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67 性欲の果てに……


「わっ……!こ、こんなに軽やかに動くんだ。やっぱり凄い……」


 セシルにしてはやや子供っぽい新鮮な感想だ。


「はっはっはー!いいだろコイツ。めちゃくちゃ高燃費だし、それでいてそこそこ速いし」


「いやっ……カイト!?コレは――そこそこ速いなんてレベルじゃないぞ」


 セシルの顔は見えないながら確実に興奮している様子が想像できた。


「シフトアップしていけばもっとスピード出せるぞ!」



 ――カシャッ!ドゥルルルン!!


 2速から3速に入れ替えさらに速くカブを走らせた。


「うわー……。これは、馬より早いんじゃないか!?」


 セシルの称賛に、カブは調子づいて説明を添えた。

「はっはっは。なんたって僕は8馬力ですから!!」


「おうセシル、感心してばっかじゃなくて道案内もしてくれよ?」

「あ、ああ。すまない、しばらく真っ直ぐ進んでくれ……」



 ……それからカブを走らせ、ものの5分ぐらいでたどり着いたセシルの家はかなりの大きさだった。


「でかい家だな……!」


 建物だけで俺の今の自宅と同じぐらいの面積があった。この世界の家としては相当な広さだ。


 俺はリアボックスを見ると、ターニャが目を閉じて軽油缶にもたれかかっていた。


「よっと……」


 俺はターニャを抱き上げ背中でおんぶした。


「よしっ。じゃあ失礼するぜ」

「ああ、どうぞこちらへ」


「カイトさん!……」


 そのとき俺の後ろのカブが顔を映し、語りかけてきた。


 ん?


 タブレットには親指を立てた手のイラストが表示されていた。グッドラック……ってか?

 いやいやお前、……今日はターニャもいるんだぞ?そんな色っぽい展開になるかい!



 さあ、実際のところどうなったか?


 まず俺とターニャは、豪華な料理をセシルに振る舞ってもらった。


「う、うめえ!……ありがとうよセシル!」

「たくさんあるので遠慮せずに召し上がってくれ」


 ターニャを見るとセシルに出されたサラダとローストビーフを夢中になって頬張っていた。


「うま、うま……」


 俺はターニャの夢中に食ってる様が面白くてちょっと笑った。


「簡単なもので恐縮だが……」

「何言ってんだ。最高だぜ!毎日こんな飯食えたらなぁー」

「……」

 セシルがその時何がつぶやいたが聞き取れなかった。



 俺とセシルは食後、お互いの自身の生い立ちや仕事の話、このスズッキーニの事……などなど色々と興味深い話をした。


 その間にターニャはやはり退屈で眠くなって来たらしい。

 それを見たセシルがターニャを抱っこして、即席で作った布団に運んでくれた。


「すまねえなセシル、ターニャも一緒ってのは……家に置いて行き辛くてな」


 セシルは声をかけた俺に優しい笑みを返してくる。


「気にしないでカイト。私、凄く満足しているから」


 セシルは少しうつむき、付け加えた。


「ずっと、今まで一人だったから……」


 それを聞いた俺は、少し前まで日本の家でたった一人で飯を食っていた自分自身を思い出し、その姿をセシルと重ねた――。



 気付いたら俺はセシルを抱きしめていた。


「カ、カイト……!」


「今日は一人じゃねーぞ」


「……」


「ありがとう」


 ――そして俺達はベッドに移動し、お互いに抱き合ったまま眠りにつくのだった


 ――――――――。




 んなわけあるかあああああああいい!!


中高生のラブコメじゃねえんだ!俺もセシルも立派ないい大人なんじゃあああ――!!


 ……実際の所、ベッドインしてからは俺もセシルもタガが外れたように溜まっていた欲求が爆発し、それらを存分にぶつけ合う事になった。

 二人共貪るようにお互いを激しく求め合う、忘れられない夜だ。


 俺もまだまだ若いぜ!ふはははは――!!


 ……などと、ある意味安心したのだが、そのせいでその夜はほとんど寝られなかった……。



 ――そして朝になり日が昇り出し、俺は早起きする。


「うっ、体がキッツイぜ……」


 セシルは隣で寝ている。


 俺は体を起こし服を着て、ターニャの寝ている部屋に行き、様子を伺った。


 ――スー、スー……。


 寝息を立ててグッスリと寝ている。


「コイツ、どこでもぐっすり眠れる奴だな……まあ良い事だ」



「んっ……くっ、くあーっ……」


 俺は背伸びをして、大きくあくびをした。

 そして徐々に思い出す――セシルの温もり、柔らかな体、そして息遣い……。


 すると体は疲れているものの、心はなんか満たされている感覚が確かに存在した。


「フゥ……」



「カイト、おはようターニャはどう?」


 うおおお!?ビックリした……。セシルも起きてきたか……。


「お、おう。ぐっすり寝てるぜ」

「本当だ!」


 セシルは微笑みながらターニャの寝顔を観察している。


 その間俺は頭の中で今日の予定を立てていた。

 するとセシルは俺の後ろから手を回してハグして来た。


 背中越しにセシルの柔らかさを感じながら、俺はしばらくぼーっとそのまま突っ立っていた。


「今日はどういう予定?」


 セシルが聞いてきた。


「おう、キルケーって所に定期便の配達がある」

「そう……私、夜は大体この家にいるから、いつでも会いに来て」

「ああ、場所は覚えた!」


 その後、俺はセシルの方に向き直りこう言った。



「いつか一緒に暮らそうぜ?」



 その瞬間セシルの目から涙が溢れた。


 俺はセシルを抱きしめ、セシルも俺の背中に手を回し、しばらくお互いの温もりを噛み締めた。

 そしてこう思った。



 ――あー、なんか……あったけえな――。



 それから一時間ほど経って、ターニャも目覚め朝食を頂いた俺達は一旦家に帰ることにした。


「セシルばいばいー!!」


 リアボックスに入りセシルに手を振るターニャ。

 セシルも笑顔で手を振り返している。


 ちょっと国の仕事の事を聞いておこう。


「セシルよ貿易輸送の件だが、次はいつギルドに行けばいい?」

「二日後に荷物が届く予定だからその時に来て貰えればいいかな……」

「分かった!じゃあなー!!」

「また来てね。カイト、ターニャも」


「さよーならー!セシルさん!!」


 うおっ!!全然()を出さなかったカブがいきなり喋りだしやがった。



「おまっ。いきなり顔出すんじゃねーわ!」


 俺がカブにそう言うと、奴はニターっとした不気味な笑顔を貼り付けてきた。

 初めて見る表情だ……。


「で!?カイトさん、……で!?夜は何をしてたんですか!???」


 なんか煽ってきた!!


「……お、お前の言った通りになっちゃったじゃねえか!」


 それを聞いたカブは、

「それでいいと思います。多分セシルさんも喜んでます!」


 と、今度はニコニコ顔でそう述べるのだった。


ハッピーハッピーハッピーー^ω^

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