05
アサシンプレイを堪能したドローは、三つのグループのスケルトン達を倒してレベルアップを果たしていた。
能力値は五百十二。
スキルを度外視すれば人類最強になり、スキルポイントを振った"隠蔽:三"は空気のように見えなくなる事はもちろん、能力値の偽装もできるようになっていた。
これで多少動こうが喋ろうがドローが隠蔽を止めない限り、そう簡単に発見される事はない。
(レベルが上がったから、次の層に楽に進めるんだろうけど……基本的にスケルトンはグループ行動だから、経験値がオイシイんだよな)
今までの単体のモンスターと比べると数の暴力が上乗せされているので、ドローの思いとは裏腹にスケルトンのモンスターとしての危険度は跳ね上がっている。
だからこそ、冒険者や訓練兵は己のパーティよりも少ない数を探して戦っているのだ。
ドローが探し回る六体構成は、普通の冒険者パーティなら逃げるし、訓練兵であれば他の訓練兵のパーティを呼ぶ。
とはいえ、これでは訓練にならないので、訓練兵にとっても最後の策だ。
ちなみに、この迷宮は全部で六層の構造になっていて、ドローが今居るスケルトン層の次が最後となる。
そして、スケルトンの魔石を冒険者ギルドに売却すれば『新人』から『一人前』にランクアップできる。
これは一種の試練でもあるが、その入手方法は犯罪でなければ問われる事はない。
だからこそ、他の冒険者から魔石を買い取って箔を付ける冒険者だっている。
しかし、実力も無く己を過信していれば遠からず死ぬ。冒険者は基本的に自己責任なのだ。
それに、魔石を買い取って一人前になれたとしても、護衛依頼では必ず実力審査がある。
他にも無駄に因縁をつけて喧嘩を売ったりしないかどうかなど、人柄も重視される。
なぜなら、護衛する場合は長期間の場合が殆どだからだ。誰だって問題のある人物と組みたくは無い。
(まだ時間はあるし、上がったステータスの慣らしがてらスケルトンを狩るか)
今まで楽だった相手が、レベルアップをした事によって更に弱くなった。
だからといって、ドローは手を抜くつもりは無い。
上げた"隠蔽:三"の効果も知りたいし、散開されたら一体ずつしか倒せないドローとしては、数の暴力は地味に健在だ。
そして、道の真ん中を"隠蔽:三"をしながら疾走するドローは、横を通ったモンスターはもちろんの事、すれ違った冒険者にも発見される事はなかった。
やがてドローにとっての纏まった、やり易いスケルトンのグループを発見すると、ドローは減速する事無く壁を蹴って、上からスケルトン達を強襲した。
そこは丁度剣と斧を持つ四体のスケルトンに囲まれる場所であったが、ドローに気付いていないスケルトンは、そのままドローのしゃっきりと伸びた武器の回転斬りによってバラバラになってしまった。
(……いける!)
攻撃してもドローの隠蔽は解除されていない。
そのまま連続行動に移ったドローに、少し後方の弓持ち二体は反応する事もできなかった。
そして、ドローの接近を許してしまった弓を持つ二体のスケルトン達は、易々とドローの武器によってなぎ払われた。
無数の骨が地面に落ちる音が響く。
ドローは思ったよりも上手くいき、鑑定でスケルトン達の死亡確認しながら悦に入った顔で笑った。
戦闘が終われば素材集めの時間だ。
ドローは残骸から損傷の少ない武器や防具を回収した後で、スケルトン達から魔石を剥ぎ取った。
最後に石の箱の蓋を閉めれば、これで素材収集は完了だ。
(んー、やっぱりシャドウハイチュウは悪くないな。もうちょっと続けよう)
日用品や、もしもの時の回復ポーションなどを買う為にドローは次の獲物を探すのだった。
あれから更に四つのスケルトングループを壊滅させたドローは、再びレベルアップの祝福を受けていた。
(今回は早いな)
一日で二回のレベルアップ。これは初日と同じぐらいの速さである。
ついにドローの能力値は三桁を超え、千と二十四。これは人の枠を超えた古代竜クラスだ。
(スキルポイントは……うーん……)
隠蔽は三で十分なほど効果を発揮している。
もし足りなければ経験値を稼いで、またポイントを注げば良いとドローは思った。
そして、調理を取って資金獲得の安定を図るべきか迷ったドローだったが、今まで放置していた土魔法に振る事にした。
この層に来るまでドローは単体の敵しか相手にしていなかったが、ここで複数の敵と戦った事で自身の手数の少なさを思い知ったのだ。
(これで範囲魔法が得られれば……なんだこれ)
ポイントを振った後、メニューのヘルプ機能で"土魔法:二"を調べたドローは驚いた。
なぜなら、軽い範囲魔法の他に簡易ゴーレムを生成する魔法もできるようになっていたからだ。
更に生成できる素材に金属が加わり、多少は使い勝手が上がった。
(……とりあえず、ストーンアーマーを更新……いや、明日でいいか)
隠蔽で姿を隠しているとはいえ、ストーンアーマーの魔法を掛け直すとなると一瞬だけ無防備となり、隙が生じてしまう。
ドローはそれを嫌ったのだ。
その代わり、ドローはゴーレムの魔法で犬の形をしたものを作り上げる事にした。
「クリエイト・ゴーレム」
ゴーレムの姿形は術者のイメージに依存する。
そのゴーレムの強さは術者が注いだ魔力に応じて違うので、小さいから弱いなどという先入観は危険だ。
そして、ドローが一割の魔力を込めて出来上がったのは、中型犬ほどの大きさの狼だった。
「……」
その主成分は金属なのでメカメカしく、柔らかくは見えない。
その冷たい金属の身体をぺたぺた触りながらドローは思う。
(やっぱり、余裕ができたらテイマースキルも欲しいな。癒しが足りない)
簡易ゴーレムに命令できるのは三つ。攻撃、待機、防衛だ。
ドローは、ドローに対する防衛をゴーレムに命じると、迷宮を出るべく歩き出そうとした。
しかし、そこにスケルトン達がやってくる。
(あー……隠蔽はそこまで便利じゃないってことか)
すぐに狼ゴーレムはスケルトンに囲まれてしまった。
スケルトンは狼ゴーレムに攻撃を開始してはいるものの、ドローに気付いた様子は無い。
つまり、ドローの"隠蔽:三"の効果は、自身及びその所持品に範囲が限定されているのだ。
狼ゴーレムはスケルトン達に剣で攻撃され、槍を突かれ、矢を放たれても頑丈なので、びくともしない。
攻撃が跳ね返る音を聞きながら、隠蔽が続いているドローは迷う。
(どうしたもんか……)
既に気持ちが帰る事に傾いているドローに戦意は無い。
狼ゴーレムは、スケルトンの攻撃対象がドローでは無い為に、反撃をしていない。
これは、柔軟に対応できない簡易ゴーレムの弱点でもある。
(……仕方ないな)
最初に作ったゴーレムだが、このままでは出会うモンスター全てを相手にして素材を回収しなければならなくなる。
ドローは狼ゴーレムに待機命令を出して一人でスケルトンの包囲を抜けると、しっかりと安全を確認してから狼ゴーレムを破棄した。
(……崩れるのか)
狼ゴーレムを襲っていたスケルトンは止まり、狼ゴーレムは砂となっていなくなった。
試しに"どうぐ"に収納しても良かったが、これも一つの実験だ。
生成、命令、破棄と実際にやって一通り理解したドローは、隠蔽を維持したまま迷宮の外へ出た。
「おめでとうございます。今日から"一人前"ですね」
「どうも」
イケメンの受付なら誰でも良いドローは、適当に相槌を返す。
姿が全身鎧な上に声変わり前なので妙な視線は飛ばなかった。
(……しょぼい)
返却されたギルドカードは記載されている記号が増えただけで、他は変わりがない。
少しがっかりしながらドローはギルドカードをしまうふりをして"どうぐ"に入れると、受付から離れた。
ドローが冒険者ギルドで換金したスケルトン素材の額は、宿や食費に充てても一週間は持つほどになった。
通常、スケルトンはソロではなくパーティで討伐するモンスターだ。
消費するアイテムも無く、ソロで楽々と倒して素材を集めれば、今のドローのように小金持ちになれる。
(買い物は明日でいいか)
換金した資金を懐に入れるふりをして、ドローは"どうぐ"に入れた。これでスリを気にする必要は無くなる。
そして、使い終わった石の箱もまだ使えるので、比較的人通りが少ない時に"どうぐ"に入れておく事もドローは忘れない。
「なあ、あん……あれ? どこいった?」
受付付近でランクアップの話を聞いていた数人がドローに声を掛けようとするも、外に出た瞬間に"隠蔽:三"の効果が発揮して見失う。
そして、土魔法の武装以外の全身鎧化を解かないまま宿でチェックインをすると、ドローは部屋に入って、そこでようやく全身鎧化を解いた。
「……ふぅ」
いつもの流れ。鍵はストーンアーマーを解く前に掛けてある。
しかし、今日は違う。いつもと違ってスケルトン相手は資金が溜まったのだ。
ドローは最後に確認できなかった、ゴーレムの"どうぐ"収納に関して試してから風呂に入る事にした。
「クリエイト・ゴーレム」
今度のゴーレムもまた狼タイプだ。
この後は風呂に入って寝るだけなので、ドローの魔力の大半を注ぎ込んだその体躯は馬のように大きい。
大きければ、もしもの時は盾のように使えるし、移動用としても申し分ないからだ。
新しい狼ゴーレムは身体全体が体当たり攻撃用に刺々しいが、鞍を付ければ大人でも乗れる。
もっとも、ドローはストーンアーマーの魔法を使えば、鞍が無くても問題は無い。
カラーリングは銀に赤を足したような色合いで、金属としての光の反射を抑えられている。今は待機状態のお座りだ。
(レッドウル……いや、この名前はまずいか。それにまたレベルが上がったら作り直すし、その時に色や形も多少は変わるだろう。名前も適当にセキローでいいや)
そして今回の問題でもあり、部屋を圧迫するセキローをドローが"道具"に入れるべく触る。
(入るか……?)
こんなに大きいものがアイテムとして"どうぐ"に認識されるかどうか、ドローは不安でもあったのだ。
もっともな疑問であるが、セキローは拒絶される事なく"どうぐ"に入った。実験は成功である。
しばらく出したり引っ込めたりとタイムラグなどを確認したドローは、満足そうに風呂に行った。
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