第3話 振り返れば恥ばかり
「もう結構歩いたよな。町まであとどれくらいかかるんだ?」
「この山越えたら、3日も歩けばつくはずだよ。」
イパタ村を出て約20日、広大な盆地を抜けてルービの町にそびえるカパネ山の山道を歩いていた。
たくさんの木で生い茂っている山は初めてでただ山道に沿って歩いていくだけでも僕たちにとっては相当険しいものだった。
「今日はもうだいぶ登ったんじゃない?夜はここで明かすことにしよう。」
「うっ!こんな虫の多いところでか…?」
ワルツは普段の気の強さに見合わず虫に弱い。村でもよく騒いでいたのを覚えている。
動物とよく触れ合うのだから虫と出会う機会も多いんじゃないかと疑問に思って尋ねてみたが、昔寝てるときに虫が顔に覆いかぶさっていた経験もあって、それとこれとは違うらしい。
二人で野宿の用意をして、近くの木を集めて火をつける。
「ファイア!」
テニスボール大の大きさの火の玉が僕の手から枝の山に向かい、ボウっと火をつける。
僕たちはまだ魔法が使えないが、魔石と呼ばれる魔力が籠った石と魔法使いが特殊なインクで印字した呪文札を使うことで誰でも簡単に呪文札に記された魔法を使うことができる。
この呪文札を開発した人はジャンボ帝国の研究者の人で、国際的な賞を受賞したらしい。
ファイアは火属性魔法の中でも一番初歩的な魔法で、火の玉を手のひらの前に生み出し、直線状に発射する魔法である。
才能のある子なら5歳ごろには使えるようになるらしい。
灯り兼調理用の熱源となったこの火を二人で囲んだ。
バックパックの中から二つのトウモロコシを取り出し火にくべる。
「もう俺、飯食ったら寝るわ…」
「了解。近くに湧き水もないし、今日は水浴びはナシだね。すぐ寝よう。」
寝床の準備を始めてしばらく、茶色の焦げ目がついてきたとうもろこしを手に取る。
がぶり、と嚙みつくと水分がじゅわぁと口の中に広がる。
やはり一日中山を登ってきた僕にとって食事の時間とは至高の時間。
歯と歯の間に繊維が挟まったのも気にせず、ふたくち目にかぶりつく。
ボリボリと歯で芯から種子を削り取って、奥歯でぷちんっ、と潰して食べるのがたまらない。
あまりにも食事の時間が幸せすぎて、僕は気分が高揚していた。
「ねぇ、ワルツ。こうやって冒険を続けていってさ、俺たちが有名になったらさ、またマニャーナに会えるかな。」
「もちろん、会えるんじゃないか?一緒に”大地の化身を倒して、平和な世界で贅沢に暮らそう”って約束したんだし。」
最後に話したのは3年前。ナビーさんの任期が終わり帝都に帰るときに、「絶対また会おう」って声をかけたのが別れの言葉になった。
僕たちの冒険は、”大地の化身を倒す”というのも、当然目的のひとつだけど、もう一つの大きな目的としてもう一度三人で集まりたいっていうのもあった。
「そうだよね。いやぁ、楽しみだなぁ。町ってどんなんなんだろう。」
「すっげぇ魔法使いの人とかいるんじゃね?ドラゴン倒したりした剣豪とかさ!」
しばらく、町がどれくらいすごいのかについて二人で夢を膨らませたが、次第に疲れていって明日のために寝ることにした。
焚火を消そうとしたとき、いつの間にか虫よけの紙が燃やされているのに気付いた。
たぶん、ワルツがトウモロコシを食べ終わった後にくべたものだろうと思う。
ワルツが床に入ったのを確認して、勢いも弱まってきた火を息を吹いて消す。
そして僕も寝転がって就寝した。
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はずだ。
ここまでしか覚えていない。
というか、、、こんなにいかにも死にそうなセリフ言ってたっけ!?
今思い返してみるとまっじで恥ずかしい!
はぁ、死にたい。死んでるけど。
霊体となった僕はカパネ山が見える上空に飛んでいた。
とりあえず、何故死んだか確認するか?
い、いやいや、死体見るのとかも怖いもんな。
先にワルツを探さなければ。