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06

 次の日。

 宿で一番質の高い食事を朝食として食べ終えたドローは、今日を休日と決めて街に遊びに出た。

 とはいえ、その姿は武装は無いものの、ストーンアーマーによる全身鎧化されている上に"隠蔽:三"で身を眩ませている。

 さすがに店内では隠蔽を解除するが、大通りは別だ。


 二に上がる前のストーンアーマーは、頑丈なレンガを貼り付けたようなゴテゴテしい全身鎧だったが、今では鍛錬された加工品のようにシャープで凛々しい。


(おっ、あの屋台いいかも。後で行ってみるか)


 なんだかんだで初めての懐に余裕のある街歩きなので、ドローの足取りは軽い。

 色々な雑貨屋や服屋を鑑定しながら冷やかしたドローは、その中でも目を付けた店に戻った。


 店の中は客がちらほら居る程度で繁盛しているとは言い難い。

 所々に経過した月日を感じさせる傷みがあるが、倒壊の不安を感じさせるような傷は無い。

 清掃はしっかりとされていて、商品も綺麗だ。


 店員は受付に座っていて万引きを警戒しているものの、客に声を掛けてくる様子は無い。

 店員はチップを渡せば相談を受け付けるが、そうでなければ自ら動かない。


 それで客商売はいいのかと思えるかもしれないが、ドローが見た限り粗悪品はひとつもない。

 これで文句を言うのは相談しない客が悪いし、受付にデカデカと高くない相談料が書かれている。


(量産品だから値段も悪くないんだよな)


 魔道具。その名の通り、魔力を消費して使用する道具の総称だ。

 火がつくライターのようなものや、水が湧き出す袋。光りを放つランプに、水を弾く多目的用の大きい布。

 野外調理に重宝する携帯用コンロなんかもある。もちろん、燃料は魔力で代用だ。


 そうと理解しなければ普通の道具と見間違うものが多い。もっとも、ドローは"鑑定:三"があるので問題は無い。

 他にも回復ポーションなども置いてあるので、ドローは回復と解毒のポーションを一つずつ購入した。

 そして、資金的に魔道具が一つだけ買える余裕で、携帯用コンロを買う。鍋や食器は土魔法で使い捨て出来るから大丈夫だ。


「まいどあり」


 購入した客にだけ一声掛ける。なんとも無愛想な店員であった。

 ドローは店を出ると"隠蔽:三"をして、買った物を"どうぐ"へ入れていく。


(できれば使う事にならないようにしたいが、無理な時は無理だな)


 予期せぬ事態に備えてのポーションだ。

 しかし、鑑定によって判明した効能だと、ドローでは大した効果は無い。


 これは高くなりすぎた能力値の弊害だった。

 逆にそれだけ耐久力が高いという事になるのだが、ろくな回復手段が無ければ宝の持ち腐れだ。


(回復魔法……か)


 ポーションを作る錬金術では素材が必要になる。

 それなら魔力である程度ごり押しできる魔法なら、なんとかなるのだ。


 最後に服屋に行ったドローは布と糸を買って店を出ると、慣れた様子で姿を隠蔽して"どうぐ"に入れる。

 そして、適当に歩きながら調理持ちかどうかを鑑定で調べた屋台を堪能して宿に帰った。

 服なんて殆どがオーダーメイドだ。古着もあるが、それはドローは嫌だった。


 カウンターで宿賃を先払いして、清掃されたばかりの部屋に入ったドローは、鍵を閉めると全身鎧化を解いた。

 そして、椅子に座ると"どうぐ"から布と糸を取り出し、ドローは服作りに取り掛かる。


(まあ、予備があれば良い程度だし。スキル無しだから人に売れるような上等なモノは無理だろうから、できる限り時間を掛けて丁寧に作るか)


 針のような小さい金属は詠唱するまでもない。鋏もまた同じで、ドローとしても片手間で生成できる。

 これは、ドローが土魔法スキル持ちである事も理由の内の一つなのだが、そもそも、魔法はイメージが一番大事なのだ。


 残念ながら、裁縫スキルが無いドローの針仕事は雑の一言につきる。

 それでも、じっくり時間を掛けてやればできなくはない。

 型の方は今も着ている元の服をトレースして作るわけだから、脱ぐ必要がある。


(縛るタイプなら、そんなにきっちりやらなくても大丈夫か。全身鎧のインナーみたいなもんだ)


 などと考えながらドローは、着ていた服を頼りにゆっくりと服を作っていく。

 そんな作業をしながらも、ドローは今までわざと無視していた事を考えていた。


(俺の感だと長くて一ヶ月ぐらいか。元父親が領主の場所で、のんびりとできるのも……)


 それ以上は生死確認の刺客がやってくると、ドローの"感知:三"は知らせていた。

 これは、出産も無事に終わり、落ち着いた母親がドローに関して父親に聞くタイムリミットなのだが、流石の感知もそこまで万能ではない。


 ドローとしては見つかるのが一番まずい。無難なのは行方不明で、向こうとしては一番良いのは死体が発見される事だ。

 そうなると、自ずとドローがとれる選択は限られてくる。


 刺客を返り討ちにしてしまっては、何かがあったと悟られてしまう。

 それに、それは火に油を注ぐ行為でしかないし、ドローは国を相手に立ち回れるとは思っていない。

 確かにドローとしては放っておいてくれと願って止まない事だが、母親は父親の悪行をまだ知らないので無理なのだ。


(情報屋かどこかで行き先を調べる必要があるな……よし、できた)


 しばらくして出来上がった数セットの服をドローは"どうぐ"に入れると、腹一杯にご飯を食べて風呂に入って寝た。




 八日目。

 一日、別の事をやって少しはリフレッシュできたドローは、今日もストーンアーマーをして金属の箱を担ぐと、スケルトンの居る層へやってきていた。


「メタル・シャワー!」


 瞬時に生成され、射出される槍の穂先。

 それが無数に術者の付近から、散弾銃のように広く扇状に解き放たれる。

 これは"土魔法:二"となったドローが新しく覚えた範囲魔法だ。


 ただし、ドローの馬鹿魔力によって一つ一つが本来よりも強化され、更にそれは連続で射出されて途切れる事がない。

 もはや名称が同じなだけの別モノだった。


 スケルトンもスケルトンが装備している装備も、そして、大事な魔石諸共メタルシャワーは貫いていく。

 それは前衛のスケルトンも後衛のスケルトンも関係なく滅ぼした。後に残るのは残骸だけだ。


(……やりすぎた)


 虚しい勝利を胸にドローは、がっくりと肩を落とす。回収できるものはなにもない。

 ドローは足早に、その場を後にした。


(今度からは注意しないと……)


 そして、そう時間も掛からずに次のスケルトン達と接敵する。

 ドローの武器はいつもの変幻自在な奴だ。しかし、少しだけ使い勝手の悪い奴なら"どうぐ"に眠っている。


(前回ろくにやってなかったし、性能実験しておこうか)


 ドローが"どうぐ"から取り出したのは、赤銀色の金属でできた馬ほどの大狼。セキローだ。

 他の冒険者が居ない事は確認済みなので、ドローは"どうぐ"が今、発覚する事については心配していない。

 もっとも、ドローが見えなければ騒ぐも何もない。


「やれ」


 セキローを前衛のスケルトンへ攻撃するように魔力を込めて命じたドローは、そのまま高みの見物とした。

 ドローが言葉を発しようとも"隠蔽:三"が仕事をして、隠れているドローにスケルトン達は気付けない。


(さて……)


 セキローが、どう攻撃するか予想していたドローだったが、実際の動きは想像とあまり変わりがなかった。

 愚直なまでに真っ直ぐに、セキローはスケルトンに突き進む。

 スケルトンの矢が当たっても、剣が当たってもお構い無しだ。

 そこには機械的に命令を遂行する思惑しか、ドローには感じられない。


(簡易ゴーレムだからかな)


 簡易とはいえ、ドローがセキローに注いだ魔力は膨大だ。

 やがて時間も掛けずにセキローは、トップスピードのままスケルトンへ突撃した。体当たりだ。

 それだけで接近していた前衛のスケルトンはバラバラになった。

 そして、そのまま後衛も轢いていく。ドローは楽しそうに尻尾を振るセキローを空想した。


 やがてスケルトンを片付け終えたセキローがその場で待機状態になる。ドローの元に帰ってこない。

 融通の利かなさに頭を抱えたくなるが、物は使いようだ。


 大体、性能を理解できたドローは無傷のセキローに近づいて"どうぐ"に収納した。

 なにかあれば"感知:三"で察知できるので、ドローに焦りはない。


(素材は……魔石があれば良い方かな)


 ダンプカーに全身を激しくやられたような何か。

 ドローの前に広がる、ボロボロになったそれは、そんな表現が良くに合う光景だった。


 そして、素材回収に励んだドローだったが、やはりスケルトンが装備していた武器や防具は損傷が激しくて売り物にならない。

 ただ、魔石が取り出し易かったのは不幸中の幸いである。


(つまり、スケルトンなら一人で武器振り回してやった方が良いって事か)


 踏んだり蹴ったりのオーバーキル日和。ドローはスケルトン相手にやりすぎたのだった。

 それでも、いざという時にメタルシャワーやセキローで、リカバリーできるのは心強い。

 素材回収の終わったドローは、次のスケルトン達を探す事にしたのだった。




 あれから九グループのスケルトン達に、挨拶代わりの棍棒による後ろからの不意打ち、バックスタブを繰り返したドローは、レベルアップの快感に酔いしれていた。


 これで能力値は二千と四十八。古代竜が二体分だ。


(今回のスキルポイントは、これだ……!)


 ドローは迷わず回復魔法に振った。そして、"つよさ"からヘルプ機能で内容を見る。

 すると、回復魔法は単体回復と解毒の二つの魔法ができるようになっていた。


 単体回復の方はスケルトンなどの不死系モンスターに放つと、力量が足りていれば昇天させる事が出来る。

 二つ目の解毒は、本来であれば弱い毒しか解毒できないが、術者の魔力によってはそれも覆る。

 もっとも、それは猛烈に非効率だが、それも馬鹿魔力のドローには些細な事だ。


(あれ? これって、もしかしてあれに使えるんじゃ……?)


 ドローは迷う事無く解毒のアンチドーテを自身に掛けた。

 しかし、ドローが毒に陥っているわけではない。

 やがてドローは慎重にある場所を探った。


(やっぱりか!)


 歯のツルツルとした舌の感覚。ドローの想像通り、解毒は歯ブラシ代わりになったのだ。

 ちなみに、水魔法に"水泡"という魔法があるが、これは洗濯や風呂代わりにできる。


 すでに素材を入れている金属の箱は、スケルトンから収集したアイテムでほぼ一杯だ。そろそろ帰って換金した方がいい。

 しかし、ドローは新しく得た回復魔法の単体回復であるヒールの魔法が、スケルトンにどのくらい効くのか興味があった。


(どうせ消滅するんだろうし、一回だけやって帰ろう)


 今日、試した事が全て素材無しのオーバーキルであった為に、ドローは最初から期待していなかった。

 そして、ドローが"感知:三"を頼りに少し歩けば、スケルトンはすぐに見つかった。


「ヒール」


 影からの出会い頭の回復魔法。スケルトンは力が抜けたように膝から崩れ落ちた。

 それはまるで動力が切れた機械。他のスケルトンは敵を探すべく首を動かして警戒している。


(……あれ?)


 倒れたスケルトンは、どこにも破損が無い。完全な状態で横になっている。

 実に見事な昇天である。ドローはそのまま他のスケルトンも天に還していく。

 しばらくして残りのスケルトン達をヒールで倒し終わったドローだったが、すぐにデメリットに気が付いた。


(スキルが低い上に無理にやっているから、魔力の消費が激しい)


 スケルトン達を昇天させるのに、ドローは魔力を一割ほど消費している。

 そう時間は掛からずに魔力が回復するとはいえ、流石にこれは短時間当たりの自然回復量を超えていた。

 そもそも回復魔法使いがヒールで戦うのは最終手段だ。普通は他のパーティーメンバーに攻撃を任せる。


 しかし、回復魔法で不死系モンスターを倒せば素材が丸儲けになるのは、ドローにとっては嬉しい誤算だった。


(って、これ以上入らないな。仕方ない、"どうぐ"に入れておこう)


 もう一つ箱を生成しても良かったが、完品のスケルトン素材では一目置かれてしまうのは間違いない。

 そう考えたドローは"どうぐ"の方へ入れた。


 そして、迷宮から出たドローは箱の中にある素材だけをギルドで換金したのだった。

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