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私は許していない。
けれどそれは国を許していないのでなく、精霊を利用したあの男だけを許していないんだ。
たまたま国王だったあの男の罪を誰が償うとかそういう事じゃない、そんな事は意味を成さない。というのが私の持論だ。
真実を話した時、それぞれが何を思ったかは知らないけれど辺境伯にだけは声をかけた。
「辺境伯、お前達のお陰でレンが生まれる事が出来た。ありがとう」
「…」
「もういい、あとは長く生きる者達が請け負う」
「………ああっ…!」
代々、隣国や責め立てる精霊達に苦しまれてきたんだろう。だけど、それでも自国を守ろうと必死になった事もあったんだ、それを理解されないのはツラく侘しい人生だったんだろうとは思う。
あとは時間が解決する。
精霊達も、神々も、時間を経て結論を出すんだから。
ちなみにその後は、というかそれが本番だったからバタバタしてた。
遅れながらも近隣国への顔合わせをして、その後レンは…
王と話があるみたいで寝室に戻って来なかった…
なんでだよ!
不貞腐れながら朝の支度をしに来たクーパーからは驚いた顔をされた。
そうだよ!寝てないよ!
だって!だって!レンが居ないと寝れないじゃん!いつ戻ってくるのかなぁ?って楽しみに待ってたのに…!
結局レンと顔を合わせたのは次の日の夜…
「レンについてるのは水の精霊」
「………そうですよね」
なんであの時隠したのか。という疑問を解決させておこうかな?と思った私は開口一番そう伝えたのがまたまた失敗だった…
どんよりと落ち込んじゃったレンをどうしようかとあたふたして、何を声かけたらいいのかも分からなくて…
だってレン悪くないじゃん!
水の精霊を騙したのはあの男なだけだ!
とは、あれだけ啖呵を切った私が言う事でもなくて…
どうしようどうしようとオロオロしてたら…
「ツガイなのですか?」
「うん」
「え!?本当に?」
「言い方違う」
「ヒナノの国ではなんと言うのですか?」
「運命」
魂の伴侶とも言う。
そんな事実はないんだけど、元々持っている魂が半分でその欠けた魂を持っているのが運命だと言われている世界もあった。
魂が欠けている…なんて事はないけれど、無条件に惹かれてしまう相手が…
「運命………私とヒナノが………」
「うん」
「話し方が変わるのは何故です?」
「癖」
癖付いてしまった事もたくさんある。
最近は眠ってばっかりだったから口に出すまでに時間がかかるのと、何を話し何を伝えないかを選別しているから遅れる。
「元の世界に戻れるのですか?」
「うん、帰るならレンも一緒」
「はい」
ハニカミながら言う“はい”もレンの好きなところの1つ。
「………帰りたいですか?」
「ううん」
「未練はないですか?」
「うん、来たければ案内する」
「案内………」
案内ついでに寝室で籠もっていませんか?最近我慢がきかなくてついついパジャマを脱がせちゃうんだ。
「知りたい…ヒナノの事が」
「うん、なんでも聞いて」
「秘密と言われた事は秘密のまま?」
「レンに秘密じゃない」
「くすくす、楽しみが増えた」
私も3日後が楽しみです!伴侶になれるんですよ!ついに…!ついに…!
長い我慢が終わる!
「嘘………」
「どうされました?」
「常識読んだ…」
「?はい」
「籠もり期間なんてどこにも書いてなかった!」
「こもり?なんですか?」
「伴侶になったばかりの頃は何年か籠もるの!籠もらないの!?」
「そっ!?そ、そのような事はあまり…数日休みを取る事はありますが…」
籠もらないの!?やっと我慢が終わるのに!?朝になったら仕事に行くの!?私も訓練するの!?
嫌だ!
「あの、あの、そんなに悲しまれないで下さい…」
拉致?
こうなればレンを拉致するしかない!?
「夜だけが多いですが、旅行もありますから」
朝になったら仕事する………
なんて酷い国なんだ!?
優しくない!優しくないよ!
「ヒ、ヒナノ…」
仕事辞める?そうする?そうして欲しい!
でもレンは楽しく働いてて…それを奪うのは…
でもでも…私だって籠もり期間奪われたような気分だよ…
「老後があります」
それっていつ!?
どれほどの我慢を強いているの!?
この私に!?我慢が出来ないこの私に強いているのかな!?
「そ、それと、休みもありますから」
休み?
「この間レン休みだった」
「ぅ゙」
「仕事出来たって言ってた」
「そ、そうでしたね」
仕事の休みなんか信用ならん!レンが信用出来ないんじゃない!仕事させる奴らが信用出来ない!
「ね、寝ましょう」
「ちゅー」
「くすくす」
私を抱き寄せる手は慣れている。何度もキスをするのも慣れてくれた。
だがしかし!
決してそれ以上の行為に及ばないのが…!
「おやすみなさい」
「………おやすみなさい」
レンである!
何故だ!?興奮してるじゃん!レン様だって元気でしょ!?
なのにどうして!
「すー…すー…」
一瞬で寝てしまえるんですか!?




