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この教室には出入口がない。

作者: 水瓶座
掲載日:2026/05/06

教室にいる夢を見る。小学校でも中学校でも高校でもない。なぜかそう感じる。というより、そう感じる何かがあるのだと思う。そのひとつとしてその教室にいる間、黒板を見たことがない。さらに、教室の後ろは思いのほか広い。時刻は夕方寄りの昼下がり時くらいで、窓からは海と街が見え、風になびくカーテンがどこか懐かしさを感じさせる。教室の木の壁に映し出される、オレンジ色っぽい自然光。どこか落ち着いて安心するその色。窓から見える空の雲は、日常的でながらどこか壮大で、ずっと見てられるような魅力がある。


机と椅子が陳列されたそこは、誰が見ても教室だった。私は好きな席に座って外でも眺めたり、行儀は悪いけど教卓の上に座ったり、窓辺から思いっきり歌ったり、私一人しかいない教室は自由そのものだった。

誰もいない。誰か来る気配もない。でも孤独を感じない。「孤独」という言葉が思いつかないくらいその空間に夢中だった。天国は綺麗な空の風景とか綺麗なお城とかじゃなくて、こういう空間でもいいのかもしれない。いや、この空間がいい。1人でも孤独を感じないどころかそれにすら気づかない空間はそういくつもあるものじゃない。

そこは夢の中だからなのか、時間が進む気配はない。太陽が沈まないんだ。教室に映し出される窓枠の影が一切動かないからそう言える。

この教室には出入口がない。左右の壁に窓がついてる。

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