2
勉学も忙しく幼いころのように頻繁にシルベスの屋敷に行くことも無くなった。
マリーにもそのまま会うことが無く時が過ぎて、私は学校を卒業する歳 … 18歳になっていた。
兄は数年前に結婚し子どもも生まれ、父の後を継ぐべく領地の管理を手伝っている。
次男である私が家に戻る必要はない。
私は公務員試験を受けて王都で生計を立てて暮らしていくことにした。
成績と素行が良かったので難なく公務員試験に合格し、そして学校を卒業した私は新たな生活を始めた。
シルベスも同じ道に進んで、相変わらず親友でライバルというような良好な関係は続いていた。
互いに国の内務官として従事し、各々の部署で成果を上げ信頼と実績を積み上げていった。
そして勤めも3年経ち慣れてきたころ、久々にフィルダナ家…シルベスの家の夕食会に招かれた。
学校卒業以降はシルベスと仕事帰りにバーや私の家(オルスター家王都のカントリーハウス)で飲むことはあったが、シルベスの家に足を運ぶことはなくなっていた。
夕食会に招かれるとは珍しいと思っていると
「父が若者とゆっくり話しをしたいと言っているんだ。」
シルベスの家は血筋はもちろん、職業的にも代々国を支える家柄だ。
現に彼の父親も現大臣の一人なのだが、若い人の考えや意見に耳を傾けてくれ助言もしてくれる。
要職の頭が固くなって融通が利かない年かさの先輩方が多い中、貴重な存在だ。
「それにね、マリアンヌが療養先から王都に完全に戻って来たんだ。こちらには彼女の知り合いは少なくて…。ね、君も懐かしいだろう?」
とシルベスが眉を下げた微笑で言った。
夕食会はシルベスの両親と祖父母、伯父夫婦とその娘2人にシルベスとマリアンヌ、それに加えて家族以外はなぜか私だけといった顔ぶれだった。
自分以外にも国のために働く若者が招かれているのだと思っていたのだが、どうやらただの夕食会ではなかったようだ。
「アーノルド?」
12年ぶりに会ったマリアンヌは当たり前だが、幼くて「アード」としか言えなかったあの頃の子どもではなかった。
でも、はちみつ色の柔らかな髪と新緑を思わせる瑞々しい瞳は変わらない。
ふんわりとした長い袖のドレスを着てはいるが、細すぎる体を隠しきれていない。
同じ年頃の従姉たちよりも健康的とは言えない肌の白さは、療養して「すっかり丈夫」になったとは言い難いものだ。
幼いころ妹のように接していたからか、彼女のそんな姿に「守ってあげたい」という思いが掻き立てられた。
健康でないことを本人が一番気にしているだろうから、そんなそぶりを見せないように
「やあマリー、綺麗になったね。もう『アード』とは呼んでくれないの?」
と明るく、少し意地悪に話しかけると、マリアンヌは顔を赤らめて
「もう『アーノルド』ってはっきりと発音できます!」
マリーは怒ったような口調で言いながら、幼い頃と同じようにぷうっと頬を膨らませた。
彼女のそんな変わらない部分が可愛らしく、クスクスと笑いながら席に着いた。