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「薬師?」ブレンダは目を丸くして言った。
「…もしかしてエレノアが受け取りに行っている薬師か?」
「はい!」
「その薬師は医師のご子息で引きこもっておるのだろう?なのに筋肉質とは信じられん。」
「この目で見たのです!腕の筋肉はとても素晴らしく、太さといい、色といい、筋の出方といい…。」エレノアは思い出しうっとりし始めた。
「あ!このことは誰にも言わないで下さい!ライバルが増えたら困りますので!!」
「(そんな物好きはいないだろう…。)わかった。」
「まあ、とにかくエレノアは自分の仕事をきちんとこなしていれば信頼は得られるであろう。根は真面目だからな。変わってはいるが。」
「団長!一言余計です!」エレノアは頬を膨らませた。
「冗談だ。」ブレンダはクツクツ笑い「では私は仕事に戻る。」と言い退室した。
団長のアドバイスはありきたりだが、やはり誠実に仕事をし信頼を得るしかないだろうとエレノアは思った。
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二度目の薬を取りに行く日がやってきた。母后陛下は薬を飲めばだいぶ症状が緩和されるようで、薬師に礼を伝えて欲しいと仰った。さらにヴィンセントの父である医師から息子に、とやや重たい紙袋を手渡された。
颯爽と馬に跨りヴィンセントのもとへ向かったエレノアは、前日にヴィンセントに届ける物の買い出しをしていた。事前に苦手な物があるかヴィンセントの父である医師に聞いたところ特に無いという。しかも狩猟もするし畑で作物も育てているらしい。
(ご自分で何でも出来るとは。素晴らしい!)
(ならばお渡しする物はアレしかないな。)
エレノアは口角を上げながらより速く馬を走らせた。
ーーーコンコンコン。
到着したエレノアは玄関扉をノックした後、数歩下がり待機した。が、しばらく経ってもヴィンセントは出てこない。
約束の日であるし、時間通りでもある。何度か扉をノックしたが中から物音は聞こえてこない。
(何かあったのか…?)
「失礼します!騎士のエレノアです!扉を開けさせていただきます!」大声で言い取手に手を掛けたが鍵が閉まっていた。
さらに何度か扉をノックしたが静まり返っている。
(まさか…。中で倒れているとか!)
「緊急事態と判断しました!扉を破壊します!」玄関扉を壊して入ろうと剣に手を掛けたまさにその時、背後から声が聞こえてきた。
「エレノア殿」
振り向くとヴィンセントがカゴを抱えて立っていたがその姿にエレノアは驚愕した。




