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509 カブがモデルのバイク!?


「お、おいカブ。どうした?」


 カブがあんな感じの悔しそうな表情をするのは大抵何かに嫉妬したときだが……一体何に!?


 エルドが不思議そうな顔をしてカブの元に駆けつけていき、タブレットを覗き込んだ。


「カブー、どしたの?」


「エルド君!これは僕の沽券こけんに関わる問題です!」


 エルドは首を傾げて俺を振り向いた。


「おとう!カブがなんかよく分かんないこと言ってるよ!?」

「カブがそうなってるときは敵が現れたときだぞ」

「敵!?だれー??」


 それは俺も分からん。

 黙ってカブに注目していると、ターニャが手をポンと叩いて不敵な笑顔で言った。


「あー、私なんか分かっちゃった!ふふ」


 ほう。俺には予想もつかんな。ターニャの予想はこうだ。


「前にギルドでセシルの仕事を手伝ってたときに聞いたの。王城でカブみたいなエンジン付きのバイクが開発されたって」


 あ!なるほどなー。そりゃあカブの性格なら気になるだろうな。


「はい!その通りですターニャさん!僕に似たバイクなんてYAMAHAのメイトかSUZUKIのバーディーだけで十分です!」


 ずいぶん懐かしいなオイ。カブは続けた。


「以前、マリーさんの家に自転車が横流しされてたでしょう!?今回、僕に似たその新しいバイクもこのマリーさんの家に来てたりしませんか!?もしそうであれば是非拝見したいんです!」


 なるほどな。この家なら町に出回る前に試作品があってもおかしくない!


「俺も気になるわマリー。あったら是非見せてくれ」


 俺はワクワクするのを抑えながら、少し遠慮がちな顔をして尋ねてみた。

 するとマリーはフワッとした上品な笑顔を浮かべ、胸の前で手を合わせて答える。


「ちょうど良かったです。実はウチの工作室に置いてありますわ」


 おおおおっ!!


 俺は興奮しカブは動揺し、そのまま一斉に質問を投げた。


「そ、それ、排気量何ccだ!?」

「あの……自動遠心クラッチは付いてませんよね!?」

「確認するけどガソリンエンジンだよな!?」

FIフューエルインジェクション車じゃないですよね!?キャブ車ですよね!?」

「2ストか!?4ストか!?」

「ね、燃費は僕より良くないですよね!?」


「もー、二人とも落ち着いて!マリーが困ってるでしょー?」


 横からターニャにたしなめられる俺とカブだった。ああ、すまんすまん。


「ぶふふふふっ、あははははっ!」


 エルドがそんな俺達を見て無邪気に笑っているがコイツは何にでも笑うやつである。



「コホン、では実物をお見せしますね。こちらですわ」


「おう!ありがとなマリー。楽しみだぜ」

「も、もも、もし僕より燃費良かったりしたら僕は蒸発するかも知れません!!アイデンティティの喪失そうしつです!!」

「相変わらず面倒くせえバイクだなお前」


 まあ俺もこのスズッキーニで開発されたガソリン車を何回か見たが、まだまだ燃費はカブのリッター70kmに到底及ばないと思う。


 そもそも物資を安定して大量に輸送できる四輪車の方が需要があったせいで、二輪車の開発は後回しになっていたらしいしな。



 そして俺達はワクワクしながら館の作業スペースへ通された。

 そこで目に飛び込んできたのは、端的に言うと()()()()()()()だった!!


 うおおおお何じゃこりゃあ!?


「デ、デカい!?たしかにレッグシールドだけはカブっぽいけど……エンジンやギヤボックスはめちゃくちゃでけえぞ!?」


「ふええええ……!なんか僕をモデルにしてるのは分かりますけど、これはもうハーレーです!!」


 ターニャやエルドもその巨大カブの周りを回りながら不思議そうに眺めていた。


「マリー、このバイクって名前はあるか?」

「ギガーブという名前だそうですよ」


 なんかめちゃくちゃ強そうな名前だ。


 そのギガーブとカブを交互に見て、ターニャが感想を述べる。


「なんか、カブを作ろうとして別のバイクができたみたいな感じがする……」

「お姉、これ乗れるー?」

「無理。こんなデカいのでコケたら死ぬわ」

「お父は乗れる!?」

「まあ、一応乗ることはできると思うけどよ……立ちゴケしたら俺でも起こせるか自信ねーぞ」



 そう言いつつハンドルを持ってマリーを見ると、マリーはどうぞどうぞという手振りで俺に乗車を促してくれた。


 俺はコクリと頷いてギガーブに跨った。

 一応バイク好きとしてはタイヤが二つある乗り物には何でも乗ってみたいんだよな。



 えーっと、まずエンジンを始動させるには……コレか!?


 ――カチャ。


 カブの鍵に似た部品を回すが、メーターもヘッドライトも、もちろんウインカーも一切なく、キーがONになっているかどうかすら自信が持てない。


 よく見ると車体の右横にはクランクシャフトに繋がるキックペダルのようなものが生えている。な、なるほど……やっぱりキック式か。


 俺はいつものカブのときと同じようにキックペダルを踏み抜いた――つもりだったが押し返されてしまった!やべえ、めちゃくちゃ重いぞコレ!?


 しかしめげずに再チャレンジする俺。

 今度は膝を真っ直ぐ伸ばし、全身の体重を乗せるように一気にキックペダルを踏み込む!



 ――パッパタパタッ、パタタタタタッ、ダララララーッ。



 おお!なんとかエンジンがかかったぞ!


「おー!凄い、音がカブ全然違うね!?」


 ターニャも口をぽっかりと開けて驚いている。


「うぇーーい、でっかいカブ!でっかいカブ!」


 エルドがギガーブの周りを楽しそうに飛び跳ねながらはしゃぎ回る。落ち着け。


 アクセルはカブと同じく右ハンドルをひねる仕様のようだ。よし、じゃあ発進!



 ――ダララララララララー……。


 うおっ!?


 俺がまずビックリしたのがその力強さだった。

 見た目に比例して相当な重量なハズだが、少しアクセル開けるだけでグイグイと前進していく!このギガーブ、低速トルクは凄えぞ!?


 そのまましばらく同じ所をグルグルと周っていると、ふと気付いた。

 煙がほとんど出ないのだ。


 この世界の車の特徴として、アホみたいに白煙や黒煙を撒き散らすというのがあったのだが、このギガーブは違う。

 きっとカブを参考にしてマフラーに良い触媒を使ってるに違いない。やるな!


 あとハンドリングも車体のデカさの割に軽やかだ。へえー。


 こうやって乗ってみて、俺はギガーブ良いんじゃね?と思ってしまった。



 一旦マリー達のいる所へ戻ると、何やらカブが焦っていた。なんだなんだ?


「あ!カイトさん。聞いてください!今マリーさんに聞いたんですけど、そのギガーブ、今度の貿易輸送に使われるみたいなんです!!」


「え!?お、おお、そうなのか……でも俺達はカブとか他のバイクがあるぞ?使われるって??」


 するとマリーがこんな話をしてきた。



「カイトさん、実は以前からあった輸送団が復活するそうなんです。彼らが貿易輸送も担うんですって」


 え……じゃ、じゃあ俺達は!?

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