サポ子さんの『世界』
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まずはみなさん、恋愛シミュレーションゲーム、「愛の学園」をお買い上げありがとうございます!
名前を入力してね!
誕生日は?
血液型は?
どんなお部屋に住んでるの?
入力内容はこれでOK?
じゃあ、また会おうね!
深刻なエラーが発生しました。
今回のヒロインは、転生者です。
今回のヒロインは、生まれ変わりです。
今回のヒロインは、周回者です。
今回のヒロインは、記憶があります。
今回のヒロインは・・・です。
今回のヒロインは・・・・・・・・・・・。
エラー発生。
エラー発生。
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー・・・・・。
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私には、変な能力がある。人の好感度が数値データでみえるのだ。
けど、見える好感度は自分へのものじゃない。他人へのものしか見えない。
ついでになんでか知らないけど、よく他人の極秘であろう個人情報を知ってしまう。
決して自分で収集してるわけじゃない。廊下とか歩いてると健康診断の結果が落ちてたりとかすんのさ、いや、マジで。後男女間の修羅場とか、噂とか、聞いてないのに友人が教えてくれる。
何故かということは、17年間考えて、一人の少女と出会ってようやく判明した。
私が、彼女のためにこの世界に用意されたサポートキャラだからである。
今日も、何の用もなしにとどまっていた夕暮れの教室に彼女が飛び込んでくる。
おあつらえ向きに、教室には私しかいなかった。
「サポ子ちゃん!私って周りの人からどう思われてるかな?」
友達にかける第一声がそれかよ、なんて思わないでいただきたい。
彼女は彼女でイケメンを落とすのに必死なのだ。恋愛脳?恋愛シミュレーションゲームの主人公に対して何を言っているんだ。昨今のゲームを見てみろ。恋が実らなかったらバッドエンドまっさかさまなのもあるんだぞ。この『世界』がそういう要素のあるゲームかどうかはまだ私には判断が付かないところであるが、彼女には平穏に恋を実らせていただきたいものである。
私は彼女の疑問に応えるべく、手帳を開いた。うっかりメモしてしまった個人情報の数々を確認し、彼女が出会っているイケメンの好感度を教えてあげる。
うん、生徒会長の二階堂さんは普通よりちょっと高めかな。
幼馴染の七瀬君は好き状態でもときめき状態にはなってないみたい。
図書委員の湊君はあなたに興味があるみたいだよ。
園芸部の桐谷君はもうすっかりあなたに夢中みたい。
こんな感じかな。
まだ出会ってないカッコいい人もいるみたいだよ。
私の言葉に彼女は安心したようにふわっと柔らかく笑う。後光が差しているようだ。
うおっ、まぶし!
「そうなんだぁ!いつもありがとう、サポ子ちゃん!ねえ、サポ子ちゃんは仲いい男の子はいないの?」
こんなモブ顔に愛ちゃんが狙うクラスのイケメンとそんなフラグは立たないよ。
だから安心して攻略にいそしんでね。
「うん!ありがとう!」
いえいえ、美少女の満面の笑みのためなら何のそのですよ。
また何でも聞いてね。
またね、と手を降って彼女が教室を飛び出していく。後姿まで納得の美少女である。
彼女の名前は菅野愛。この世界のヒロインであり、私の存在意義の少女である。さすがイケメンを落とすべく生まれ落ちたヒロインというだけあって、ふわふわの栗毛、パッチリ二重、絶妙なプロポーションと完璧な美少女である。その辺にいる美人とすら一線を画す美しさなのに、イケメン以外にはフラグが立たないというあたり、末恐ろしい。
この世界は彼女が中心とまでは言い過ぎかもしれないが、この学園の中で起きる出来事の中心は少なくとも愛ちゃんなので、たぶん私が何となく教室に残っていたのもそういう定めだったのだろう。まぁ、お役に立てたようで何よりだが。
本日のお仕事も終わった様なので、カバンをもってのんびりと下校する。
夕暮れに染まったグラウンドでは、運動部員が青春の汗を流している。
「おい!」
ああ、そういえば愛ちゃんがまだであってないイケメンは運動部の人じゃないかなぁ。
「おいってば!」
愛ちゃんは勉強のパラメーターが高い人と交流があるようだから、運動系のイケメンとは交流があまりないのかもしれない。今度聞かれたら教えてあげよう。
「さっきから声かけてんだろ!」
後ろからグイッと手を引かれて振り返る。
おやおや、君は愛ちゃんの双子のお兄さんの菅野歩君じゃないか。
「なんなんだよ、その説明口調・・・。」
疲れたようにため息をつく歩君は愛ちゃんと瓜二つのイケメンである。本当にそっくりなので、やや中性的かもしれない。私とは一年の時から同じクラスで、結構仲良しだ。
彼は愛ちゃんと違いヒロインではないのでモブ相手にもフラグを立てているため、多少私は女子から恨まれている。
ちっ!イケメン爆ぜろ。
「なんでいきなり爆発しなきゃなんねーんだよ!ほんと意味わかんねーな、お前!」
ふん、恵まれたイケメンにモブ顔の気持ちはわかるまい。
わかりたければモブ顔に整形してから出直してきなよ。
「なんなんだよ、モブ顔って・・・。お前だって、その・・・可愛くねーわけじゃねーだろ。」
そうだね。生きていくには困らない顔だとは思うけど、モブ顔に変わりないと思う。
まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。なんか用事?
「いや、お前が見えたから・・・。」
はぁ。
「察しろよ!」
逆切れかよ。まぁいい。もう弓道部は終わったの?
「ああ、もう終わり。だからその・・・もう暗くなるし・・・送っていってやるよ。」
ありがとう。持つべきは異性の友人だね。
「いや、そーゆーんじゃねーんだけど・・・。まぁいいや。カバンとってくるから待ってろよ。」
走り去る歩君に頷き返して、校門のところで待つことにする。
実は愛ちゃんとは数えるほどしか一緒に帰ったことないけど、歩君とは頻繁に下校している。家が近いから。
なんで愛ちゃんと一緒に帰ることが少ないかというのは野暮な話だ。下校イベントを逃してまでサポートキャラと帰りたいか?という話である。
歩君は暇なのか何なのか、高確率で私を下校に誘う。もしかしたらあんな美少女が妹なせいで、マジでぼっちなんだろうか。私ですら友達いるのに。歩君かわいそう。
「待たせたな・・・ってなんだよ、人を憐れむような顔しやがって。」
カバンを持った歩君が走ってきた。私は静かに首を振る。
ううん。何でもない。歩君、歩君には私がいるからね。
「はぁ!?な、ちょ、どういう意味だよ!」
今日の夕飯何かなー?
「話聞けよ!!」
なにやら興奮している歩君と駄弁りながら帰路についていると、前方に人影が見えた。あれは愛ちゃんと愛ちゃんの幼馴染の七瀬君では?
「あ・・・?ホントだ、愛と誠だな。声かけるか?」
歩君は馬鹿なの?死ぬの?
「はぁ?なんでだよ!」
妹の恋路を邪魔する奴は馬にけられたり、豆腐の角に頭ぶつけて死ぬんだよ。
見てごらんよ、あの2人。すごく良い感じでしょ?どこからどう見ても下校デート中でしょ?それなのに歩君が声かけるとか、何なの?三角関係ルートにでもいくの?
幻の近親相姦エンドなの?あ、それ隠しで本当にありそう。
「お前はホントに何言ってんだよ・・・。」
いや、歩君は一作目で攻略対象キャラじゃなくて、お客様センターに問い合わせが殺到してアップデートかファンディスクで攻略可能になりそうな人だから、つい。
「ついじゃねーよ・・・。愛に興味あるわけねーだろ・・・。」
まぁそうだろうね。2人とも仲悪いもんね。
なぜか疲れたようなため息をつく歩君の腕をつかんで引っ張る。
このままでは鉢合わせてしまいそうだから、寄り道していこう。
あっちの公園でいいよね。ついでにクレープ食べようよ。
「え?いや、別にいいけどよ・・・。腕・・・。」
私たちは七瀬君と愛ちゃんに見つからないようにコソコソっと移動する。
やれやれ、フラグを守るのも一苦労である。
公園について、クレープを買う。私がイチゴので、歩君は照り焼きチキンのおかずクレープだ。歩君が立て替えてくれたので、ベンチに座ってお金を渡そうとすると、首を横に振られてしまう。
「いらねぇ。」
そうおっしゃらずに。なんで私が歩君にクレープおごられないとなんないの。
「・・・お前もうちょっと言い方ってもんがあんだろ。さっき、愛に声をかけんの止めてくれただろ。その礼だよ。」
なんだ、そんなことかあれはお礼をもらうには値しないよ。愛ちゃんの恋路をサポートするのは私の宿命。いわば呼吸しないと死んじゃうみたいなもんなので、お気になさらず。
私がそういうと、歩君は何だか怒ったような、悲しそうなような、よくわからない表情をする。私は気にせずクレープを齧った。甘くておいしい。
「お前さ、前から思ってたんだけどなんでそんな愛につくしてんの?
兄貴の俺が言うのもなんだけど、あいつ恋愛脳だし、どう考えてもお前が情報通だからって利用されてないか?」
直球できたね。
「直球で聞かなきゃお前はぐらかすだろ。一年の時からそうだ。」
そうかもしれない。
私は考えてみる。なんで私は愛ちゃんに尽くすのだろう。
考えてみると、答えはすぐに出た。とてもシンプルな理由だった。
愛ちゃんが、私の神様だからだ。
「は?神様?」
歩君があっけにとられたような顔をする。私は笑って頷いた。
この『世界』はね、愛ちゃんのための恋愛ゲームなんだよ。
歩君、私ね、人の好感度が見えるんだよ。誰が、誰をどのくらい好きとか、嫌いとか、そういうの。
「へ?」
歩君はポカンとしてから、急に顔色を赤くなったり、青くなったりさせた。
「愛のための恋愛ゲームって・・・ってか、お、俺のも見えるのか!?」
うん。私へのは見えないけどね。他人同士のは見える。あと、知りたくもない個人情報が、どんどんわかっちゃうの。
歩君は安心したような、複雑なような、変な顔をした。
ごめんね。気持ち悪いよね。
「いや、むしろ逆に情報通の謎が解けたっつーか・・・。そんで?愛が神様ってのとどう関係してんの?あいつが変に好かれてんのと関係あるわけ?」
うん。私はね、ずっとこの能力が嫌だったよ。
知りたくない人の関係とか、状況とか、見えるのがすごくすごく嫌だった。ニコニコしながら話してるのにお互いを嫌いあってる人もたくさんいてね、怖いと思ったし、こんなものが見える私は病気じゃないかって思ったりもしていたんだ。
でもね、高校に上がって愛ちゃんを見て、わかったんだよ。
私の能力は、彼女のためのものだったんだって。彼女はこの『世界』のヒロインで、私は彼女をサポートするために生まれてきたんだって。
この能力の目的・・・っていうのかな、そういうのがわかったらなんだか安心したんだ。
「でもよ、それって『世界』だかゲームだかなんだかよくわかんねーけど、愛のせいで変なもん押し付けられて、ずっと悩んでたってことじゃねーの。」
そうかもしれない。でも、たぶん私は、彼女がいたからこの『世界』に必要とされて、生まれてきたんだと思う。
だから愛ちゃんは私の神様なんだよ。彼女の存在が、私を作ったんだ。
「お前、ポジティブすぎんだろ。」
小ばかにしたようにいう歩君に私は苦笑いを返す。
今の説明でわかってもらえた?
「わかんねーよ。俺には。お前の言うことちっともわかんねー。」
ぶっきらぼうに、歩君はクレープを齧る。
「俺はさ、愛が怖いよ。」
え?そうなの?
元々あんまり仲良くなかったのは知ってるけど。
だって歩君の愛ちゃんへの好感度は底辺から微動だにしないもの。
「高校に入ってから、あいつの周りじゃ変なことばっか起きるし、あいつにあった奴は他の子が好きだった奴でもあいつのこと好きになったりするんだ。お前の言うとおり、この『世界』がゲームってんなら、そのせいかも知れないけどよ。」
ほう。それはヒロイン補正というやつだね。
「かもな。でも中学まではあんなんじゃなかったんだ。高校に入ってから急に毎週男と遊び歩いてるけど、昔は仲のいい男だって、誠くらいでさ。中学までは俺ら仲良かったんだ。」
え!意外だね!それは知らなかった。
「お前でも、知らないことがあんだな。」
おかしそうに、歩君が笑う。でもほんとに知らなかったのだ。
菅野ツインズはとても仲が良かったとは思えない。
ほとんど一緒にいるところは見かけないし、一緒にいても、二人で会話していないのだ。
私や七瀬君がいるときは、二人ともどっちかに話しかけるので、まともに話したくない程に仲が悪いのだと思っていた。
「実際、今は最悪に仲悪いけどな。高校に入ってさー。なんか愛がおかしくなったんだ。いきなりわけわかんねーことばっかり言うし、いつの間にかお前と友達になってるし。友達のくせに、他人の評価とかしか聞かねーし。」
ふーん。
私のことはさておきどうしたんだろうね?
「俺がききてーよ・・・。ってかお前のこともさて置くなよ。お前があいつに感謝してるのとかはわかったけど、それでもあいつがお前のこと適当に扱っていい理由にはなんねーだろ。つーか俺がヤダ。」
えー。歩君って友達思いだね。
「友達とか、そういうのじゃなくてさ、俺は・・・!」
わっ!
歩君が何がしかを言おうと口を開いたとき、強い風が吹いて、声がかき消される。
あ、紙が。
食べ終わった、クレープの包み紙が風に飛ばされる。
ひゅーんと飛んでいった紙は、私たちと同じ制服の女の子の足元に・・・。
ってあれは!
「愛・・・?」
「お兄ちゃん、こんなところで何しててるの?」
いつものように愛ちゃんから天使の微笑みを向けられているはずなのに、なんでこんなに寒気がするんだ。歩君、なんか死亡フラグが私に立っているとサポートキャラの感が告げているから、選択肢を間違えてくれるなよ。
「お前にはかんけーねーだろ。」
おいいい!なんでそんなこと言うの!いや、仲悪いのはわかってるけど!
今そういう悪態ついていい雰囲気じゃないよ!?
「関係あるよぉ。だって私、お兄ちゃんの妹だし、サポ子ちゃんのお友達だもん。
ねぇ、サポ子ちゃん。お兄ちゃんと何してたのかなぁ?」
へ?わ、私ですか。ええと、歩君とたまたま帰り道一緒になったので、一緒に帰ってクレープ食べてました。
「ふーん・・・。クレープなんて一緒に食べる必要あったの?」
ないです。すいません。
「おい、愛!必要とか何意味わかんねーこと言ってんだよ。俺とコイツが何してようか関係ねーだろ。」
あ、ごめん。ちょっと悪化しそうだから、歩君黙っててくれないかな。
ええと、気を悪くしたならごめんね。愛ちゃん。
愛ちゃんが七瀬君といい感じだったから、ジャマすまいと思って・・・。
「まこくんと?」
そうです。
「ちっ・・・。だからイベントが発生しなかったのか・・・。」
えっ?
「ううん。こっちの話だよ。サポ子ちゃん、お兄ちゃんと仲良しなのかな?私今日聞いたとき、そんな男の子はいないって言ってたのに・・・。」
え?あ、あれって歩君も含まれてたの?ええと、仲がいいような、悪いような、悪友だといいますか・・・。
私がしどろもどろになりながらそういうと、グイッと横の歩君から肩を抱き寄せられた。
な、何をする!
「俺とコイツ、付き合ってんの。だからほっとけ。」
は?
ちょちょちょ、歩君何を・・・!!!!!
反論しようとした私の唇は、歩君の口に塞がれていた。
あ、歩君まつ毛長・・・じゃねー!!なななな!!!???
「んっ・・・んんっ・・。」
あっ、こら、てめっ、舌入れんな!
歩君からようやく解放されて、体に力が入らない。新鮮な空気がおいしい。
信じられなくて歩君を見ると、彼は好戦的なまなざしで私を見ている。
えー・・・?ちょ、マジでどうなってんのこれ。
「ほっとけるわけないじゃない!」
「はぁ!?ちょっ、愛何してんだ!」
今度はグィッと後ろに肩が引かれて、ベンチに押し付けられる。
「んっ・・・・ちゅ・・・・!」
そして、マシュマロのような感触が私の唇にーって・・・わ、私愛ちゃんにキスされてる!?!?!?!
「えへへ。消毒だよ。」
歩君と瓜二つの美少女フェイスで蕩けそうに微笑まれる。
え、あ、ありがとうございます・・・?
「なに呑気に礼言ってんだよ!おい、愛、どういうつもりだ!」
いや、歩君もね。君も私の同意なくキスしたからね。
「そ、それはいいんだよ!」
「何がいいのよ!サポ子ちゃんの初めては全部私のものだったのに、お兄ちゃんのせいで計画がパーだよ!あとはお兄ちゃんさえ私にメロメロになれば、サポ子ちゃんルートが解禁されるのに!お兄ちゃん私に全然靡かないし、挙句の果てにはサポ子ちゃんの彼氏?隠しキャラ同士がくっつくとかありえない!ホントいい加減にしてよね!」
えっ?
め、愛ちゃん?何言ってんの?
私は抑えられながら愛ちゃんを呆然と見上げる。むくれている彼女も美しいが、今は見とれている場合じゃない。
「愛、お前何言ってんだ・・・?」
「いいよ、お兄ちゃんにはわかんなくて。ねぇ、サポ子ちゃんならわかってくれるよね。この『世界』のこと。この『世界』はさぁ、私のためのゲームなの。」
え、えと、存じております。
「ふふふ、そうだと思った。だってサポ子ちゃんは私の味方だもんね。私、『私』になる前からこのゲームしてたけど、どのルートでも味方なのはサポ子ちゃんだけだったもん。」
『私』になる前?
「そうだよ。私ね、昔は男の子だったの。妹に頼まれて『愛の学園』してて・・・。そしたら生まれ変わっちゃったの。『私』に。思い出したのは高校に入ってからだけど。」
え、えーと・・・。ゆ、ユーザー様ということでよろしいでしょうか・・・?
「おまえ、言ってる意味わかんのか?」
いや、たぶん正しく理解できてないけど、そういうことな気がするよ、歩君。
「私ね。絶対に裏切らないサポ子ちゃんが欲しいの。だってこの『世界』は怖いもの。
でもサポ子ちゃん、隠しキャラだから攻略するためには攻略キャラ全員の好感度をあげて振る必要があったから・・・。私頑張ってたのに・・・。」
プルプルと愛ちゃんが震える。愛ちゃん見て何となくそうかなって思ってけど、やっぱりこの『世界』は学園ラブコメのふりしてちょっと危ない世界なんだね。
え、えーと、なんかごめんなさい。
「・・・サポ子ちゃんがお兄ちゃんと別れて私と付き合ってくれるなら許してあげる。」
えっ。
「こっちが許すわけねーだろ!元男だか何だか知らねーけど、渡すわけねーだろ!」
「お兄ちゃんは引っ込んでてよ!」
「お前がひっこめ!」
私は歩君にガッと抱えあげられる。
いや、歩君とも付き合ってないですけどね!
うへぇ、内臓がシェイクされる!
ピコーン。
空から不思議な音声が聞こえる。
『隠し三角関係ルートに確定しました。』
私はおもむろに能力を使ってみる。
愛ちゃんと、歩君の間にVSのマークがついていた。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
私はパッと見キャットファイトな光景を最後に、自ら意識を手放した。
目が覚めた後、菅野家に連れ込まれて裸にむかれていたり、菅野ツインズとお付き合いする羽目になるのだが・・・まぁ、それは別の話だ。
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エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー
隠しルートが発生しました。
ルート:隠し三角形ルート
深刻なエラーです。
システムをシャットダウンします。
外部からの信号は、受け付けられません。
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー
エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー・・・。
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おしまい?
わかりにくくて急展開なサポ子さんの『世界』でした。
ここまでよんでくださってありがとうございました。
感想、ご指摘等々ありましたらお願いいたします。