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絶対に離れないぞ…離れない…離れない…
と、レンをぎゅぅぎゅぅと抱きしめていたら暖かくてぽかぽかしてきて眠くなってきちゃって…
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【レドモンド・ウォーカー】
「とっ、」
私に巻き付いていた腕が落ちたのと同時に体の力も抜けたヒナノは、どうやら眠ってしまったようだ。
反省会を開くという聖女の意向に反対の声はなかったが、討伐を終え疲れ体が悲鳴を上げている者達ばかりだ。ヒナノも疲れてしまったんでしょう、寝息を立てて穏やかに寝ている姿を思わず隠してしまうように抱き直してしまう。
「眠ったか」
「そのようです」
「寝所に」
「いえ、このままで」
「…」
離れたくないと駄々をこねるような態度を思い出すと…私も同じ気持ちだと心から願ってしまう。ヒナノはワガママも不遜な態度も取らないが、私に関する事だけは口に出し意思を伝えてくれる。
精霊様がいらっしゃった驚きもあったが、いつも無口で最低限の言葉しか発さないヒナノが声を張り上げ叱り、私の事をまるで、う、う、美しいと、言い頭を下げさせたのは私の為だと…理由付けをしてくれたが、声を高らかにしたのは…私を貶す言葉に怒ってくれたのだと嬉しく…とても…心があたたかくなった。
「討伐は延期だ、全て見直す」
兄の言葉で反省会は終わりを告げ、私は怪我もないので執務室へと…
「すー…すー…」
離れたくない。
遠く離れた場所に行かないで欲しい気持ちもあるが、今も離れがたく感じてしまう。
「聖主様、良ければ側仕えを兼用させて頂きたいのです」
「なぜです?」
クーパーはヒナノに陶酔しているかと思っていたのですが。
「聖主様の側仕えとしても任命して頂ければ今ヒナノ様が聖主様の執務室に居ても問題ないかと…」
「任命する」
「ありがとうございます」
クーパーは変わった。私もだが…
ヒナノが来て下さってから私達は多くの事を学び、吸収している。
執務室に戻っても手放し難く、膝の上に乗せたままだが、魔力の扱いも上手くなっているのか疲れなんて感じない。
むしろ愛しい方が傍に居る喜びの方が強く、離してしまう事を考えると拒絶の心が溢れ出てしまう。
さっきまでは会えなくとも、ひと目見るだけでもいいと思っていた事もあったが…
私もまた離せない。
「聖主様、食事の準備が整いました。」
クーパーの世話が甲斐甲斐しい。私相手にも憂いなく過ごせるようにと整え行動する。そんな事は、クーパーも他の者でも居なかった。
変わりを体感する。
食事中も仕事中も離さずにいる私の元へ呼び出しがかかった。
「陛下がお呼びです」
「…」
「そのままでよろしいかと」
「………そうだな」
抱き上げ執務室から出る瞬間に精霊様を感じ振り向くと、机の上に置いてある瓶の中の菓子が1つ消えていた。
精霊様の好物だという菓子。
煩い精霊だとヒナノは言っていた。
私も声が聞こえるようになるのでしょうか。
話ができたら感謝を伝えたい、私のような者の側にいらっしゃってくれた事の感謝と、小さな頃は感じていた感覚や水の匂いのお陰で寂しさが少なくなった事を…
たくさんの感謝を伝えたい。
「着きました」
「あ、ああ」
いつもは目障りな王宮で気もそぞろになる事なんてなかったんだが…
つい、精霊様とヒナノの事を考えていたら兄の執務室まで来てしまっていた。
「「失礼致します」」
中に入るなり兄が難しい事を言う。
「眠っているのなら寝かせておけばいいだろう?」
「…」
「あれからずっとか?」
「…」
「…」
手放し難い…この感情をなんと説明したら良いのかも分からない。
「いいじゃねぇか、ああは言ってたが離れる日もあるんだ。少しくらい」
「無理ですね」
「「…」」
頼りきりで申し訳ないとは思いますが、どちらかへ行かれるのなら私も着いて行く。
離れるなんて考えられないほどに愛おしいのだから。
「レド…国としても」
「無理ですね、どうにかします」
「「…」」
手に入れたと、愛を返してくれた瞬間から枯渇し、飢えている私は側に居ない事があるならば暴れ、なんとしてでもヒナノを腕の中へと捕らえようとしてしまうだろう。
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「離れない!」
「!」
ん?何処かな?ここは…?会議室じゃなくなっている室内にはレンと私だけ?
「「…」」
キョロキョロと見渡してみると…どうやら寝室のようだ。
「ちゅー?」
「ちがっ…!ね、眠っているなら横になった方がいいとランドンが…!」
「…」
お誘いではなかったみたいだ…
レンから離れたから起きたのか…それもそうだ。離れたくないって強く思いながら寝ちゃってたんだし。
「起きた」
「は、はい…おはようございます」
レンが寝ないならここに居る必要ない。
王とベンジャミンの匂いが凄いからここでは寝たくないし。
レンがここで…なんて言うなら匂い消してからもちろん手を広げるけども。
「具合はいかがですか?」
「元気、レンは?」
「大丈夫ですよ、お腹は空いておりませんか?」
「レンは?」
「私は先程頂きました」
「いらない」
「…空いてないのですか?」
レンにあーん…が出来ないのか…と思ったら食欲なくなっちゃった。
「お菓子なら召し上がれますか?」
「レンも?」
「はい」
「食べる」
「はい」
笑いながら私を抱き上げるレンは…
もういいのかな?
ずっと抱っこでもいい?
疲れたら後ろから抱き着いてるからいいかな?
「起きたのか」
「大丈夫か?」
「レンとお菓子食べる」
どうやら王の執務室みたいだ。簡易的なベッドなんだろう、あそこは。
「転移は何処まで出来る」
「レンと2人なら国中行ける」
どこまででもいけるけど、レンと2人を強調しないと危うい気がした。
「浄化の時間は遅くなるか?」
「早くなる」
「なぜだ?」
「秘密」
「「「…」」」
私の浄化って最初は居るだけで浄化されるモノじゃなかったんだよねー?他の人達と同じで条件付きだったのー。とは言いたくない。
「先に護衛を行かせた後に転移で向かってもらいたいんだが…頼めるか?」
「レンと一緒?」
「一緒だ」
「必ず?」
「………」
「書面にしてもらうまで行かない」
「「「…」」」
書面に書けばいいんじゃない?婚約届けも出すならそこに内容を追加すればいい。何人たりとも引き離す行為、命令するなかれ。
こんな感じ?王が認めたら誰も言ってこないでしょ?
「お前たちはいつからそんなに執着が強くなったんだ…」
「私はずっと」
「レドも離れたくないと言うばかりで話が進まないんだぞ?」
え!?レンも!?レンも離れたくないの!?
「レンも?」
「………無理です」
無理!?私も無理だよ!そんな事思ってくれてたの!?
「何人たりとも引き離す行為、命令するなかれ。婚約届けに文言を追加したい」
「「…」」
「お願い致します」
「「…」」
お願い?レンもお願いしてる!私と離れたくないって!それなら離れなくていいよね?
今日からレンの部屋で一緒に生活したらいいと思う!というか、それにしよう!
もう我慢した!
「はぁ………分かった」
「ありがとうございます」
それなら今すぐ書類を作成しようよ。
「クーパー」
「控えているぞ」
「王、書類作って」
「………もう夜だ」
「明日にしましょう?ね?」
「はい!」
「「…」」
レンがそう言うなら!明日まで我慢するよ!
「次の討伐までには婚姻を終わらせるが、問題ないか?」
「ございません」
もう伴侶だから別にいい。
「レンはしたい事ある?」
「ヒナノのドレスの権限は頂きました」
「私もレンのドレス?の権限貰う」
「くすくす、ドレスではなく正装です」
「正装もらう」
「お願いします」
「うん」
「「…」」
「一緒に寝る?」
「そうしましょう」
「………疲れた…帰れ」
「…」
なんだかレンが変だ。
今までならこんな事言い出さないし、固まっちゃう。耳が赤くなる時は多々あるけど、なんだか…
素敵です。とても。
当然のように抱っこしてくれるし、王宮なのに眉間の皺が寄らない。首に巻き付いてる私を好きにさせてくれるし、なんなら背中に当たる手が撫でてくれている。
「クーパー」
「はい」
レンが歩く後ろをついて来ているクーパーとは目が合う。抱っこされてるから後ろ向いてるし。
「レンの正装私が作る」
「流行りと全ての物を取り寄せておきます」
「見てみたい」
「商人も手配しておきます」
「話しする?」
「お願い致します」
クーパーがこの後、討伐に着いて行くかどうか選んだみたいだ。




