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顔見せの当日までレンは益々忙しくなったのか、突撃さえ行けていない。
そして当日来てくれたのは…
「大丈夫か?」
「夜着着た?」
「うるせぇ」
ベンジャミンが心配して来てくれたみたい。そっぽ向いて顔を赤くしてるから着たんだろうなと確信する。
せっかくだから王の好みでも今度聞いてみよう。
「ベンジャミンかっこいいよ」
「お前のが綺麗だ」
ベンジャミンも当然出席するからキラキラな衣装を着てる。私も神官服をキラキラにした物を着せられている。正直こんなに宝石散らしたら綺麗というより趣味が悪く見えると思うんだけどなぁ?
でも、この国の感性ではこれが正しいんだろう。
「ベンジャミンぬいぐるみあげる」
「ああ、ありがとな」
「歴史は何処まで知ってる?」
「ぬいぐるみか?」
「ううん、淀みの原因」
「んなもんあるのか?」
何故この国だけ淀みが酷いのか。という歴史書はなかった。そしてベンジャミンも知らないという事は誰も知らないのか。
「レンが伴侶になってくれる秘訣知ってる?」
「あー…あいつはなぁ…最近受け入れてるみてぇだけど…」
話は聞いてくれてるのか。それって逆にどこまで聞いてなかったのかな?
「そのうちなんだろ」
「今がいい」
「よしよし、我慢出来てるな。安心だ」
どこがだ。
あやした事で満足したのか、面倒なのか、多分両方だろうけど帰るなよ。
レンを補給してないから、今日も話せないなら本気で寝室に潜り込もうと思っています。
「ヒナノ様、顔見せにはエスコートが必要だと進言しておきました」
なんてこと…!?クーパーは成長過程といえども成長しすぎだよ!?
エスコート…
レンにエスコートしてもらえるのかもしれない!
「準備が整いました」
ふふん♪
レンに会えるかもしれないから歩いて行くよ!
民達への顔見せでは会えないかもしれないけど、会えるかもしれないからね!
レンに負けないように美しい所作で歩くよ!
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「…」
「拗ねるな」
「ぶぅ」
「中には居る」
「…」
「私のエスコートをそんなに嫌がる者も居ないぞ?」
なんでだよ。
王のエスコートなんて望んでいないよ!?そんな事言われても“あなたがエスコート役なの!?嬉しい!”なんて思う訳ないよね!?
くっ…!
民達への顔見せは恙無く終わった。
王宮の離れ、普段は迎賓館として使われている建物に向かい、民達は特別に開放された庭に集まって私を見るというとても盛大な歓迎が行われた。迎賓館に到着した私は3階の窓から手を振るだけでいいと聞いていたから、王とベンジャミンが、我が国の建国からという文言から始まり不遇な時代を過ごしてきた我々にとって希望の〜…なんて話を後ろで聞いてて思う事はあれど口には出していない。
そもそも君達の国が……なんていう事実を話したら馬鹿な人間共が“原因”を探すだろうと思ってるから伝えてはいないけど…
まぁ、そんな感じで長ったらしい挨拶だか説教だかをした後に私がバルコニーに立つと…
「「「…」」」
ベンジャミンはぎりぎり顔が出せるけど、私と王の顔は柵に隠れて見えていないだろう。
こんなんでいいのか?と考えている私に王が何を思ったのかは分からない。
「エスコートの件はあとで聞く」
「…」
あとで?
それってつまりレンじゃないという事を言っていますよね?
バキッ!!!
「「「…」」」
レンに会えなくて不満というか寂しさが募ってる私に追い打ちをかけた王に拗ねて、浮いた私は柵の上からガツンッと殴って短くした。
「「「…」」」
護衛は王とベンジャミンを非難させようとしたから睨みつけてやめろと命令しておいた。
「「「…」」」
いいでしょ別に。こっちの方がよく見えて。
ほら、みんな喜んでるよ。
わーきゃーと野太い声が聞こえてくるでしょ?
「「「…」」」
ふんっ!
「あ、あー…んんっ!聖女はこの国の為に浄化を行い淀みをゆっくりではあるが!なくそうと毎日奮闘してくれている!」
奮闘はしてません。昨日はレンのパジャマを縫い上げ終わりほくほくしてました。
「他世界から渡り辛い使命を与えてしまったが………それでも使命を全うしようと前を向き我が国の為に生きてくれると言ってくれた!」
いえ、そんな事は言っていませんね。レンの為だけに尽力するとここで誓います!
「他の土地も時間はかかるが必ず!必ず浄化をしてくれる!」
そうだった。そういえばここらへんは浄化出来てきたみたいだ。
それなら土地を潤しておくか。
神からもついでにお願いされているからね。
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【ランドン・ウォーカー】
囲っている柵が均等に足が短くなった時は正直冷や汗をかいた。
あんな芸当まで出来るとも思っていなかったからな。
「すげぇな………」
ベンジャミンが横で呆けている。
いや、ベンジャミンだけでなくここに居る者達全てがだ。
エスコートの件を伝えていなかった事で拗ねて頬が膨れているのには気付いていたが、今は民らに説明をせねばと声を上げている最中…
「✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼」
ヒナノが聞き慣れぬ…いや、聞こうとしても聞き取れない言語を話し出した。
その声は小さく、そしてか細い音ではあった。いつものように、可憐で凛とした声音が止まると…
「わああぁぁぁ………!」
一斉に歓声の声をより強くした民達を見下ろした時に見えた光景は…
「はっ………美しい………」
「ああ………」
大地に緑が、枯れた土は豊潤な瑞々しい土へと変わり、その上に、小さく…だが、根強い葉が、綺麗な新緑が生えて、そしてそれは…
徐々に広がり見渡しても視界に入れられない程奥まで緑が広がっているのが分かる。
何故か王都周辺には淀みが広がらなかった。他に比べるとマシ。くらいだが。
それでも淀みによって空気まで汚れているような、砂嵐とまではいかないが淀んだ空気が漂っていたここが日に日に浄化していくのを体感してはいたが…
「これは………」
浄化は淀みを消し去ると認識している。
新たな命である緑まで生えるとは思っていなかった。
「すげぇな………」
「これが………ヒナノあり………」
礼を言おうと地面から視線を上げベンジャミンと一緒にヒナノを見たが…
「「…」」
「ぶぅ…」
まだ膨れていたのか………
体調に変化はなさそうだが…この美しい景色を生み出したと、少しは自慢気にしてもいいんだぞ?
「「「…」」」
柵が元の形に戻ったが……
「「「…」」」
ヒナノの膨れ面は変わらない。




