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聞こえてますか!?聖主様!(格好良すぎて聖主以外目に入りません)  作者: ユミグ


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4【ランドン・ウォーカー】


昔から()()があったという。


いつからかあった書物に書かれているような出来事があったとも聞いた事がない。

前例や、歴史もない。それは淀みを浄化出来る者を召喚出来る。という内容だった。


淀み。


それは私達にとって当たり前であり、先祖もまた当たり前な世界…いや、国だ。


昔から我が国に蔓延っている淀みは、草木を枯らし、水を枯らし、時には魔力まで吸い取ってしまうのが淀み。


歴史を見るとそれは我が国だけが蝕まれていくモノだ。


領地を広げたとしても、領地を奪われたとしても、淀みが広まっているのはこの国だけ。

奪われた領地は徐々に浄化されていったと記載されている歴史書にはこうも書かれている。


“精霊が見捨てた国”


精霊を見た事などない。近隣国が隠している可能性もあるが、精霊という存在自体がまやかしで、幻だと私は思っている。


魔物を討伐し尽くせば、その土地から淀みはなくなる。その事実は歴史にも、近隣国からの情報でも得ているので正しい。


だが、何百年と歴史があるこの国では魔物を討伐する余力がない時代や、魔物を討伐せねばならぬ。という今では常識となっている情報を知らず放置していた期間などがあまりにも………


多すぎた。


住めるような場所でなくなっていく我が国の突破口はない。


浄化をするという聖女の存在以外に残されていなかった。


他世界から訪れる聖女は、神様から啓示を受け、使命のように浄化をすると書かれている。


だが…あまりにも不可解だ。


聖女など聞いた事もなければ、浄化が出来る者など先人達も知り得ない。


()()は昔からあった。


最早夢物語を描いた人間の絵空事だと思うからこそ、誰も召喚などしなかったのだが…


私には…国には…淀みきった私達の住まう場所を澄んだ景色に変えてくれる者はもうこれしないのだと。


今代の王である私は決断した。


実行に移すと会議で出した案に臣下らは…


“また常識を変えようとしているのか、()()と産まれた腹が同じでは心まで愚かになるのか”


そんな視線ばかりで腹立たしかったが、反対する声は少ない。


魔法陣は複雑だが、描いて魔力を乗せてしまえば簡単に出来る召喚内容はきっと……


“おままごとをしている王”として見られているのだろうよ。


全ての視線も、馬鹿にするような態度も無視し、聖女も()()と同じ思考なら立ち会う者達も厳選しなければならないと、口惜しいが集め、整えた場で召喚の儀を行った。


おとぎ話のような、子供なら信じるだろう聖女召喚は………


成功した。


聖女が召喚されたのだ。


召喚陣の上に現れた少女は眠っている。


その姿は…


私でも美しいと、私のように美しさなどいらぬと吐き捨ててしまうような人間でも…


抗えぬような、心惹かれる美しさを持つ少女だった。


召喚の儀に立ち会った者は皆見惚れた、私も見惚れ立ちすくんでしまう程に…


そう、見惚れたのだ。


小さくか弱さを感じる四肢、溢れるほど陣に広がる黒髪の艶やかさ、黒のワンピースは寒くないのかと心配になる薄さと、曝け出されている足。


目に焼き付けてしまいたいという欲を優先している私達に構わず、目を覚ました聖女は、ゆっくりと起き上がり周りをキョロキョロと見渡す瞳は…くりくりとしたタレ目に小さな鼻と、赤い唇は透き通った白い肌を引き立たせているようだ。


誰もが憧れ羨望し、崇めてしまうような美しさ。


美醜など関係ない。


必要なのは本人の能力のみだと普段から言い、美醜について口煩く言ってくる者を黙らせていた私でさえ、彼女を目にしたあと…そんな事が言えるのか?見惚れ、未だ声をかける事も出来ない私に言える権利があるのだろうか。


そこにいる。


存在している。


それだけで充分なのではと錯覚してしまう。

いや、錯覚ではなく事実だ。

現にここに居る誰も彼もが動けず、彼女の全てを余すことなく焼き付けようと必死になっている。


私もその1人だ。


見惚れていると聖女が足先を見るように視線を落とした先にあるのは、寒々しさを感じるほどの白い足。


駄目だと、彼女に寒さは似合わない。


そう思ったのは私だけではないだろう。咄嗟に動こうとする者の気配を感じて、私はやっと声をかける事が出来た。







聖女は裸足に小さな体だった為、騎士の1人が抱き上げ移動させたが…

今にも倒れてしまいそうな程顔を真っ赤にし、懸命に、その者の人生で最たる出来事に間違いないだろうその行動に、よく失神しないなと感心した。


名前を覚えておこう。


そして、あとで褒美をやらなければならないな。


応接間のソファに座らせると、埋もれてしまうのではないかと思うほどに小さく儚げだ。

私もよく言われる台詞に、初めて理解する事が出来た。


小さく魅せる事こそが重要である我が国の風習のように出来上がっている家具たちは、全て正しかったのだと思ってしまう。


風習も人の心も変えようと努力していたが…彼女にはこれこそが必要であると、魅せられてしまった。


菓子を口に運ぶ所作や、果実水を飲む綺麗な仕草にまた見惚れながらも、浄化を願う言葉を吐く私の顔は見れたものではなかっただろうな。


ゆっくりと紡がれる言葉数は多くなかった。


不思議な音だと感じる。


美しい者特有の傲慢さや侮蔑などは見られない、鈴の音のように可憐な声音だが、しっかりと芯が通っていて、王者とも思えるような声で聖女は己の意思を伝えていく。


彼女が美しいからそう感じ取れてしまうのかと一瞬思案したが…そうではない。


彼女の強さと美しさが内面からも溢れているのだ。


瞳もそうだ。


なにも映していないような透き通った、浮世離れしている瞳に感じられるのに、慈愛に満ち溢れ真っ直ぐに見られているような…


そんな不思議な感覚が付き纏っていた。


黒髪も、黒の瞳も、黒のワンピースも、何故だか暗く見えない。黒というのは何色にも染まらない色だというのに…


まるで全ての色を受け入れているのような、色彩豊かな黒。


「………待って」


どんな命令よりも心にストンと落ちてくるような声。


「………現在も淀みが広まっている」


浄化する者というのはそんな事まで分かるのか?それとも神様に言われて知っているのか?


「そんな中で私の護衛に人員を割くのは正しいと思えない」


護衛…そうだな。


城に居る者達でも足りない。


いっその事、私の護衛もつけてしまうか?


「今すぐに淀みをなくすことは出来ない」

「浄化の方法があるのか?」


出会ったばかりで知った気になどならないが、聖女と私達では歩みが違う気がしてしまう。


返答は遅いが重要な事を口に出しているとも分かる、そして口を開くまでの時間も楽しませてくれる美しさは…


だ、駄目だ!


美しさにばかり囚われているなど…!


「お前達の助けが必要」

「もちろんだ、浄化に求める事はなんだ?」 

「………側仕えも必要に感じない」


なにを言っているんだ?

どう見ても必要だ。


「聖女には不必要に見えても必ず必要な時がくる…いや、今も必要だろう。」


すぐに手配をしなければならないな。

念の為、全ての準備はしていたが見直しだ。


「………せめて1人ずつ」

「護衛も?」


コクン…と頷く聖女に肉体の強さを感じない。


「「…」」


無理だな。


聖女は浄化をする事に拒絶を示さない、だからこそだろう。


「「…」」


浄化を最優先に考えてくれているのだ。


「「…」」


身の回りや、守りなどは必要ない。と、言ってはくれているが、それでは聖女が危うい。


「「…」」


浄化に対し、真摯に向き合ってくれているのは喜ばしい事だが、聖女自身の安全までは考えて…いや、考えているかもしれないが浄化だけを思い、そして我が国を救おうと必死なのかもしれないな。


「……2人まで」

「聖女だというだけで、価値がある。こんなにも可憐で美しい女性を守らないというのは出来かねる」

「…」


美しさで苦労する事もあるだろうに…


しかし…聖女の我が国を思う心も無下にしてはならないな。


「だが、聖女にも訳があるのだろう。人数についてはなるべく少なくしよう」

「…」

「んんっ、だが側仕えは必要だ。何をするにも分からないことや、足らないことがあるだろう」


頑なな意志が見つめられている視線から感じるが、無理だぞ?何故分からないのだ?


「………教えてくれれば出来る」


聖女は己の体の小ささが分かっていないのか?小さいと言われる私でさえ聖女よりは大きいぞ?女性でも私より5センチほど高いのが標準だ。どうするか…今から聖女の為に家具を作らせても時間がかかる…いや、小さくして見えなくしたらどこに居るのか分からなくなるのではないか?


それだと尚の事危険だ。


「せめて3人だ」

「…」


最低限の人数にしても駄目なのか!?


「これ以上は危険すぎる!」

「?」


ああっ…!そのキョトンとした顔、傾げた際にさらさらと落ちていく髪…


危険だ。


危ないぞ。

これはなにをさせても危ない。

きっと元居た世界でも周りがバレないようにそっと支えてあげていたのだろう。

そうだ、こんなに意志の強い彼女はなんでも出来ると可愛らしく言う言葉に強く出る事も出来なかったのだ。

それならば私もその者達に倣い、影で支えるべき…!


ああ…守られ、愛されて育った安全な場所から奪ってしまった…!


せめて…せめて…


私に出来ることはなんだっ…!? 


「はっ…!」

「?」


父親のように思ってもらえばいいのか。いや、父親になればいい。

私の娘となれば少しは危険から遠ざけられる事もあるだろう。


いやしかし…私の心が穏やかではなくなる…


こんな娘が居たら夜も眠れないのでないか…?


心配だ。

いやいや、もう既に心配なのだ…!


いっその事王宮に…


「分かった」

「ああっ…!そうか、分かってくれたか!感謝する」


それならばまずは、通達…いや、ベンジーに娘が出来たと報告せねばならん!


「また、そんなっ!」

「?」


何故むやみやたらと誘惑していくのだこの娘は…!くりくりとした目で首を横に倒すな!


我が子が可愛すぎる…危険だ…危険が付きまとうぞ…このようにか弱いのでは…


ああ…!まだ素足のままだ!


きっと寒いだろうに我慢を…!


なんて出来た我が子なのだ!


話を終わらせ服と靴、その他必要な物を揃えなくてはならない!


「召喚の成功を伝え、その後に話し合いがある。その時、淀みについて聞こう」

「コクッ」

「数日はゆっくりしてくれ、神殿内も見て回ると良い」

「コクッ」

「それと………いや、今度にしよう」


娘になるなど早すぎるかもしれない…離れてしまった両親を悲しむ心も大切にしてあげなければ…!


「その菓子が気に入ったのなら部屋に届けさせよう」

「………ありがとう」


笑っただと…?


控えめだが確かに笑った…


ここに居ては危険だ!すぐに!すぐに隔離させなければならない!


「う、うむ…無事に送り届けろ」


連れて来た者とは別の者が抱えるのか。

それもそうだろう、1度だけでも倒れてしまうかと思える程、未だ赤い顔をしていては聖女が危険だ。


傷1つつけないようにしなければ…


ああ、やらなければならない事が増えたな。と聖女が居なくなった室内で誰も彼もが、ほっ…と息を吐いた。



「美しすぎだろうあれは………」

「「「「同感です………」」」」


まずは…いや!ベンジーに話をしなくては…!


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