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第1話 息ができないのか、しなくてよいのか

僕の全く知らないところで全く知らない時代に、ある日大地の化身が目を覚ました。

大地震とともに。

それから地底の怪物たちが現れ、世界の生態系は壊れて修復を繰り返し、長い年月をかけて変化した。

そして『ジュマワール』という世界は、人間の居住地以外は魔物が闊歩する怪物たちのテリトリーとなった。


そんな風に、神様は僕にとっては名前だけ知ってる概念のような存在だと思っていた。

今までは。


「あ、あの!僕が死んだっていうのは、そういうことですか?

僕はもうアポリとしては生きられないってことですか!?」


「だから、そうだって何度も言ってるでしょうが!そもそもキミはここに入っちゃいけないんだから、もう出て行ってよ!」


僕はいつの間にか死んでいたらしい。

何故死んだのかは全く思い出せない、多分死ぬ近辺のことは混乱してて全く記憶に残っていなかったみたいだ。

気づいたら宮殿のような場所で目覚めて、歩き回るうちにお風呂に入っているこの神様と名乗るヒト型のネコに遭遇した。


「あのね、死んだ人はとりあえず天国に行くための受付に行くはずなの。だから普段は天使でさえ入れない神の宮殿に死んですぐの亡霊さんがいることがおかしいの!」


「そ、そういわれましても…」

僕にはこう言うことしかできなかった。


「あ、そうだよね、ごめんね。でもボクのお風呂場の安寧を壊したのが許せない!そこらじゅうにいるボクの従者の誰かに話しかければよかったじゃないか!なんでボクのところに来るのさ!」


「目覚めてから全く人の気配がなくて…ここから歌声が聞こえてきたので音を頼りにしてきたんです」


「そ、そうだよね。全面的にキミは悪くないや。でもボクもお風呂の時間くらいは一人で楽しみたいんだよ。そろそろ転生する覚悟決まったでしょ?」


神様に出会って事情を説明してもらった僕は、”このまま天国に行く”か、”他の世界に転生する”かの二択を迫られていた。


僕には現世にやり残したこともたくさんあって、すぐに「うん」と返事ができないでいた。

多分みんなも僕のことを心配してくれているだろうし、どうにかもう一度現世に蘇らせてはくれないかと何度も懇願してみた。

が、結果としてはそれは不可能らしい。

多少時間をもらったわけだけども、やっぱり僕は現世に未練がある。


だから、一所懸命に頭を下げることにした。

「一生に一度のお願いです!どうか僕をこのまま現世に戻してくれませんか?」


「え?だからそれは無理だって。一生に一度のお願いか何かよくわからないけど諦めてもらうよ。」


「ゆ、幽霊のままでいいんで!」


土下座している僕からは神様のことが見えなかったが、とても驚いている様子が、地面の揺れから、跳ねる水音から、肌と耳を通じて触覚や聴覚に伝わってくる。


「え?ほんとに?キミはほんとにそれでいいの?もう転生することもできなくなっちゃうよ?」


僕はゆっくり頭を上げ コクリ と頷いた。

真剣なまなざしは神様にも覚悟を決めさせたようで、集中した神様の一挙手一投足に「もう後戻りはできないんだ」という緊張を感じた。


「じゃあ、キミの世界に送り届けるね。き、気を付けてね?」


「大丈夫です。もう死んでるんで。」


目の前がゆっくり白くなっていく。

まるで霧がかかったように徐々に何も見えなくなっていく。


もう覚悟は決まったんだ。

この白いもやが、お湯の煙ではないことを願って目を閉じた。


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