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城下の外れの教会で婚約式が執り行われた。
エレノアは淑女教育を早々に放棄し、デビュタントも欠席したのでドレスはほとんど着たことがない。ヴィンセントが用意したドレスは、二人の瞳の中間色を淡くしたような白に近い青緑色でオフショルダーのビスチェにレースをふんだんに使用したティアードスカートのデザインである。
エレノアは肌が出ているドレスは初めてで恥じらっていたが女性らしい体型によく似合っていた。また、お化粧もヘアセットもしてもらい、どこから見ても美しい淑女に変身した。
もちろんリネットが支度をした。「やっぱり思ってた通りね!元々エレノアは可愛いけど、ドレスを着てお化粧したら凄い事になると思ってたけどやっぱり凄いわ!」
「凄い…?」
「ええ!とても大人っぽくて美しいわ!お姫様みたいよ!」
「…それは王家に失礼なのでは…。」
「大丈夫!それよりこんなにピッタリのドレスいつ採寸したの?」
「私は何もしていません。知らないうちにヴィンセント様が用意して下さいました。」
「…なるほどね。」リネットは小さく呟いた。
支度部屋の扉がノックされ、ヴィンセントが入室したが、ドレス姿のエレノアに目を奪われピタリと動かなくなってしまった。
そしてエレノアもまたヴィンセントのタキシード姿に見入ってしまっていた。
お互い言葉もなく見つめ合っている二人にリネットは「とてもお似合いね。」と言いそっと退室した。
式にはヴィンセントの両親と兄夫妻、エレノアの両親と姉、兄二人、先輩のルシルとリネットが参列した。神官が立会人である。
二人の入場に一同静まり返った。
◇◇◇
「「相手を大切にし、二人の絆を固く結びます。」」
「この誓いをもってお二人の婚約が成立したことをここに宣言します。」
二人はそれぞれ誓約書にサインをし、無事に婚約は成立した。
◇◇◇
エレノアと家族は数年振りに再会し、末娘の淑女らしい振る舞いに大変驚いていた。
「娘をよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願い申し上げます。」
エレノアの父とヴィンセントはお互い頭を下げ挨拶をしている。
(父は何て思っているのだろう…ヴィンセント様大丈夫かな……)
その心配は杞憂に終わった。エレノアの家族はヴィンセントの筋肉に驚いていたのと、エレノアの美しさに感動していた。しかも皆“野山を駆け回っていたのに”って前置きがあったよと、ヴィンセントは耳打ちしてくすりと笑った。
(もー!余計な事を…)
ヴィンセントは「そんな事はありませんよ。私はエレノアの事をもっと知りたいですから。」と言いエレノアの頬に口付けた。
(人前で恥ずかしい!)頬を押さえ真っ赤になったエレノアにさらに追い打ちをかけるように「ならば次は二人きりの時に…」と囁く。
「ヴィンセント様っ!」エレノアは耳まで真っ赤になってしまった。
ヴィンセントの家族もまた、次男の変わりように驚いていた。あんなに人と関わらないよう生きていたのに…エレノアには積極的だ。『伴侶が見つかり幸せそうで良かった。』次男の嬉しそうな姿を見て心から思った。




