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紺碧の月桂樹と鳥  作者: 音塚 和音
本編
3/12

3

本日2回目の投稿です。よろしくお願いします。

食事をしながら自然とシルベスと私の仕事についての話になり、仕事の話をしているうちに国の財政や情勢、果ては国防について誰とは無しに語り始め、代々政治関係に携わるフィルダナ家男性陣は大いに盛り上がった。


食事を終えると酒とお茶を用意しているということで、大きなソファーがあるリビングへと通される。


酒も入ったので、先ほどとは違い私のプライベートな話も話題となった。

「両親は元気なのか?」「実家へはどのくらいの頻度で帰るのか?」「将来、領地へ戻るのか?」…などの様々なことを。


「兄が結婚して父の元で領地を管理しているので、私には大きな財産はありませんがその代わり自由に自分の人生を選択し、歩むことはできます。」


と笑って答えると、シルベスの父ステイツ・フィルダナ殿がニヤリと笑って


「財産など結婚相手でいかようにもなる。なあ!」


と弟のアントニオ殿(シルベスの叔父)に向かって思わせぶりに言ったことで、今夜の食事会に叔父家族が来ていた意味がわかった。



ああ、アントニオ殿は娘が2人だから娘と結婚してくれる婿を探しているのか…と頭を過ぎったときには、「タチアナ!」「フラン!」と娘二人を我々の方に呼び寄せていた。


タチアナは18歳で整った華やかな美人。

自分でも自覚があるのだろう。

自信あふれる身のこなしと、少々気の強そうな目元と口元から紡ぎ出される言葉からも分かるほどだ。

きっと夜会では皆の中心となり、ダンスの申し込みも途切れることがないだろう。


フランは15歳でまだ幼さが残り、かわいらしい。

どちらかといえば姉のタチアナよりも、従姉のマリアンヌと顔や雰囲気が似ている。

常にタチアナと比較される環境にあるせいか、人見知りで消極的なようだ。

フランとは殆ど言葉を交わさなかった。

社交デビューもしていない年なので、男性と話をすることに慣れていないのか、従兄のシルベスとの会話でさえもぎこちないほどだった。


タチアナは当然ながら積極的で、自分の興味があることへの質問とその倍以上の自分のことを一方的に話していた。

私は笑顔と酒を絶やさないように、適当に相槌を打ちながらやり過ごしていた。



「叔父上、馬車の用意ができました。」


と、シルベスが私が待ちかねていた言葉を言ってくれた。

私もタチアナを馬車までエスコートし、シルベスの叔父家族を見送った。


「お疲れ様、ずいぶん酒が進んでしまったね。今夜は我が家に泊まっていくといいよ。」


いつも以上に酒を飲んでしまったので、シルベスの言葉に甘えることにした。

案内された客間が1階だったので、酔いを少し醒ますためテラスにある椅子に腰かけ、夜空に浮かぶ満月を見上げ風に当たった。



カタンという小さな音がした後に、扉が開く音がした。

どうやら1階にある近い部屋の扉が開けられ、誰かがテラスに出てきたようだ。

出てきた人は微かに足音をさせて庭まで来ると立ち止ったようだった。

私はゆっくりと椅子から立ち上がり庭に出て姿を確認してみる。


そこには白い寝衣にストールを纏ったマリアンヌが、ポロポロと涙を流しながら夜空を見上げ、佇んでいた。


「マリー。どうしたんだい?」


そんな姿に思わず声を掛けてしまう。

突然声を掛けられて驚いたのか、ビクリと体を震わせて小さく「いやっ!」と言って自室に駆け戻って行ってしまった。


しばらくマリアンヌの駆けこんでいった部屋の方をぼんやり見ていたが、そうしていても仕方がないので私も与えられた部屋に戻った。

寝台に体を横たえたが、白い寝衣で月光を浴び涙を流すマリアンヌの姿が思い出されて、睡魔が訪れるまでだいぶ時間を要した。

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