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【レドモンド・ウォーカー】
「ふんふんふーん♪」
「っっ〜」
み、耳元で、う、歌を、鼻歌を、歌って下さっている…!
あれからデートをし、し、し、したいと、仰って下さったヒナノ様………ヒナノを連れ立って神殿内の案内をしている。1度も歩き回った事がないヒナノは、どうやら、………わ、私が案内するまで、ま、待っていたようで、とても愉しげにされているのは、私の、う、腕の中…
抱っこがいいと仰ったヒナノを持ち上げ歩いている私達への視線はきっと煩いのだろうが、そんな事に意識を割けないほどに…
「んふふー!」
「っっ〜」
わ、私と居るからこそ楽しいのだと、そう伝えてくれるヒナノに幻想かとも思ってしまいますが、兄とベンジャミンに再三、叱られているからそのような事を思わないようにしてはいるのだが…
私を伴侶にと望んで下さったあの会議では、どこかうわの空でヒナノが去っても話を聞ける心中ではなかった。
「……ド、レド、………レド!」
「はっ!?な、なんていう夢を…!」
「そんな事を言ってやるな、女性から請われた事を夢などと誤魔化されては可哀想だ」
「ほ、本当に……?」
「レドはどう感じた」
キラキラとした瞳は、私を愛していると伝えてくれていた。少しだけ下がった眉は不安なのだと言っているようで、勇気を出して伝えて下さったのだと………
そう感じずにはいられない。
そんな表情だった。
『レンの好きな性格は?私は、レンのように我慢強い性格も好き』
手紙を日に3度も、欠かさずに出して下さるヒナノからは愛情を感じざる終えない。
「レンの事好き」
いつも唐突に現れるヒナノには心臓が止まってしまいそうになるけれど、私はいつだって嬉しく待ち遠しい気持ちになっている。
美しい何色にも染まる黒で私を見て、好きだと言う。
手合わせは魔法なども組み合わせて下さるようになった。
地面を蹴り上げて足先で仕掛けながら、魔法陣を私達の背後に展開し、肉体強化をした腕だけで私の陣を砕いてしまう姿に見惚れ…
「もう一度お願いします!」
終わりだと私の元に必ず来て伝えてくれるヒナノの背後から騎士の者が声をかけると…
「実力を知って、お前には“亡き骸と領地”の本が必要」
「は、はい!ありがとうございます!」
的確に指示を出し、導くお姿に心奪われ…
「レン、デート」
「も、申し訳ございません、仕事がありまして…」
「…」
私の言葉に悲しむ姿に愛らしさを感じてしまう。
誰もが見惚れてしまう彼女の本当に惚れるべきは…
そのお心と、そして…
「ふんふーん♪」
私に対して一喜一憂して下さる心と聡明な頭脳、人を能力で判断し導くお声と…
「聖女様!」
メイヤー子爵が神殿内に…?ヒナノが歩き回っていると何処からか嗅ぎ付けたのでしょうか…
「聖女様!お言葉ですが!聖女様のような高貴なお方がそのように醜く体の大きな」
スパァァァァァァァンッッッッッ
ヒナノが腕の中から消えた瞬間に小気味いい音が聞こえ、視線の先には浮きながら子爵の前に居るヒナノの手には…
ハリセン?でしたか?クーパーが持っていたハリセンを使って叩いた?のでしょうか?
「馬鹿と話はしたくない、クーパー」
「お任せ下さい」
「違う、クーパーが任せなさい。1人で全てを見通せない」
「………はい」
「駄目な子ね」
「は………」
馬鹿と言った子爵へは目もくれずクーパーに教育をする。
言い放たれた言葉にクーパーは絶望しているみたいだが………
兄も私の見た目を言われるのを嫌う。だが、行動に移さない。移せないのだ。暴君となり得る行動は王として好ましくないから、私を思い怒り、王としての立場を守る為に行動を移さない。
だが、ヒナノは構わず行動し、不愉快なモノを徹底排除する姿勢に…
見惚れてしまう。
私の為に動くヒナノに愛を伝えて、私もヒナノの為に動きたいと願って…
「レン?」
「失礼しました、次はお耳に入れないよう厳重にしておきますね」
「はい!」
広げた手に当然のような動きで抱き上げると満足そうに笑うヒナノに吊られて笑ってしまう。
「レン大好き」
「私も………はっ!?」
「…」
わ、私は今何を言おうと…!?
も、もしも!もしも!そんな事を伝えるならばこんな道中ではなく…!
???
私は何を言おうとしていたんでしょう?
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舌打ちが出そうになったよ。
『私も……』の続きが聞きたかった…!
久しぶりに、スン…って顔をした後、あれ?今なにしてたっけ?みたいな表情を見たよ!
私も…という事は…!もう伴侶じゃない?だってこれってもう告白でしょう?
なあに?なんて可愛らしく聞かないよ!?ベッドへ一直線したい気持ちでいっぱいです!
あ、ちなみに彫像どーん!もクリスタルぴかぴかーもなかった。
磨き上げた地面に変わり映えしない外壁に、煩い精霊が1。個体とも呼べない精霊がうようよとレンの側をくるくる回ってる。鬱陶しくて仕方ない。
この間ひっそりと、煩いから私が居る時は来ないで。と、伝えたばかりなんだけどねぇ?
「レン、水の中に入れる?」
「泳ぐという事ですか?」
「ううん」
歩いてる前に人1人、入れる水の円を作ってみる。
「作れる?」
「なんとなくは…」
そうだろうね、水の精霊がついてるし。
ポチャン…と、小さな音が鳴った後に、私が作った水の円に並ぶように作られたモノは…
「綺麗…」
「本当に…」
「入ってみて」
「は、はい」
私のは消してレンが作った水の円に入ろうとして止まった。
どうやら私を降ろしたいみたいだけど、絶対に嫌だからしがみついてたら、おずおずと足を踏み出したレンと一緒に入る事が出来ましたよ。
『話せる』
『す、凄い、です』
『レンが凄い』
『あ、ありがとうございます』
ふん!
力を貸していても使われた事のなかった精霊はいきなり使われて力を失う感覚についていけず消えていった。
しばらく眠っていればいいよ!
煩いからね!
『わ…』
『大丈夫、自分で出来る』
『は、はい』
精霊が眠っちゃっても与えられている力はそのままだから使えるはず。寝たのを無意識に感じ取ってしまったのか、円が崩れそうになったけど……うん、大丈夫。
『なんだか………懐かしい感覚がします』
『良かったね』
『………はい』
付きまとっている精霊も淀みやら、他の要因でレンが感じ取れなくなってたんだろう。
しばらく水の中に居たけど、満足したのか消えた瞬間レンの髪が崩れて…
もう襲いそうです。
レンの貞操を守る為に乾かしておきました。




