41
私は世界様。
神々を生み出し、世界を生み出す存在。
全ての種となる命が在る。
だからこそ淫魔の能力である活力を分け与える事が出来るし、他にも色々と出来る。
獣人の耳と尻尾があったりね。
抱くと相手の魔力が増えるのは私だからとしかいいようがないけれど、他の種族や神々が使える力が私にもある。
むしろ私が使えるから、みんなも使えるのだと言ってもいい。
「こんな感じ?」
「飲み込めないが、理解はできたよ」
「ありがとう」
そしてあの世界には一冊の本を置いておいた。
浄化する者が現れる本を。
内容は適当に書いた。いつか誰かが実行してくれる時を待てばいいかー。なんて気楽な考えをしながら、眠っていたんだ。
言葉の通り、眠っていた。200年間。
「浄化の早さが異常な事も知ってる?」
「留まるだけで浄化される」という解釈は間違っていない。けれど、「抱かれると浄化される」という解釈もまた違いないのだ。
レンが私を抱いてくれるから、周囲は今まで以上に早く浄化される。
「うん、私を抱くと浄化する速度が早まる」
「なるほど…それで…」
「ちがああああう!レンとはいつだって繋がってたいの!浄化はおまけ!」
「………くすくす、私もだよ」
「んんんんんー!私の伴侶様がかっこいいよー!!!」
「それ以上は」
「嫌!こっちに来たら好きにしていいって言ったもん!だからいっぱい言うの!我慢も限界だよ!」
「我慢……わか、分かった」
「やたー!」
「くすくす、お喋りな妻を見れるのは嬉しいよ。どうして話さなかったんだ?」
「寝起きだったのもあるけどー、なにを話していいのか考えてると、どうしてもテンポが遅れちゃうの」
「ああ…クーパーは何故?」
「知ってるかって?いつかのご褒美にねー、友達を紹介、あ!ビシャカいるでしょ?あの子とー、もう1人、紹介したのー。ちなみにクーパーは国一番の魔法の使い手だよー」
「そうだったのか…」
「別に自己紹介した訳じゃないけどねー?多分、2人から大体は聞いてるんじゃない?」
膝に乗ってちゅーちゅーしながら説明してるけど、怒られない!
それに受け入れてもくれた。
私という存在を。
人間には難しい私の“常識”をきちんと理解しようと話を聞いてくれている。
「今度デートしよ?」
「今では駄目なのか?」
「この世界じゃなくて、他の人間世界だよ。レンには知って欲しいの」
「他の世界………想像できないな」
「しなくていいの!行って感じるの!」
「くすくすっ、これからはそのように話してくれる?とても可愛らしくてもっと聞きたくなる」
「ふわあぁぁっっ…!伴侶様がかっこいいよー!」
「くすくす」
「ご飯食べよー!」
「ああ……クーパーはいいのか?」
「神々が構ってくれてるから大丈夫」
「………ヒナノ」
「うん?」
勇気を出しているようなキリリとしたお顔で私を見つめてる。
「良ければ戻ろう」
「どこに?」
「神様方に挨拶を」
「それを言うなら私の子達に挨拶を…かな?」
「………ふっ、その通りだな」
私を知ろうとしてくれているのが分かる。
努力家で、相手を知り、同じ景色を見てみたいという優しい心根はこんなところでも発揮するんだ。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
宴会場に戻ると、座る場所に立ってみんなを目に映そうとしているのは愛らしい伴侶様。
「突然現れてしまい申し訳ございませんでした。私はヒナノの伴侶であり、人でもあるのです。あなた様方がどうっ、うあっ!」
決意表明?の中、レンに抱きついてるのは女神たち。楽しそうにぎゅぅぎゅぅと抱きしめながらも、しっかりと、体のサイズを測っていくのを見て、そのうちレン宛てに何かが送られてきそうだなぁと思った。
「ヒ、ヒナノっ!」
「うん?」
「な、なにをされてっ、」
「サイズが気になるんだってー」
「サイズ?うあっ!ちょっ!そこまで調べなくても!」
「「「「必要ですわ〜、お父様ぁ」」」」
「そ、そうなのですか?うわっ!」
くるくる体を回されて、楽しむ女神たちのおもちゃになりそうだ。
「そこまで」
「「「「はあい…」」」」
不服そうな顔されてもね…レンはもういっぱいいっぱいな顔してますから。休ませたいんですよ。
「レン、ここ」
「あ、ああ、助かったよ」
私の横に座るとほっと息を吐き出した。
「あーん」
「…………あ、あー」
「んふふー!」
「っっ」
そうだ、クーパー呼び戻そう。
「うわあっ!」
どうやら神と遊んで?遊ばれていたらしい。
森の中を浮いて駆けていたのか、髪の毛にはたくさんの葉がついている。
「ふふっ、痛い目には遭わなかった?」
「な、なんとか、というところでしょうか…」
うん、デンジャラスだよね。人間にとっては。力加減が出来る子も少ないし。
2人に目配せすると、未だ恐れ多いという感情はあるんだろうけど、そんな手先で食事を取り、お酒を選んでいく。
その間、肘立てに肘をついていつものように酒をチミチミと飲んでいた。
「我が兄弟よ!おいかけっこは飽きたか!なら飲み比べだな!」
「は、はい!」
きちんと理解してくれたのか、クーパーを兄弟と呼ぶ彼に安心した。
仲良くなってくれたらいいな。
「お父様ぁ」
「は、はい」
「お父様は決まった時間に起きて、どこかへ行って、また決まった時間に眠る人生を送っているのですかぁ?」
「異なる場合もありますが…そうですね。そのような生活を」
「ほらぁ!だから言ったじゃない!人間を制するものは時間だと!」
「まぁぁぁっ…!けれど異なる場合もあるとお父様はおっしゃっておりましたわ!それならば時間が制するだけではないのでは!?」
「な、な、な、な、っっ〜〜」
「「お父様ぁ!!!」」
「その答えは二人の中で決めなさい。レンを煩わせないで」
「「はあい…ごめんなさい、お父様…お母様…」」
「よ、よろしいのですよ。人間は時間以外にも縛られている事もありますから、時間だけに従い生きている訳でもないのですよ」
「「まぁっ…!お父様はとても素晴らしい先生だわぁ!」」
女神二人の「人間の不思議」はまだまだ続きそうだったから、一番離れた席に座らせておいた。
「構わなくていいんだよ」
「あまりよろしくない事なのですか?」
「ん?なにが?」
「私が神様方とお話する事が、です」
「んーん、でもあの子たち、次から次へと疑問を持ってくるから永遠に続きそうだよ?それでもいいなら戻すけど」
「………話す時間を確保しておきます」
どうやら次も話し合い、というよりは、お勉強会が開かれるらしい。
無理はしないで。と言いたいけれど、この世界の事や私に対するあれこれは無理してでも納得しなくちゃならない事柄ばかりなのだろう。
「ヒナノ?」
「ん?」
その声が気になって顔を上げると、困惑?ちょっと困ったような顔をしながら私を見下ろしてる。
「つまらないですか?」
どうやら私の態度に気になる事があるらしい。
「つまらなくないよ。つまらないのかな?」
「………」
起きて、ここに来て、なんとなしにみんなを眺めながらお酒を煽る毎日の再現をしているというような私の姿形は「つまらなく」見えるらしい。
「おいで」
「!」
ガバッと膝の上に乗ると頭を撫でてくれるから、その心地良さに思わず目を瞑ってしまう。
「同じ毎日は飽きる事もあるかもしれない」
どうやら「飽きている」らしい。私が。
「けれど…新しい事だってたくさんあるんだよ」
そんな私に教えてくれる。
目の前に広がる光景がなにも変わらない日常ではないという事を。
「目に映せば感じ取れるはず」
ボヤけたような視界で眺めていた私に、きちんと目を開けなさいと言うように叱ってくれた。
「うん………ありがとう」
「また一緒に来ましょう、何度でも」
「うん」
その日から度々、天界や別世界に行き、様々な常識を学んだレンはあまり美醜には拘らなくなった。
「最近、怖がられているような気がする」
「魔力が漏れてる」
「魔力……?」
「魔力が増えて、その分漏れてるの、圧?って言えばいいのかな?そういうのを感じ取っちゃうんだよ。人間は」
「そういう……」
「寂しい?」
「………いや、便利でいいと思った」
「んきゃー!伴侶様がまたかっこよくなったー!」
「くすくす、私の伴侶も充分かっこいいよ」
「ふあ…!大好き!」
「ちゅ、私も好きだよ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
よければブックマーク・評価・いいねなどしていただけるととても嬉しく思います。




