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眩しい光が目を瞑っていても分かるほど、ぴかぴかして人工的な光だな、と思った。
人間の気配と少しの息苦しさを感じながら瞼をゆっくりと開ける。
ぱちぱちと何度か瞬きをした後に、横になっていた体勢から上体をゆっくりと起こす。
周りを見渡せば首から足首まで隠していて、着物にも似ているようなそれは、腹回りがゆったりとして、白を基調とした金糸の刺繍でメリハリをつけているような格好の人達。
壁側には式典に出るような立派な軍服を着ている人達が立っていて、守りには不慣れな重ったい華美な装飾に、筋肉は不要だと主張するような細さ。軍服に似ているようで実は違うのではないか?
軍人らしからぬ体格に、艶がある肌と髪、指先の滑らかさは鍛えているようには思えない。
この空間には男性しか見当たらないが、一人一人が華奢で“抱かせて!”と思わず言いたくなるような人達ばかり。
私が召喚された場所はどこかの一室。
壁や床を見ると洗練された建物だと分かるが、棚や机、無駄な物は一切なく、床から離された大きな台?とても無骨で寝心地の悪い私の居る場所に、効力の失った魔法陣が描かれている以外の物はないようだ。
周りに居る人達は呆然と突っ立っているのでこちらから動こうと言葉を発して………なにを話そう?まずは自己紹介から?それとも…
ああ、まずはここから降りるところから始めてみようと、台から足をぶらんとさせてから床を見てみる。
「………」
絶対に足が届かない。
子供用の椅子でも、もう少し地面から近いんじゃない?と思ってしまう程の高さに少し不貞腐れる。
子供がジャングルジムから降りるような不細工な格好で降りようか、魔法を使って降りようか思案していると、緊張と興奮が混じり合う上擦った声が聞こえてきた。
「この度はウォーカー国の淀みが酷く、古くから書物に記されている召喚の儀を行い、聖女様を降臨させ浄化を行って頂きたくお呼び致しました。戸惑いもある事かと存じますがどうか我らをお救い下さい。」
お前ってなに食べてるの?草だけしか食べてないの?ポキッと折れちゃうよ、ポキッと。ちゃんと食べてる?大丈夫?と声をかけたくなるその人は、色白でミルクティー色の髪が腰まで届いている男?は、細くか弱で儚げな雰囲気を醸し出している。
声の低さと、隠されている喉仏くらいでしか性別の判断が出来そうにない。
腰を折り懇切丁寧に話しかけてきた人は浄化について詳しく知っているのだろうか?
救うというか、もちろん浄化は行うけれども、やれる事はやりますけれども。
時間かかるんだよねぇ………
なんて、ぼーっと考えていると、私の返事が返ってこない事に不安を覚えたのか、今度は焦りが少し混じった声色で話しかけてきた。
「聖女様が他世界からいらっしゃると書物に記載されておりました。召喚時には神様からの説明と啓示を受けて来たとはいえ、ご不安やご不満もあるとお思いです。ですが、どうか…!私の話を聞いては頂けないでしょうか」
不安そうな顔でこちらを見上げてくるその表情は可愛らしく庇護欲を唆る。
お前絶対に受けじゃん。むしろ攻めは許さない、受けでお願いします。
うーん…
とりあえずは、この冷たい台から降りたい。
そして、懇願されるのも苦手で、最近は会話もしてない生活だったから、喋るテンポ感もいまいち掴めない。
返事をしないと…あ、でも…美味しい紅茶が飲みたくなってきたなぁ…
ああ、違う。
話をしなくちゃ。
「どなたか、抱き上げて降ろしてはもらえない?」
そこから、聖女様が喋っただとか、降ろして差し上げろだとか、みんなが一斉に慌てながら息を吐き出し続けるから多少、酸欠になりながら紅茶が飲みたいなぁ…と、また思考が散漫しながらも未だ床から遠い素足を見て、やっぱり魔法使えば良かったかなぁ?なんて今更な事を思ったりした。
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