はそっとキスをした。

「きゃっ」と恥ずかしがり耳まで真っ赤になる可愛いマリー。


「さあ、僕の額にもキスをしてくれないかな?」


私は彼女よりもだいぶ背が高いので届くように屈むと、真っ赤になったマリアンヌがつま先立ちをして精一杯背を伸ばしたかと思うと、彼女の顔が素早く近づいて一瞬だけ額に柔らかな唇が触れた。


外との関わりをあまり持たないマリアンヌが、額のキスに関して疑問を口にしなかったということは、侍女か誰かに例の「婚姻と永遠の約束」のことを聞いていたのだろう。


恥ずかしくて真っ赤な顔で俯く彼女の顔を両手でやさしく包み込み、そして上を向かせる。

照明の光をその瞳に映した彼女の戸惑った顔を暫く見つめ、そして彼女の唇に私の唇をそっと重ねた。


「愛している。」



鐘が鳴り終わり、皆が祭りの余韻に浸りながら帰路につく。

私たちも迎えの馬車が来る場所まで、手をつないで寄り添いゆっくりと歩く。


この日私は、マリアンヌの笑顔のために彼女の望む「幸せ」を叶えると心に誓った。


 … おわり …


『白百合と青い石』の主人公の両親の話でした。

拙い文章ですが最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


「拍手」ボタンにお礼小話を付けました。

『紺碧〜』と『白百合〜』を繋ぐお話です。


この度はお読みくださり、ありがとうございました!

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