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軍服を着ている男性に抱えられた後、てっきり降ろしてくれるのかと思っていたが、そのままお姫様抱っこをされながら、部屋から出る行為に疑問を感じた。
歩けるのにどうしてだろう?女性への扱いはこれが普通なの?と、色々と考えていた私の目に入ったのは、素足。
そうだった、靴を履き忘れてたや。
だからこのままなのかと納得していると、また疑問が浮かぶ。
あの部屋では話せない内容なのかな?なんてまた思考の渦に入り込む私が連れて行かれた部屋にはソファやテーブル…
あ、もてなしか。
果物水とマカロンのような丸くてコロコロした…もぐもぐ…
マカロンでいいか。マカロンが出てきたのを見て食べて移動した理由を理解した。
「お口に合いますか?」
先ほどのミルクティー色の髪とよく見ると碧にも緋にも見える不思議な色彩を持つ瞳の“抱かせて君”が、私の対面に座り問いかけてきた。
抱かせて君にも私にもソファの背や、並べられているクッションなど、部屋に置かれている家具は不釣り合い。というよりは、大きく見える…ではなく、私達がより小さく見える造りをしていると感じる。
まるで人間でミニチュアを再現しているようだ。
あれ?なんか聞かれたっけ?
もぐもぐ………
あ、美味しいかと問われてたか。
「こくっ」
首を縦に振ると安堵の表情を浮かべる抱かせて君に続いて周りも安堵しているようだ。
「改めてご挨拶をさせて頂きたい、ウォーカー国、国王ランドン・ウォーカーと申します。」
どうやら“抱かせて君”は王だった。
「こくっ」
マカロンと果実水より、マカロンと紅茶がいいんですが、紅茶はあったりしますか?
「お疲れでしたら、体調を整えてから後日、説明致しますが具合はいかがですか」
「ふるふる」
首を降った後に気づいたけれど、それじゃぁ説明不足だろ。と、己のコミュニケーション能力の皆無にツッコミをいれる。
もちろん口には出さないけど…必要な事は話さないと伝わらないし、抱かせ………王にも理解してもらいたい事と浄化についての説明もしなければならない。
「聖女様は…」「敬称も敬語も不要、疲れは感じてない」
被せちゃった………
喋らなすぎて口に出すまでのラグが凄いんだからっ!なんなら顔の筋肉失くしちゃったんじゃないの!?どっか捨ててきちゃったんじゃないの!?ってくらい実は表情も動いてないけどね!?
瞬きまでやめたら人形になれるね!?やったあ!
「ありがとう、遠慮なくいつも通り話させてもらう」
おお……柔らかな微笑みプライスレス。
「どこまで、神様から啓示を受けてこの世界を理解しているか分からないが、現在我がウォーカー国には淀みが多数発生している。」
浄化が必要だとは聞いていますよ。
世界の事を聞いてしまうと、これからの楽しみがなくなるから着いてから体感して、学んでみようと思っていたからそれ以上は知りませんね。
「淀みは魔物を倒せば薄くなっていくが、淀みが過ぎると魔物が強くなっていく」
だからこそ、魔獣を倒し続けないと…あ、ここでは魔物って名称なの?それなら私も魔物って言わないと混乱しちゃうね。
魔物…魔物…魔物…うん!
「そこで淀み自体をなくす方法として聖女召喚があるが、正直書物に書かれている内容に曖昧な部分が多すぎるのと不明な点が複数、そして召喚の際に必要な魔力量が莫大すぎた為、実際に召喚したという事例が発見されなかった事から儀式をした代はない」
数百年?召喚されなかったって神が言ってたよ。もう少し早く召喚して欲しかったです。と、愚痴も零していたよ?
「今回はそのように曖昧な書物に頼るしか方法がないくらい淀みが増え続けている」
淀みが広がると大地が枯れる。
それなのにマカロンも果実水も美味しいのは、他国から輸入している品だけを使っているからなのかな?
他の国は淀んでないみたいだから。
「…………奇跡だと思っている」
「?」
輸入出来るのが?
あ、今は召喚について話してるんだった。
「今回聖女が召喚されたのは………神様が愚かな人間に慈悲をくれたのだと、こんな事は今回限りだと奇跡だと思っているのだ」
慈悲ではないよ、どちらかというと応急処置のような、みんなでなんとかしてねー?みたいな感じかな?
「だからこの奇跡に縋りたい…巻き込んですまないと思っている…いきなり知らない世界に渡り、すぐに浄化をして欲しいなどと…だが、それ以上に民達をこれ以上苦しい生活をさせたくないんだ」
自国では補えなくなってきたのか。
作物や水も枯れている場所もあるのだろう。
圧迫され、窮困し、切迫されてしまうのも淀みの特徴だ。
淀みは土地だけでもなく、人の心まで枯れてしまうようになる事も少なくない。
「協力してはくれないか?」
「こくっ」
私の頷きにほっとした表情を浮かべた後、満面の笑みでお礼を言う表情は…
「ありがとう!」
眩しい笑顔光いらずだ。
少し思案した王は何かを決意した後、私の顔を見て…諦めた?
なんだろう?
「一先ず、側仕えと護衛を厳選しなければ」
護衛…果たしてこの人達に護衛が出来るのだろうか?私と腕立て伏せの勝負してみたら、呆気なく勝てそうな体格と手の綺麗さ。
「…………必要?」
側仕えは必要か、不必要か…
魔法を使わずに生活するのも楽しそうだと思ってたからまだ何も使ってないけど…
護衛の必要性は感じない。
壁にずらっと立っている人達が護衛ならば尚更感じないです。
「当たり前だ!小さな顔に白い珠のような肌!とろんとした瞳!こんなに小さく愛らしく、神々しくも美しい美の化身のような外見だけでも既に危ないというのに…!それに加えて聖女だ、どれだけ守っても守り足りない!」
キリッとした顔ギャップ萌えー。
え???
何がなんだって言いました?
美の化身?美?それはお前じゃん?私の守りより貞操を守る為に護衛を残しておいたらいかが?
うーん…
きっと召喚でアドレナリンがドパドパ出てるからおかしくなってるんだ。うん。
どうしてか周りの人達が必死に、何故だか顔を赤らめながら一生懸命頷くのを見て…なんとなーく気付いちゃったけど気付かないようにしよう。
凄く面倒な予感がする。
子供だとは言われ慣れているけれど、こんな風に言うような………いやいやいや、ないない!
ああ…まだ頷いてる…
くっ…!可愛くない頭!可愛げをもって理解しないでぽやぽやぁってしていたいのにっ!
ああ…嫌だ。
やっぱりもっと細かく聞いておけば良かったよ…
「聖女には、神殿で暮らしてもらう。人選には時間がかかるが苦労はさせない。心配しないでくれ」
キリリッと何かを決意したような、そしてなんの心配もしていない私と違い心配をしている王には理解してもらおう!
守りなど必要ないと!
そしてそんな暇があるなら鍛えて欲しい!この人達が護衛ならそれが原因だよ!魔物を倒すには魔力も肉体も足りていないと思います。
「………まって」




