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62 貿易輸送

ちょっと投稿が遅れました(汗


「ん?どういう事だ?」


「……今回の貿易輸送の場合、国の輸送団が三日かかる所をカイトさんは恐らく一日で配達できるだろう。しかしこれだとあなたの会社、『スーパーカブ』はどうしてそんなに配達が早いんだ?――と疑問に思われてしまう」


「おう、そうだな……あっ!」


 俺はそこで気付いた。


「だが私が配達開始日を前にずらして書類を作っておけば、国には不自然に思われない。どうかな?」


 お!


「おお!なるほどなるほど!!セシルよ。それ、かなり助かるぜ!!」


 俺はちょっと笑顔になってカブを見た……するとカブは――。



 見たこともない恐ろしい顔で俺達をにらんでいた!


 いや、なんで……!?

 お前……、一体どうしたんだ!?


 カブはその後すぐにタブレットから顔を消して画面を真っ黒にした。


 俺は一瞬恐怖を感じたが今はセシルとの話に集中しなければ。


 あ、そういえばあれだけ「セシルと話すー」とか言ってたターニャは、いつの間にかカブの荷車の上でピョンピョン楽しそうに飛び跳ねている。

 お前……。



 それからセシルは思い出した様に話を続けた。


「そうそう国の貿易品の事だが、こちらから運ぶ物は大量のロール紙とペン。帰りに引き取る物は鋼材や歯車、ネジ、ナット、といった金属部品だ。どちらも荷車の付いたカイトさんのカブなら積み込めると思う」


 金属部品という言葉にちょっと惹かれた俺は貿易相手の国について聞いてみた。


「な、なあ。その貿易相手ってのはどんな国だ?」


「相手はウチの隣のゼファール国。その要塞都市ニンジャー。鉄鋼業で栄えてる国だ」


 ……なんかKawasakiのバイクみてーな名前だな。


 そして、ちょっと真剣なトーンでセシルはこう付け加えた。


「……あと、カイトさんにプレッシャーをかけるつもりはないが、これらの貿易品の配送は全てウチが管理する事になっている……」


「ん?……お、おう……?」


 俺はセシルの言いたい事が分からず、とりあえずセシルの発言を待った。



「なので今回の貿易品輸送において、荷物が壊れたとか、期日に大幅に遅れが生じたとか……何かしらのトラブルが発生した場合、恐らく私はクビになりギルドの存続も危うくなる」



 俺は静かに仰天した!

 せ、責任重大すぎるじゃねーか……。


「う、うん、……なるほどなー、うん。……」


 俺はそううなずく事しか出来なかった。

 しかしセシルは――。


「カイトさん。……私は、あなたを……信用して、いる。……だ、だから、あなたにこの話を持ちかけたんだ」


 俺の近くに寄って来て俺の手を両手で握ってそう言ってくれた。


「い、いやーそう言われると……」


 俺が気恥ずかしさのあまりちょっと上を向いて周りを見回すと、ギルドの入り口に立っていたイングリッドと目があった。

 するとイングリッドはピューッとどこかへ去って行ってしまった。

 何だよあいつ……!?


 今度はカブを見ると、またあの般若の如き怒りの表情で俺とセシルをにらんでいた。


 何なんだよ……!?


「よし、まあ分かった。とりあえず必要なのはまず行き先の地図……他にも何かあれば教えてくれ!」


 それを聞いてセシルの表情が明るくなった。


「引き受けて貰えるか!?カイトさん」


「ああ、その代わりカブの事は出来るだけ秘密にしといてくれよ?」


 セシルはずっと俺の手を握ったままだ。

 なんかコイツもさっきからちょっとおかしい気がするな……。


「感謝する。一応国には、『時間はかかるが小型車で遠距離配送が出来る会社』という風に紹介しておくけどいいかな?」


「ああ、あとは到着予定日に俺達がしっかり配達を済ませればいいだけだ」


 実際俺が配送する日はいつか尋ねると、ちょうど今のキルケーへの定期便のない日だった。よし、バッチリだぜ!



「了解した。ウチの国から輸出する荷物は明後日にギルドに届くので、カイトさんも実物を見て確かめて欲しい」


「分かった。重たさやら、ちゃんと荷車に積み込めるかやら見ときたいしな」


 色々と俺のために手配してくれるセシルには感謝しかない。


 あとは……ふふ、アレを聞いておかんとな。

 俺はニヤつきを隠しきれないままセシルに尋ねる。


「報酬はいくらなんだ?」



「分からない」



 セシルは俺の問いに即答した。

 ええ!?分からないって何だそりゃ?


「報酬は後から支払われるが事前に公表はされない……高額報酬目当てに質の悪い業者が来たら面倒だからだろう。ただ報酬が高額なのは間違いないと思う」


 俺はここで一つ疑問が生じた。


「……待てよ、もしかして国は公に仕事の求人を出したりしてないのか?」


「そう。基本的に国からの依頼は私の様な人間の打診からしか受けられない。だから一般には出回らない」


 俺は特別感を感じて少し嬉しくなった。


「分かったぜ。色々とありがとうよセシル!……それとよ、いつまで握ってんだ?」


 セシルはさっきから俺の手をずっと掴んでいた。


「あっ!……も、申し訳ない……」


 慌てて手を離すセシル。顔がなんかちょっと赤い?んん!?……。


 ここで俺は思った。



 ――もしかしてコイツ、俺の事好きなんじゃね?



 ……よし、ちょっと攻めてみるか……。


 俺はセシルの腰に軽く手を回しポンポンと叩いた。決して尻とかではないぞ。うん。


 セシルは全く嫌がる素振りも見せず、正面から俺の目を見つめている……うおお、こりゃあ間違いねえ。


「いつでも俺を頼ってきていいんだぜ?」


 とか言って笑顔でカッコつけてみる。


 さっきより更に赤い顔になってセシルは、


「あの、カイトさん……今度――」



 パパッッーーーー!!



 セシルの言葉を遮る様にカブがホーンを鳴らす。

 タブレットには例の狂った様な怒りの表情が見てとれた。


 げっ!このパターンはヤバい!!なんかヤバい!!


 俺は急いでカブの元へ駆け寄り、エンジンをかけた。


「すまん、また今度続きを話そうぜ!」

「あ……、また……」


 セシルはあっけに取られたような顔で手を軽く振り、俺に別れの挨拶を返してくれた。



 ――ドゥルルルルゥン!!


 ギルドを離れてしばらく走った時、カブはやはり怒りの表情でこう言った。


「カイトさん!あ、あのセシルとかいう人……ヤバくないですか!?」


「いや、ヤバいのはお前だ!」


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