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4日目の今日も手合わせしています。
昨日は来なかったけど、今日は来てくれたみたいでレンも一緒に訓練している。
手紙を一日に3回渡すという行為は結果的に大成功だ。
返事はいらない。と書き記してあるのに、堅苦しい返事を夜にくれる。
言い回しや、私の言葉へ対する返答をどうしようか…と悩みながら書いてくれているのが伝わってくるし、手合わせの後、魔力操作をするレンから少しずつ声をかけてもらえてるから、少しは寂しくない。
「ぐあっ!」
昨日から団長とレン、その他数名が魔法陣を躱せるようになったので私と素手で勝負中。
肉体強化はまだ出来ていない。
そして多分クーパーは出来てるけれど、魔力操作を徹底して行い訓練には参加していないところを見ると、やっぱり諜報に向いていると思う。手の内を晒すのはクーパーにとっては、悪手という考えなんだろう。
「このっ…!」
それにしても、どう教育しようか…
荒しか見えない動作を指摘すれば全て否定する事になる。
一つ一つ教えていくのも面倒だ。
「団長」
「はぁっ、はぁっ、なん、です、かっ!」
「教育して」
「分かり、まし、たっ!」
そうだった、長が居るなら長に頼んでおけばいい。
チラッと神官達を見ると、日に焼けている者と日に焼けて居ない者とで分かれている。
戦闘をしていても綺麗でいたい気持ちは分かる、美の基準も人それぞれだという事も理解している。
この国では色白でないと美しくない。という価値観がある為、クーパーに日除けの魔法陣を教えておいた。
クーパーは上手く使いこなしているんだろう。情報を。
日焼けの魔法陣を使っていない神官とは関わらないでおこう、クーパーの成長を邪魔してはいけない。
なにかご褒美でもあげようかな?
「レン」
「っ、はぁっ、終わり、ですか?」
「うん」
私との手合わせはそこまで時間を取っていない。弱いのもあるけれど、手合わせより基礎を学んで欲しいから手合わせはそこそこに…
「デート?」
「は、は、い……その、私と、ですよね?」
「…」
おかしいな?手紙にもレンの好きなところを書いてるし、“デート楽しみ、伴侶にはいつなってくれる?”とも、毎回毎回欠かさず書いているのに…相変わらず私の言葉も…文字さえも理解してくれていないらしい。
「っっ、し、失礼しました!わ、私と、その、の、の、望んで、いた、」
「…」
「………か、悲しませたい訳では………」
どうやら悲しい表情をしていたらしい。
「あまりにも卑怯で下劣な行為だ!」
後ろから聞こえてきた声は私宛てだろう。肉弾戦に混じっている騎士の1人…というか、初日から不満の声があるのは知っている。
卑怯もなにも、勝手に人間が決めたルールに魔物が従う訳もないんだから、そういう想定もしておかなきゃならないんだけど…
そんな事はどうでもいい。
だって、レンが…レンが…
怒ってる!
私に向けられた声に怒ってくれているんです!
そんな顔しなくてもいいんだよ?初日から言われている事でしょ?私が強いから妬ましさもあれば、こんな事したくない。なんて声もあったのは知ってるでしょ?
「聖女様は召喚されてここに居るのを知らない訳ではないだろう!」
「レンかっこいい」
「少し黙っておきましょうね?」
「はい!」
ちゃんと聞き取ってくれた…!それにちょっと獣性な対応を取ってくれるレンはますます素敵です。喋れないのなら抱き着いています。
「っっ〜、ん……っ、この国に協力するなど本来なさらなくていい事だ!それなのに、教え導いて下さっている方になんて言い草だ!」
いえ、協力するのは決まってました。神にお願いされたので。
「俺が必ず教育しておく。聖女様、大変失礼な物言いをした無礼は全て理解させていない私の責任です」
団長がそう言いながらレンを抑えてくれている。
「罰は私が」
そんな事言い出さなくていいのに…とても面倒だ。
罰を与えるのならすぐやらなければ駄目。時間が経てば忘れてしまうからね。
「ぅ゙ー…」
「ヒナノ様…おつらいで」
「レンとデートしたかったのに…」
「っっ、な、なにか用事が、で、出来たのですか?」
「罰を与えないと…」
一応教育係としてここに居るんだから…
でも今日はレンとデートなのに…
「ヒナノ様………では、罰が終われば私とデートしてくれますか?」
「する!」
「くすくす…はい」
笑ってくれた…
なるほど…怒ると話を聞いてくれるんだ。
抱き着いていても剥がされない。抱き返してはくれないけど。
そのままスタスタと帰っていくけどね…
「あと6時間は私と同じ訓練を、それが罰です」
「はい…ありがとうございます」
仕事があるのか去っていく後ろ姿を堪能してから団長と訓練をした。
2時間走り込んでから筋トレを40分、手合わせを15分して魔法陣を使いながらまた1時間走り込んでから、剣を使った実践。
「「「「「「なっ!?」」」」」」
魔物を連れてきたから団長1人でこなしてもらう。もちろん同じ数を私も討伐して、他の者達は近寄れないようにしながら討伐するを罰にした。
私に着いてこれない時は小さな雷を団長に落として、無理矢理動かした。脳筋は、私も大概脳筋だから分かる。
お説教されるより、肉体を使った罰の方が分かりやすいのだ。
「終わり」
「はぁっ!はぁっ!っっ〜、」
喋れないみたい、吐きそうだし。
「次からの罰はこれの3倍」
「か、かしこまりっ、はぁっ!はぁっ!」
レンは何処だろう?夜ご飯の時間は少し過ぎてるみたいだけど、騎士達は1人も帰らず罰を見てたけど…
「ヒナノ様、聖主様が自室に向かったと報告がございました」
誘われている、きっとそう。誘われているんだ!一緒に寝る?と…!
例えレンがデートの仕切り直しを今日すると思っていないとしても、罰が終わればデートすると言っていたレンの言葉だけを鵜呑みにして出向くよ。
好機は逃さない。
「お疲れではございませんか?」
レンの自室がある場所へと向かっている最中クーパーから問われて思い出した。
「ご褒美なにがいい」
「わ、私に!?」
クーパーはこの国では出会えない種類の人間だと思う。狡猾で残忍、卑怯で己が決めた事は曲げないが、価値観を変える事も容易く行える人間。
「相談したい事が1つ………」
いい子にはご褒美をあげないとね?
「いい子」
「あ、ありがとうございます!」
部屋に戻ってからご褒美の内容を聞いたら、私よりも適任者が居たのでその子に預けた。




