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「晴れてるね」
「いえ、雷ですね」
「天気がいいね」
「いえ、どんよりしておりますね」
今日は天気も良ければ髪の纏まりもいい!
やっとだ…!やっとレンと伴侶になれる!
今日!この日!
晴れやかな天気の日に…!
「雷ですね」
なんて特別な日なんでしょうか!
レンと出会ってから…
「召喚されて何日?」
「439日です」
経ちました!
長かった…!長かったよ!
レンと出会ってから438日!が経った今日!
私達は伴侶になります!
籠もり期間はないけれど、明日も朝から仕事だと言っていたけれど、朝から夜まで顔見せやら城下町を歩いたり夜会やらで物凄く長ったらしい仕事があるけれど…
それでも…!
もう我慢しなくていい!
悶々としながら作り上げていった夜着たちをやっとレンに見せられる日々が訪れる…!
「お綺麗ですよ」
クーパーに整えられているドレスはレンの意見しか詰まっていないドレス。
首から足先、指先まで見せる事のないドレスは黒一色。銀色の刺繍でメリハリのあるドレスにはなっているけれど、所々にある宝石の数はちょっとあくしゅ………
げほんげほんっ…!
レンの髪型まで指定したからクーパーにこの後整えに行ってもらう。
襟足まである銀の髪は片側だけ撫でつけるけど少しだけ垂らして、密かに眉毛も整えておいたから三白眼にも見えるオレンジの瞳が映えるようになっているのだ!
正装に流行りを取り入れるのはやめた。
だって変なんだもん。
軍服とチャイナの服が混じり合っている服装にしてみました!
斜めに止めるボタンに、上着は肩からかけるだけの………
きゃぁぁぁぁぁ!!!
想像しただけで…!
「きゃっ!」
雷が鳴ったらしく側仕えの子が可愛い声を上げた。
「失礼致します」
「私も」
「無理ですね」
「…」
クーパーに着いて行けばレンにも会えるのに…
支度が終わった私はもう何処にだって行けるのに…!
もう伴侶ならベッドに行ってもいいはずなのに…!
我慢出来ない!溢れ出るこの想い!
「きゃぁっ!」
男の子の悲鳴というのもいいですね。
あれ?そういえば私っていつから我慢が出来なくなってたんだろう?
我慢出来てた、うん。我慢してきたのにどうしてこんなにレンの事になると我慢出来ないんだろう…もう少し落ち着いても…
そういえば私のなにが好きなのか聞いた事なかった…
分かった!老後まで忙しいだろうレンと会えない時間があるのが嫌なのか!
抱っこされてなくてもいいから顔を見ておきたい…
我慢…我慢…我慢…我慢…
「聖女様、お時間になりました」
伴侶なんです私達が宣言する場所には貴族と近隣国の使者達が居る。
歩きながら思ったんだけど、レンの友達っていないのかな?
ベンジャミンとは仲良さそうだけど…
「なんてお美しい………」
聞こえてきた声にそうだと思い出した。
この国美醜がおかしいんだ、普通は子ども扱いされるのがほとんど、この間見せた映像に映ってた人達にも散々子ども扱いされてたよね。確か。
よう坊主!と話しかけられるのが殆どであってこんな風に一歩引いたように見られる事なんてまずない。
かっこいいレンは肩身が狭い国だろう。そういう意味でも友達作りは難しかったんだろうなぁ…
「レンは?」
「中に…」
一緒に入るんじゃないの?扉の前の護衛はなんだか気まずそうな雰囲気を醸し出しながらそんな事を言うから気になって魔法で扉を開けた。
「レン」
「っっ………お、お綺麗です…とても…」
「レンはかっこいい」
想像以上のカッコ良さです!
というか私達が一緒に歩くはずの真ん中でなにしてるの?
「や、やはりおか…ぐあぁぁぁっ!?」
クーパーが捕らえたみたい。
嫌だな?こんないい日に変な言葉聞きたくないな?
「レン平気?」
「大丈夫ですよ」
「レン大好き」
「はい……行きましょう」
「うん」
どうやら騒がしかったみたいで、レンが宥めてた?のかな?
伴侶になるよー!と言う場所に着いた私は跪いてレンの手を取る。
「出会った瞬間から運命だと分かった」
「っっ」
「運命だから知りたくなった、顔も体格も私の好みだったから恋をした」
「ヒ、ヒナノ…!」
「性格を知って努力を知り、全ての者に砕く心があるのを知り愛した」
「っっ」
「出来れば私だけを見て欲しいけれど、国を愛する心も好きだから我慢する」
「ヒナノ……」
「私が伴侶として愛しているのはレドモンド・ウォーカーただ1人だ」
「っっ〜!」
私が掴んでいたはずの手をあっさりと翻し、私の手を取り引っ張り上げたレンに強く抱き締められた。
「あなたを愛しています、全てを掬い上げて大切に包まれるような愛を感じてしまえば手放す事など出来ない…全てを知り得た訳ではないのは分かっている。けれど、知り得る全てのあなたが好きだ!私だけにワガママを言うところも、私が触れると…こうして笑顔になってくれるところが…愛おしい」
私の頬を撫でて幸せそうに吐き出す言葉は私を幸せにしてくれる。
「知り得ないあなたも愛したい」
そう言って何故か離れようとするから、浮いてレンの頬を両手で触れてキスをした。
「ちゅ」
「っっ〜、こ、このような場所ではいけません!」
「…」
どうやら伴侶になっても駄目らしい…
「伴侶なのに?」
「ま、まだです」
「伴侶になったらいいの?」
「いけません」
「…」
忙しいレンとちゅーするのは至難の業な気がしてきた…
「んん!まだ始まっていないぞ」
それなら王が早く進めてよ。テキパキと!早く!夜にならないと2人きりになれないんだよ!?
「失礼致しました…」
レンは謝らなくていいんだよ?私がしたかっただけだからね?ちゅーがしたかったの!なんなら今もしたい!
ガシャァァァァァァン!!!
雷が煩いらしくレンまでも驚きながらの婚姻式だった。
雷は煩いけど参列者達の目は煩くなくていい。
「レン大好き」
「今は陛下がお話しておりますから黙っていましょうね」
「はい!」
婚姻式が終われば城下町へと赴くんだけど、天候が悪いからと延期になった。
それってつまり早く終われるって事!?なんて思ってる私に気付いている癖に王はせっかく出来た時間だと色々な所へと私達を送り、喋らされた。
「怖くないですか?」
「怖い事があったの?」
「いえ、雷です」
ああ…それか。
ちょうど周りに人が居なくなった夜会の場でそんな事を言われたから答えを出す。
「あれ私の」
「………はい?」
「我慢してるけど我慢出来なくて雷出ちゃってる」
「………」
今日はいい天気だ。
私の出す雷がなければ星もキラキラ瞬いている。
「………我慢というのは?」
「伴侶になったのに2人きりになれない」
「………」
「凄く我慢してる。438日も我慢してる」
「………」
「我慢してる」
「………偉いですね」
「うん」
ちなみに着替えは済んでる。
どうしてか婚姻式だけの衣装だったらしく、着替えたドレスはさっきよりは目が痛くない。
着替えると聞いていたから、もちろん今レンが着ている服も手作りだ。
「オレンジの瞳が映えるような髪色に焼けた肌が少しだけ覗く胸元の衣装はとっても似合ってる」
「あ、ありがとうございます」
レンが身に纏う全てを手作りした物にしたい。
「お邪魔でしたかな?」
ラッセル・スタンリー前辺境伯が私達の元へと挨拶しにきた。
「そのような事はございませんよ」
「おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」
“ありがとうございます”と返答する度に思う事がある。
本当におめでたいと思っているのなら2人きりにするのが…
ガシャァァァァァァン!!!
いいと思いますが、どう思います?
「………ヒナノ」
「うん」
「今日は凄いですなぁ…まるで神様が歓迎しているみたいですね」
「そうなら嬉しいです」
歓迎というより困ってるというか、さっきから雷で遊ぶ…
「解決ですかな?」
「していない」
「そうでしょうねぇ…」
「お前達には関係のない事だ」
「割り切れたらいいんですが…」
無理なんだろうな、精霊にした仕打ちを語り継がれ“お前達の罪だ”と言われ続けるのはツライだろう。
「それなら私が許す」
「………ありがとうございます」
あとは嘆きを過去にしてくれたらいい。
「珍しいですね、このような場で何度もお会い出来るのは」
「老いぼれでも目新しい事があれば気になるものです」
そうだ、夜着を着るのは…
いやいや、パパッと整えたら20分くらいで…
20分も離れるの?
「しかし本当に凄い雷だ」
「………そうですね」
でも髪型を整えて…まさか今日も別々のお風呂なの!?え?伴侶になったんだから違うよね?というより洗浄魔法かけるから入らなくてもいいよね?
「私はこれくらいで」
「わざわざありがとうございました」
「精霊様を見れるかと…少し期待も込めた参列でしたよ」
それならさっきから煩く周りを飛んでるからせっかくだと思い瓶に詰めた。
「はっ………」
周りからは見えないようにしているから大丈夫。
「申し訳ございま…」
「勘違いするなガキ」
「ヒナノ?」
謝ろうとしているから思わず止めた。どうしてこうもこの国の人間は極端なんだ。
心優しすぎる人間と、無能な人間が多い。
「この子はなにもされていない、されたのは他の子だ。精霊を一緒に見るな。お前達はこの子に謝罪する必要などない」
「………本当に…ありがとうございます」
スタスタと去っていく背よりも瓶詰めにされて怒ってる煩い精霊の方が耳障りで気になる。
ひょい…と出せばレンの周りをぐるぐる回っては…
『ヒナノばかー!』
煩く喋ってる。
「ありがとうございます」
「なにが?」
「私の心も軽くなりました」
「レンの憂いを全て教えて、レンには幸福だけが似合う」
「っっ〜」
他になにかあるかな?
*********************************
「お体を磨き上げます」
その言葉にサァァァ……と血の気が引いた。
「ヒナノ!?」
ついに我慢が出来なくなったのか、体中から雷を放つようになった私はレンに抱っこされてる腕の中で泣いた。
「ヒナノ!」
「ま、まだ、まだっ、我慢なのっ…!?も、もう、部屋に戻ったら、2人きり、にっ、な、なれるって…!ひっく!」
「わ、分かりましたから…!泣かないで……あとは私がやるから下がっていい」
「………失礼致しました」
ぐずぐず泣いてる私をあやしながら寝室へと移動するレンにやっと…2人きりなんだと思ったら落ち着いた。
クーパーの言葉に動揺した私は、あとどれくらい我慢しなきゃならないのかと絶望した。
こんな事で絶望するなんて…と思われるかもしれないけど、もうずっと待ってたの。
レンと2人きりで過ごせる時間が欲しかった。
2人きりじゃなくてもいいから、レンを見ていない瞬間がないくらい傍に居たいの。
「ヒナノ…泣かないで、もう2人きりだ」
「ぐすっ!襲っていい?」
「はい、私も襲いたかったです」
「?」
その言葉は疑問しか浮かばないな?それならどうして駄目だったの?一緒に寝てたのに?
「くすくす、色々と守りたい事もあるんです」
「貞操?」
「ふはっ!違いますよ、順序です」
常識か。
「でも歴史見ると婚姻式前に子ども出来てる人もいた」
「………忘れましょうか」
「うん」
そういえば夜着に着替える時間が必要だった…
うーん…
「一緒に浸かりますか?」
「うん、明日」
「え?うわっ!」
とりあえず明日にしよう!全部!と思いながらガバッと毛布を被った私はレンの手を引っ張ってベッドの中に引きずり込んだ。
「な、な、な、」
パパッと2人の正装も魔法で取り払ってレンに覆い被さるように、毛布と一緒に寝転ぶ満足げな私と、裸に気付いたレンは動揺している。
ちゃんと洗浄魔法もかけたし、色んな匂いも混ざってたからなくした。
「レン大好き」
「っっ〜、わ、私も好きだ…」
ちゅっ…とキスすると目をぎゅぅっと瞑るレンは………
今までと全然違うよ!?興奮具合も緊張の仕方も!なんで!?可愛い!どうして!?可愛い!
「ちゅっ…レン可愛い」
「か、可愛いのはあなたの方だ」
ううん、レンの方が可愛い。
何度も何度もちゅっ、ちゅ、ってしてると私の髪が解かれて落ちているのが気になるのか確かめるように触れてくる。
「ちゅっ、今度洗浄魔法教える」
「そういう…んっ!」
レンにたくさんちゅーして、おでこもなでなでして、髪の毛に指を通して、頬を撫でて、鼻にもちゅーする。
「はっ…ヒナノ!」
「うお?」
レンの上に乗っかってた私を抱き締めてから優しくベッドに落とされた。
「好きです」
「好き」
「私も早く伴侶になりたかった」
「うん」
「毎日飢えていくような感覚が…」
「私も」
「繋がりたいと…」
「ずっとでもいいよ?」
「くすくす……私もそう思ってしまうだろうな」
「私はずっと、んっ!」
レンからキスされた。
何度も、何度も。
角度を変えて。
閉じていた瞳は開いていて、私の事を見てくれている。
興奮した目で。
早く繋がりたいというように、両手で恋人繋ぎをして…
何度もキスしてくれる。
クーパーが起こしに来るまで、ずっとキスをして繋がっていた。
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「世界様」
「ぅ゙っ」
「感情は抑えて欲しいとお願いしたはずですが?」
「ごめんなさい!」
「雷は困ります」
「ぅ゙っ………ごめんなさい」
「ですが………まさか運命様がいらっしゃるとは思わなかったですから仕方はないですね……」
「!!ほんと!?ありがとう!!精霊たちが戻るまではまたちゃんと抑えておくからっ!」
「はい…とはいえお願いしているのはこちらですので…」
「でも私もこんなにすぐ感情爆発させちゃうとは思わなかったから………」
「精霊がウォーカー国を見限って数千年であの国の人間が弱り、あの程度も討伐できない事になるとは思わなかった私も見誤りましたから…人間を強化して人間だけでなるべく解決させて欲しいと無茶なお願いをしているのは私ですから」
「んふふ、嬉しいよ?世界を大切に愛してくれてるんだもん。神々の中では稀有な存在だ。私も喜んで協力しますよ、人間大好きだし」
「人間との関わり合いが苦手なので助かります」
「ふふ、あ!レンが起こしてくれてる!もう戻っていい?」
「もちろんです。改めて………私にくださった世界を少しでもどうか…長く生き続ける為に聖女様と呼ばれながら力をお貸し下さい”世界様”」
「もちろん!」




