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 何とヴィンセントは上半身に何も身につけていなかったのだ。エレノアはいつも筋肉、筋肉と騒いでいても一応貴族令嬢のである。腕以外の筋肉はピタッとした肌着越しで素肌の胸筋を見た事が無かった。




(!!!!!!)

(!!!!!〜〜〜!!)




 エレノアは声にならない声を心の中で叫んだ。が、瞬時にこれはまたとないチャンスではと思い、非常に視力が良いので離れた所からでも余すところなく胸筋と上腕を観察した。




(すっごい胸筋!盛り上がってる!)

(厚みがすごい!)

(腹筋も割れている!)

(上腕の筋が理想的!)

(大理石の彫像みたい!)

(硬いのかな…)




 ピタリと動かなくなり真剣な眼差しのエレノアにヴィンセントはギリギリ心の声が聞こえる距離まで近付き観察した。前回の心の声で彼女は筋肉に興味があるのだろうと思い、筋肉を見せたらどうなるのかを試そうと思っていたのだ。



 ヴィンセントはさらに少しずつ近付いているが、エレノアは夢中で気が付かない。



(ん?筋肉が大きくなってる?)

(わぁ。肌がきめ細かい!)

(腹筋!一、ニ、三…六個もある!)

(山!谷!山!谷…)




 ヴィンセントは耐えきれず笑ってしまった。エレノアは頭上から笑い声が聞こえたのに驚き顔を上げると目の前にヴィンセントがいた。




(近っ!!!)

「!!!申し訳ございません!」ピョンと飛び上がりザザッとものすごい勢いで後ろに下がった。




(やっぱり子リスみたいだ。)

「謝る事では無いよ。ふふっ。いつ気付くかなと思って。」笑いながら言った。




 エレノアは咳払いをした後「薬を取りに参りました!」「また、母后陛下が症状が緩和されるので礼を伝えて欲しいと申しておりました!」と言った。




「それは良かったです。今薬を持って来ますのでどうぞ中でお待ち下さい。」ヴィンセントは玄関扉を開けようとしたので、エレノアは持参した荷物を馬から下ろし、入ってすぐの応接室に案内された。




 応接室のソファに腰掛けたエレノアは、屋敷中にふわりと香る薬草のにおいに癒されていた。



(さっきは失礼な事をしてしまったな…)

(あんなに近付いてヴィンセント様は大丈夫だったのだろうか…)

(何故上半身だけ何も身につけて無かったのだろう…)

(…)

(…とても良い筋肉だった。)

(張りがあり日焼けをしていても肌が綺麗だった…)

(硬いのかな…)

(…触ってみたい…)

(…!)

(!!!これでは変態ではないか!!!)




 エレノアは頭を振り邪念を振り払った。

(一旦筋肉の事は忘れよう。仕事!仕事!)




 そこへヴィンセントが薬を持ってきた。




(良かった!服を着ている!!)ホッとしたエレノアは気を引き締め薬を受け取り持参した荷物を渡した。





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