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レンの部屋に案内された?当然のような足取りで私も部屋に連れて来てくれた。
若干“部屋にお戻り下さい”と、レンから言われるかとも思ってたから力いっぱい抱き着いていたけど、大丈夫らしい。
クーパーがお菓子と紅茶を用意してる室内には3人だけ。
いつもは護衛も中に入るし、側仕えも他に居たりする。
「これが普通になる?」
「その方がよろしいかと、勝手に判断させて頂きました」
クーパーは立派な側仕えになったようだ。クーパーにもぬいぐるみをあげておいたから危険はないだろう。
「レン、あーん」
「あ、あー…」
「ふふ」
「っ」
あーん…までさせてくれる!なんて出来た伴侶なんでしょうか!?
出来れば朝ご飯を作って洋服を着させて仕事の手伝いをして飲み物を置いてご飯作ってお風呂では洗いたい!
どこまで出来ますか!?
「クーパー」
「はい…私は…1度討伐には参加したいと思っておりますが…」
「「…」」
「どう…したら、いいのでしょうか…」
「なにを迷ってる」
「これからの人生について…です」
「「…」」
クーパーが1度だけ討伐に参加してみたいというのは…
「体験したい?」
「はい」
なるほど、体感してどれほどの実力か、周りの力も見て確認したいんだろう。
「他の世界に行きたい?」
「………分かりません」
「ヒナノは世界を渡れるのですか?」
「うん」
ご褒美はなにがいい?とクーパーに聞いた事がある。その時に言っていたのは…
『知りたいのです、無知な私でありたくない』
そんな事を言っていたから、世界を渡れる者を紹介してみた。他世界を知って価値観が異なる者達との交流をしたらいいと思ったから。
子育て中なの。と言ったら快く引き受けてくれた者に連れられて他の世界に行ったり、拷問のやり方や、快楽の得方なども学んでいるんだろう。
いつまでも私の側仕えで居るのか、他の人生も歩んでみた方がいいのか悩んでいるんだ。
「側仕えとして仕えて」
「かしこまりました」
「その後、何年か休暇を取りなさい」
「は………」
「見てきたらいい、時間は有限だ」
「はい…はい…ありがとうございます」
「戻って来た時が楽しみ、我が子の成長を知りたいから必ず帰って来なさい」
「っっ〜、はい!」
クーパーはさっさと部屋から出て行き、2人きりになった…と思いたい。
煩い精霊が居なければ2人きりだと思えるのに…
出入り禁止にしておくか。
うん。そうしよう。
「クーパーは子どもなのですか?」
「そんな気持ちになったの」
「いい出会いがあって良かった…」
ほっとした表情を浮かべた後、私を後ろからぎゅぅぎゅぅと抱き着くレンはなんだか勘違いしてる。
「出会いならレン以上居ない」
「っっ……私もですよ」
レンと出会えた事が最良だ。
「どこまでしていいの?」
「なにをです?」
「襲っていいの?もういいの?」
「そんっ!?は、は、いけません!婚姻前の2人がそんなっ…!」
「…」
どうやらまだ我慢は続くらしい………
「寝る?」
「お風呂に、んっ!お、お風呂に…!」
「2人で?」
「1人で入れますね?」
「はい!」
洗浄魔法を知らない者達が多いこの国ではお風呂で汚れを落とすみたいだ。
それでも洗えた気がしないので、洗浄魔法をしてからいつも出ている。
先にお風呂へと浸かってから、レンが入る…
一緒の方がいいんじゃないかな?なんて、レンが顔を真っ赤にしながらお風呂へと入るからそんな事を思う。
出てきたレンに洗浄魔法をかけてからベッドに横になる。
私はね?
「「…」」
レンの匂いがするベッドは心地良くて毛布を顔まで掛けてしまう私と、ベッド端に突っ立ったまま固まっているレン。
素敵なレンは、一歩進んだり後退ったりする時期らしく、今は後退している時だ。
「ふふ」
「!」
楽しい我慢が続くこれからを思うと楽しい。
一緒に眠るのに、初めて一緒に眠るのに何もしないというのは中々に我慢が必要だけど…
ギシッ…パサ…
ベッドに潜り込んだレンは端の方で背中を向けて嘘寝を始めた。
「ふふ」
「っっ〜」
きっとこんなレンを見れるのもあと僅か。
そんなもどかしい今も楽しんで…
「!?……はっ……」
「ふふ」
背中にぴったりくっついた私に緊張するレンはきっと今だけだから。
「レン大好き」
「………」
固まったレンを確認してから眠りにつく…前に起こされる1時間前に目覚ましかけておこう。
起こしてくれる気がしない。
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【レドモンド・ウォーカー】
「すー…すー…」
一緒に眠ると、離れ難いという思いで同意してしまったが…
「すー…すー…」
ヒナノと一緒に眠るなど出来るはずもない!
つい最近まで人と接する事さえ稀だった私に愛する方が出来、尚且つ同衾までしてしまうとは…!誰が思う!?私でさえも思えない事態だ!
おそ…襲っていい?などと…な、な、何を考えているのですか!?
それは私の台詞であってヒナノの台詞では…!
「すー…すー…」
そうでしたね。私達は常識が違う。
違うからこそ私を好きになってくれたのだ。
同じ環境で育てばヒナノは私を好きになってくれていない…そしてきっと…このように素敵な女性でもなかったはず…
「っっ」
「すー…すー…」
つい顔が見たくなって振り向いた私が離れると思ったのか、胸に顔をうずめて抱き着いてきたヒナノに硬直してしまう。
「すー…すー…」
クーパーを子どものようだと言っていた。それならば納得する。
彼女は子育てをしているのだと。
微笑ましく思い、その心にまた焦がれた。
おずおずと抱き寄せ髪をぎこちなく撫でていると、何故かこの形が正しいと、緊張していたはずの力が抜け…
心地良い眠りについた。




