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王にエスコートされながら入った会場にはレンが居た。
「!ヒ、ヒナノ様!」
「ヒナノ」
「ヒナノ…まだエスコートの途中です…」
「だってレンがいい」
「っっ〜、戻りましょう、ね?」
「レンと?」
「戻りますね?」
「はい!」
どうしてか獣性漂う雰囲気で言ってくれたので、会場に一歩踏み出した王の元へと転移で戻った。
レンが見えたらレンに抱き着く為に移動するのは当たり前だもん。
「うん…その、よく我慢したな…偉いぞ」
ふんっ!なんなら今だって我慢してる!レンが見えた途端レンの元へ転移したけど、レンが戻りますね?と圧をかけてくれたから我慢して!ここに居る!
レンは性格も好き。顔も体も好きだけど、我慢強くて王宮に居る間は眉間の皺が寄る所も私がわがままばかり言ってるのに咎めないで好きにさせてくれるのも好き。顔を真っ赤にしちゃう所も美醜がおかしな国で迫害されながらも神官達に常識や間違いがあれば正す為に口を出し、より良い国にしようと規律を持ち己の感情を堪える所も好き。
「………行っていいぞ」
「エスコートされてきなさいってレンに言われたからする」
「………それなら前を向いてくれないか?」
そこまで言われてないもん。レンだけを見つめちゃ駄目ですよ。なんて聞いてない!
頭下げてるけど!それでもレンが見ていたいんだ!
というかみんな頭下げてるんだから前向かなくても良くない?
「終わったぞ」
「レン抱っこ」
「はい」
レンの元に行ってダメ元で抱っこと言ってみたんだけど………
仕方ない方ですね。なんて、困ったような可愛らしい表情で顔を上げながら慣れているように…!そう!慣れているように私を抱き上げてくれたのだ!
「レンの魅力無限大」
「もう少しだけ静かにしておきましょうね」
「はい!」
王が顔を上げろ〜、聖女が〜、と説明している間は静かにしなきゃ駄目らしいのでレンの首にぐりぐりしてすんすん匂いを嗅いでお顔を堪能しておきました。
「ヒナノの席はあちらです」
「レンも?」
「いえ…」
「レンは聖主、私は聖女、何もおかしくない」
「そう…そうですが…」
神殿預かりの私が同じ茶会の席に居てもおかしくない。むしろそれが正解。
「立ってる」
「はい?」
「立ってるレンに抱っこされてるから立ってる」
「……くすくす、おかしな方だ」
もっとおかしくしようか!?そんな風に笑って下さるのでしたらもっとおかしく致しましょうか!?
「一緒に座って下さいますか?」
「お膝がいい」
「はい」
固まらない…!レンがキビキビと動いている!しかもなんだか雰囲気がちょっとダークだよ!素敵だよ!そんなところも好きになりました!
「レンを知ると好きがいっぱい」
「そっ…!………私も知りたい、です」
「!なんでも」
「ふふっ、本当に………このような場所でこんな事……後悔なさいますよ」
レンの言う通り“後悔”するならとことん後悔しておこうとレンの膝から降りて床に片膝をついて手を握ってみた。
「っっ」
おお…!告白は覚えているようだ!驚愕のお顔している!
声を大きく張って聞こえるように喋ろう。
まぁ、そんな事しなくてもさっきから視線が煩いんだけどね。
「私ヒナノはレドモンド・ウォーカー様と関わる度に恋をし、深い愛情を感じてしまう事を止められません。どうか伴侶にと望んで頂けませんか?」
そうだった。そういえばどういう結婚がしたいか聞いてなかった。
「あ…わ、わ、私は…」
「…」
「っっ〜、こ、このような場所ではいけません!」
「わっ」
抱き上げられて膝の上に乗せられたのは嬉しいんだけど………一体どこならいいんだろう?
あれ?もしかしてこの国ならではの告白場所とか決められていたりする?
「あ、あとで…わ、私から、お、お伝えします…から…」
「うん」
あとでとはいつですか?このお茶を飲み干せばやってきますか?明日?まさか明日という事はありませんよね!?
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【レドモンド・ウォーカー】
ヒナノに恋する者は一体どれほど居るのだろう…
嘆願書や婚約願いが私の元へと次から次へと舞い込む。
「はぁ…」
貴族だけではなく騎士からも願われている。
ヒナノが罰を与えた。というのは私もその場に居たので知ってはいるが、内容までは想像していなかった。
まさか同じ訓練量をこなせ。などと、誰が思うのだろうか。
ヒナノはお優しいから説教か魔力操作を完璧にやれ。という罰かと思っていたが…後日聞いた話に私はどこまで惹かれ続ければいいのかと思った程だ。
そして罰を見届けた騎士達は尊敬や敬愛、恋情を心に落としているのにも気付いてしまった…無理もない。あの方の心に近付けば近付く程魅了されてしまうのだから。
心根も美しいあの方は、出会った時から一途に私だけを見てくれている。
困惑ばかりが付きまとっていたが…会えない日々が続くとそんな事ばかりしていないで私も愛を伝えれば良かったなどと思えてきてしまう。
もしも…あの時…思いをぶつけられていなかったら…などと思う事は本来馬鹿らしいと一蹴してしまうのに…
ヒナノの笑顔が私に向けられれば向けられる程…
望んでもいいのだと考えてしまう。
私のような者が恋焦がれるなど…あった所で胸に秘めておかなければならないと思っていた気持ちが溢れ…止まらない。
「あんなのが聖女様の好み…?たぶらかす能力だけはあるのかもな」
その声に顔を上げた。
何を考えていたんだ…もうすぐお顔が見れると思っていたら思考の渦に…
「声でもかければそのうち忘れるでしょう」
その言葉に駄目だ。と、咄嗟に思ってしまった。
私は拒絶していない。だが、なんの答えも出していないのだと気付かされました。真摯に向き合ってくれている彼女に私は何も伝えていない…それどころか返事をしてもいない。
手紙は欠かさず送って下さるが、最近はお会いしていない…もしかしたら飽きられてしまったのかもしれません。こんないつまでも答えの出ない男を誰が好きになるのでしょう。
いえ、今更だとしても声を…返事をしてもいいでしょうか。
私は…私は…
「聖女様、陛下がお着きになります」
その声に頭を下げた私の耳にカツン…とヒールの音が響き…
「レン」
近くで聞こえた声に顔を上げるとヒナノが嬉しそうに私を見つめている。
兄はエスコートをしているはずなのに、消えたヒナノの行方を見て苦笑していた。
仕方のない方だ。
本当に…
ありがとうございます。
こんな私に呆れず変わらぬ熱を下さって…
好きですよ。
私は…
私も大好きです。




