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レンの意識が戻った瞬間、バッ!と繋いだ手を離された………
ちょっとショックだよ……
「っ、あ……っっ、い、嫌では…!」
「…」
続き待てる。いくらでも待てる。
焼けた肌でも分かるほど真っ赤にして、口をパクパクするレンを見てるから待ってる気にもならない。
「っ、い、……っっ、っ、〜〜っっ!」
「ふふ」
「………」
レンから手を繋がれて?指先を触ってくれたレンはまた固まったから私から手を繋いで眺めてた。
「ん………は?」
「手合わせ」
「は、は……い……」
何にしようかなー?と考えながら、レンの手を引っ張り訓練場の真ん中に歩いていく。
魔物相手だから、魔力と物理と自然かな?
綺麗に整えてある訓練場の地面をデコボコにして、魔法陣を展開していく。
個々の能力は分からないから、参加するらしいクーパーと団長とレンだけには少し強めにして…少し寒くしようかな?なら、氷の魔法陣に変えて、ツララを出して…
「第一段階は魔法陣を弾いて地面に落とす事、第二段階は私と肉弾戦。開始」
レンを団長の横に転移させて、魔法陣を起動させていく。
神官達はわーきゃーと煩いな、志願したのか命令なのか分からないけど、頑張らないと国が死ぬよー。
本でも読んでいようかな。
魔法陣を弾ける者は居なさそうだから。
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地面がぬかるんでいる?違うな、ぬかるんでいる場所もあれば硬い場所もあり、草を踏んでいるような感覚まである地面を蹴るようにヒナノ様の元へと足を進めるが…
「ぐっ…!」
冷気が漂っているのか上手く体が動かせない…氷の刃がいくつも降ってきたと思えば地面から、体を引き裂くように伸びてくる。
ヒナノ様は先程の場所から一歩も動かず、魔法陣を放ち、本まで読む余裕があるそのお姿に私達は弱く使い物にならないと教えて下さっているようだ。
「っっ」
「おい!聖主様!個別でやるんじゃねぇ!小隊を組むんだろ!?ならその動きだ!」
団長の言う通りだ、ヒナノ様は小隊を引き連れて討伐に行くと言っていたなと思った瞬間、氷の刃がピタッと止み、囲うように襲ってきたのは…
団長の言葉も聞いていらっしゃるのか…悲鳴や愚痴が飛び交う中でも状況を把握されて…
「お前ら!小隊を作れ!配置に着け!やられるぞ!」
団長の剣を抜き、いとも容易く背後を取った光景が何故だか思い浮かぶ。
あのあと話をした団長から悔しそうに出た言葉を思い出す。
『あれは俺の危険じゃねぇ、剣を簡単に抜き取り陛下の首まで取れる状況で…お前は甘えたと…叱られたんだと気付いた…』
団長は動く事は出来た、無限に思える魔法陣を展開するヒナノ様は手加減していたと痛感している。
動く事が出来たのに動かなかったのは、あそこから動くには聖女様に怪我をさせる事になるからだと…
だが、それでは駄目だったんだろう。
クーパーのように、構わず攻撃しなければ駄目だった。
守るべきは、気にするべきは聖女様を傷付けてしまうという心配よりも陛下の心配をしなければならなかったと…
そう悔んでいた団長の気持ちが分かる。
私達を強化し、鍛えている今も、あの時も…
ヒナノ様は導き教えて下さっているのだ。
「レン」
「っっ」
体力も魔力も尽きかけていると突然、真ん中に立っていたはずのヒナノ様が浮きながら私の前におり、展開されていた魔法陣も地面の踏みにくさもなくなっている。
「膝の上に乗ってもいい?」
「は………?」
「くっついてお茶しながら魔法教えてもいい?」
ああ…また私は幻覚を……
い、いいえ!
あのように大勢の前で告白して下さった事実を消し去るような考えはヒナノ様に失礼だと兄に叱ってもらったばかり…!
う、受け止め……
わ、私を、す、す、好きと、仰って、くれ、くれる、
「レン、呼吸」
「はっ…!」
私もす、す、す、………
私なんかに好意を抱いているなどやはり幻想なのではないか!?
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膝の上は諦めました。
訓練場ではクーパーが率先して魔力操作を教えているので私はレンと訓練場に整えてもらったお茶会セットに横並びで座っています。
側仕え達に教えた事をレンにも伝えている。
少しだけ固まる時もあるけど、一生懸命なのか覚えようと私の言葉に耳を貸してる姿は…
「レン可愛い」
「???」
相変わらず私の言葉はなかった事になる時も多い。
レンも身に付けばあっという間にクーパーを越せるだろう、他の者も何人かは操作が上手く体中に魔力を巡らせ正しい流れになってきている。
「識字率は?」
「絵本なら平民も読めます」
「あげる」
「これは?」
私が作った、魔力を一から理解しよう!の本を渡した。ちゃんとこの国の文字に変換しておいたから、複製してばら撒いておいてくれると有り難い。絵本だから楽しく読めると…思います、多分、力作なので楽しく読んで欲しい。
ペラペラと本を捲るレンは…
「真剣な顔かっこいい」
「………」
ついに私の言葉は耳に入れてくれなくなったみたいだ。いや、耳には入っているんだろう、頬が赤い。
なんだろう?
どういう事になったのかな?真実しか伝えてないから言葉そのままに受け取ってくれればいいんですが…
「デート出来る?」
「っっ〜〜、っ、っっ、よ、よ、4日後に、その、お、お、っっ………」
「嫌じゃない?」
「そのような事は…!………」
4日後………
その間は会えないの?4日も?4日も空くの?やっぱり忍び込んでレンを眺めるだけでいいから側に居たい…
「わ、私は!」
「…」
「わ、わたしも………」
「…」
「???」
ああ、今のやり取りさえなかった事になっちゃったみたい。
キョトン?て顔してる。
レンと会える方法はなにかないか?
毎日、出来れば離れる事なく傍に居たい。
なにか、なにか考えないと…
レンが“あれはやはり妄想では…?”なんて考えが染み付いてしまう前に…!
「浄化…」
「………も、申し訳ございません、今なんと?」
浄化を教えるって嘘ついて傍に居ればいいのでは…?
嘘つき………
そんな言葉をいつか吐かせてしまう未来があるかもしれない…
嘘は駄目。レンは純粋だから嘘は駄目だ。
「ヒナノ様?」
「レンと毎日一緒に居られる口実考えてる」
「っっ〜!わ、私も!」
「…」
どうぞ続きを。
「わ、私もっっ…!っっ、わ、私、い、い、一緒に、」
「…」
「………ぃ………デート………たのしみ、に、して、お、おります…」
何故か会話が最初に戻ってしまったけれど、満足です。
「ふふ、私も」
「………」
レンに会え………
会えないなら手紙を出そう。文字にすれば嫌でも目に入るんじゃない?
うん、クーパーにお願いしておこう。




