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第2話 村を出た日

僕の名前はアポリ。

16になる年に同い年の親友であるワルツと一緒に生まれ育ったイパタ村を出ることになっていた。


_____________________________


「アポリ。本当に行くのか?正直お父さんはアポリには村に残ってうちを守っていってほしいと思っている」


「父さん。母さん。僕決めたんだ。街に出て大地の化身を倒して"英雄"になるって。」


大地の化身の居城から遠く離れたこのイパン村は、かつては安全地帯として周知されていたが、10年ほど前から魔物が村の作物を襲うようになった。


今まで100年以上一度も魔物に襲われたことのなかった村では、慌てて柵を建てたところで完全には魔物の侵入を防ぎぎれず、ジャンボ帝国軍に頼るほかなかった。


魔物の生息域の前線となってしまったこの村には、帝国から派遣された駐屯軍の一部100人が置かれることとなった。

ただ、幸いこの地域一帯は魔物の動きが活発ではなかったために、駐屯軍の大部分はこの10年の間に徐々に引き払い、今では二人で村を守ってもらっている。


ワルツと僕は3年前に村を離れた駐屯兵のリーダー、ナビーさんに剣を習っていた。そのときにナビーさんの娘とワルツと僕の三人で約束したんだ。


”僕たちで大地の化身を倒して、平和な世界で贅沢に暮らそう”って


「そうか。」


「絶対死ぬんじゃないわよ。生きて帰ってきなさいよ。もうっ…」


父さんはそれ以上何も言わず、母さんは泣き出してしまったけど、それでも笑って送り出そうとしてくれた。


「うん。父さん、母さん。ありがとう。胸張って帰ってくるから!」


大きく手を振りながら、後ろ足で村の門へと進む。

くるっと振り返って前に踏み出そうとも思ったけど、声が聞こえなくなるまで手を振り続けていた。


「おーい!アポリ!さっさとしろよー!俺もう先行くぞー!」


家族や村の人の声と入れ替わるように、背後からほんのり見知った声が聞こえてくる。


ふっと振り返ると、ちょうど村の柵が切れている門のそばにワルツが立っているのが見える。


「ごっめん、ごめーん!ちょっと待ってー!」


小走りで駆け寄る。これから僕たちの新しい冒険が始まるんだ!

その一歩を踏み出すんだ!


_____________________________


「さて、村を出てみたはいいものの、ルービまでどんくらいかかるかなぁ」


「大体馬でも10日はかかるらしいから、僕たちが歩きでいくんだったら30日はかかるんじゃない?」


イパタ村から東方にしばらく進んだところにあるルービという町はジャンボ帝国と魔物たちの生息域の前線に位置する町で、イパタ村よりも魔物の動きが活発であったことから、魔物と戦う冒険者や傭兵が名を上げる場所として知られている。


僕たちは村から出たことは一度もなかったため、村の外には何があるのか分かったものではなかった。


でもその恐怖を上回るほどに、この道は新鮮で心躍るものだった。


「うわー!こんなでっかいイノシシ見たことないよ!?」


「俺よりもでけぇイノシシがいるぞ!」


ワルツの家は村で乳牛牧場を経営していて動物と触れ合うとても活発な子であったからか、それともたくさん牛乳を飲んでいたからか体格がよく、15歳で身長が175cmもあった。


それに比べて僕は大体160cm。今年村で身長を測ったときに、160cmの看板を越してとても喜んだのを覚えている。


けれど、体格差はあっても剣の腕前は互角だった。

ワルツは知らないだろうが、二人での稽古のあとにナビーさんに特別レッスンを行ってもらっていたのだ。


そのときに様々な技を習い、ナビーさんが村から出た後も研鑽を続けたことで、ワルツの力をうまく受け流して反撃ができるようになっていた。


僕たち二人は良いライバルで良い仲間。

お互い村の他の子どもたちには負けなしだったので、多少の腕の自信はある。


僕たちは道中、風景にいろいろ驚きながらも、魔物と出会わないかというところに心底ドキドキしていたんだ。

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