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【レックス・ドム騎士団長】
パリンと1つ美しい魔法陣が俺の目の前に現れ消えた。効力を失った魔法陣のはずなのに、残留のように薄く川の流れだと思える程清らかな陣は、俺が覚えられるように残してくれてんだと、“罰”を与えられている最中に何度思ったか分かんねぇ。
こんなもんは罰じゃねぇ、不満があった奴らもそう感じてんだろ。
ああ、そういう意味では罰だな。
“理解させる”という罰だ。
途中から髪を括り流れ出る汗を拭う事もなく俺の先を走り、手合わせをする聖女様の罰は俺が与えているような錯覚を思わせるくれぇ辛い訓練を聖女様もこなしている。それを率先して動き考える聖女様の罰は正直辛ぇ…何度も動きを止めたくなるが、その度に…
「うあ゙っっ!?」
体中に雷が走る。
「っっ、わりぃ!まだやれる!」
口調が崩れる俺を気にせず体を動かし罰を与える聖女様は美しい。
「っっ」
ちくしょう…見惚れるのはしょうがねぇだろ!と、もう心ん中も肉体もボロボロな俺の手から剣を奪った聖女様は、ニヤッと笑った後、俺の背後を取り浮きながら髪を掴もうとしているのがわかった。
「っ、もう気にしねぇ!っ、んだよ!」
陛下を危険に晒した同じ状況を作られ、咄嗟に聖女様へ構わず攻撃した俺に…
「いい子」
「っっ〜!」
くそっ!くそっ!
惚れてねぇ!
ぜってぇ惚れてねぇ!
っっ〜!
俺を真っ直ぐ見んじゃねぇ!
あんたみてぇに綺麗な奴と対等になんてなった事なんてねぇんだよ!
「終わり」
圧倒的な力の差を見せつけられ続けた罰は終わったが…
「はぁっ、はぁっ!っ、くそっ!」
悔しい。
これくらいはやれよ。という罰には着いていけなかった…
途中から手加減をもっと緩くさせられたんだよ。
「団長!も、申し訳ございませんでした!」
聖女様に口ごたえした奴が謝ると周りの連中も謝ってきた。
なるほどな。
罰っつーのもやり方があんだ。と、罰の手本まで見せつけられた俺は団長としてまだまだ甘えてたんだと、綺麗になった地面に寝転びながら教えてもらった全てを吸収するように肉体強化を始めた俺の脳裏には…
汗が顎へと滴り落ち罰を楽しむ、なにもかもがいい女の姿が離れてくれねぇなぁ?
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【レドモンド・ウォーカー】
トントントン…と扉を叩かれただけなのに驚いてしまった。ヒナノ様から教えて頂いた魔力操作をすると、どうにも集中してしまうな。と思いながら扉越しに声をかけた。
「どちら様です?」
「クーパーです」
「?入りなさい」
自室に訪ねてくる者は兄以外に居ない、そして兄は扉を叩く事もせず無遠慮に入ってくる。
ヒナノ様になにか…
「レン」
「………」
おかしいですね…自室には滅多に人が訪れない、護衛なども最小限だ。最近はヒナノ様の護衛へと駆り出されている者達が多く1人だったが、昔からよくある事なので慣れてはいますが…
「デート」
「???」
ヒナノ様が現れ………クーパーだったはずなのですが………
???
デート…と、言いましたか?
デート…確かに今日はヒナノ様との、デ、デ、デートの日で、神殿内を案内しようと思っていたが……
罰を与えると、律儀に職務を全うするヒナノ様に感銘を受け私も仕事をし、魔力操作も欠かさず行っていた…
???
今日はなくなったはずでは…?
「ヒナノ…様?」
「うん」
「デ、デ、デートは、その、後日に、」
「罰終わったからデート」
「し、しかし、もう、夜も更けます」
「じゃぁ、デートは今度」
「はい」
「今日はお茶だけで我慢する」
「は………」
う、嬉しいですが、この時間では…
クーパー!?な、なにをして…!何故!私の部屋に入りお茶の準備をしているのですか!?
な、な、な、
なぜ横並びでお茶のセットをする!?
ま、ま、ま、待て!
ど、どこへいく!?
ま、まさか、ふ、2人きり!?
「レン呼吸」
「………」
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立ったままレンを待ってても良かったけど、クーパー達が気を利かせてレンの部屋で2人きり!にしてくれたから、ソファに転移で座らせて、レンの左手をにぎにぎしながらお茶をして眺めてた。
お。
魔力操作してる。
固まってるのに魔力が体中に流れてる、綺麗に。
クーパーを越せたな。
あとは肉体強化だ。
肉体強化は魔力を使わないけど、使う。
残留魔力という、誰でも体に流れている余った魔力を使って肉体強化が出来るのだ。
少し誘導して肉体強化のやり方を教えてみたら………
なんか、凄く、器用、だね?
固まったまま肉体強化を習得したレンは、魔力操作と肉体強化を同時に行っている。
並行して私を見てくれたりしないかな?
「………あ、あの、」
「…」
「ありがとう、ございます、その、あの……」
「…」
レンと会話する方法が分かったかもしれない…
「ウォーカー国は今年で建国」
「2360年です」
みたいです。
お勉強の事なら会話出来るらしい…
でも…
「レン大好き」
「っっ、げほっ!げほっ!」
出来ればお勉強以外の事をお話したいです。
でも、いいかな?こうやって隣に居られれば幸せだもん。
「私抱っこが好き」
「???」
「力があれば抱き上げてもらえる」
魔力があれば持ち上げられるけど。
「鋭い目元も好きだけど、笑った時に、へにゃって崩れる目元も焼けた肌も一生懸命鍛えてるのが分かる手も好き」
「っっ〜〜!」
おお、聞いてくれてる!しかも、スン…ってならない!ならないからこそいつまで経っても会話が出来ない!
だけど!私の声が届いているよ!
「ふふ」
「っっ…………」
レンは結局お茶を一滴も飲まないままクーパーが私を迎えに来て終わってしまった。
「レン」
「っっ、か、必ず、デートの!ひ、ひ、」
「…」
「と、整えておきます」
「ちゅーしてもいい?」
「は………」
襲いたくなっちゃった…このまま一緒に寝たいなぁ?とか思ってたら、欲望が口から出た。
また固まっちゃったレンに…
「ちゅ」
「きゅっっ……」
ほっぺにちゅーして部屋から出た私はクーパーにお願いしておく。
「護衛」
「難しいかと…」
私の護衛が日に日に増えている事は気付いていた。放置しても良かったんだけど、レンの周りに護衛が居ないのは…私に割いているからだろうな。
「王に話通して」
「かしこまりました」
明日の夜まで護衛の数が変わらないなら突撃しよう。
そしてレンの部屋も覚えたからついでに突撃してもいいですか?




