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500/519

500 驚愕の事実!!


 俺は犯人が空腹と疲労により判断能力が低下していると判断し質問をしていった。


「まずお前、なんで俺の家にいるんだ?」

「食い物を盗みにきた……」

「そうか、やはり向こうの飯はマズいか?」


 すると驚きの答えが返ってくる!


「……日本の飯がいい」



 は?



 俺は耳を疑った。()()だと?聞き間違いじゃないよな!?

 なんでドゥカテーの魔術師が日本のことを知ってるんだ?――いや、まさか!?


「え、お、お前ってもしかしてに、日本人!?なんでこんなところに……??」



 俺は頭が混乱した。

 当たり前だが、自分でこんな奴を日本から輸入した覚えはない。

 カブが勝手に日本から連れて来ることも……まずあり得ないよな?


 俺の隣にいるカブをチラ見すると、カブはタブレットに顔を横にブンブン振ったイラストを表示させた。


「いやいやいや、僕知りませんよー!?」



 再び男の方を向いて聞いてみる。


「お前……日本からどうやってここに来たんだ?前後の経緯を詳しく話せばこのデカいおにぎりをやるぞ」


 ラップに包んだおにぎりを見せると、男は悔しそうに歯を食いしばりながら話を始めた。



「……この家は前から目を付けていたんだ。事前調査で無人の家だと判断していたからな。で、一月ほど前に裏口から盗みに入った瞬間、この変な世界にワープした……家ごとな」


 な、なんちゅうタイミングで泥棒に入りやがるんだコイツは……!

 一月前というと、日本でベージュとブルーのカブを買ってこちらに帰ってマリーの家に行ったときか!?


 それから男は空腹に耐えられなかったのか、ベラベラと話しだした。


「そのときは一旦家の中に隠れてやり過ごし、お前らが出て行ったのを見計らって家の外に出たら、こんな所に転移してたんだ。意味わかんねえ……で、近くにデカい光る木があったから触ったらまたおかしな異世界に飛ばされた……」


 俺は男の衰弱しきった様子からして、話を捏造するような余裕もなさそうに見えた。それに辻褄も合う。つまりコイツは本物の日本の泥棒だということだ!


 俺は犯人に宣告した。


「おいお前。言っとくが日本には返せないぞ!?」


 犯人はニヤァと笑い、吐き捨てるように言った。


「誰が戻るか!ヤクザやら警察に追われてる世界なんぞに。俺は魔法の使えるあっちの世界で王になる」


 何言ってんだコイツ!?


「いや、お前の夢は叶わん。王様に引き渡す!」


 少し挑発すると、男は険しい顔で俺を睨んだ。

 人を刺しといて罪の意識も全く感じられない、こんな危険な奴をすぐに解放してやるほどお人好しじゃねえぞ俺は!


「飯を……よこせ」


 そういやそういう話だったな。


「まあ、約束は約束だ。食え」


 再び投げ入れた塩おにぎりを男はガツガツと貪り食っていた。



 俺は一旦穴から離れ、奴に聞かれないようにカブに問い詰めた。


「お前!転移するときあいつが家の中にいるのに気付かなかったのか!?」

「いやー、すいませんカイトさん。もう日本転移も10回を超えちゃって僕、油断と慢心の塊でしたね!はっはっは」


 ぐぐ……少し文句を言いたくなったが、よく考えたら犯人に気付かなかったのは俺も一緒だ。

 っつーか普通、泥棒が家にいるなんて思わねーもんなぁ。



「……おじ、犯人……どうなったー?」


 ターニャが目をこすりながら起きてきた。


「おはようターニャ。奴は今取り調べ中だ、あ!そうそう、セシルが怖がってるかもしれないから……ターニャお前、犯人は弱りきってるから安心だってセシルに言ってやってくれ」


「うぃー…………」


 寝ぼけながら敬礼のポーズをとるターニャだったが、やがてパタパタとセシルとエルドの寝ている居間に戻っていった。



「カイトさん。犯人の正体も目的も分かりましたけど、これからどうします?」


 真剣なトーンでカブが聞いてきたが、俺はもう決めてある。


「さっき言った通り、ドゥカテーの王様に引き渡すよ。だが、最後に()()()()をやるつもりだ」

「チャンス!?」

「ああ」


 俺は膝を叩いて立ち上がり、台所へと向かった。


「よしっ!朝飯を作るぞ。久々に和食だ!!」



 その朝はご飯に味噌汁、そして焼き魚に納豆と出汁だし巻きというメニューだった。


 これはあの犯人の希望を聞いてそういう内容にしたのだ。分量は多く、余りが大量に出るようにしてある。



 その後、皆で飯を食い終わってから、俺は朝食の残りをタッパーに詰めていた。奴への最後の施しだ。


「そ、それは彼に……?」


 聞いてきたのはセシルだ。その表情が強張っているのを見て俺は笑ってこう返した。


「心配すんな。今から奴を向こうの世界へ連行して、二度とこちらには来させなくするからよ。もうじきガスパル達も来るハズだ」



 ――ドコドコドコドコ、パルルルルッ。


 噂をすればだ。

 セシルの前で荒事を起こしたくないので、セシルには先に仕事に出てもらった。



「おっす、うげっ!?」


 そのセシルと入れ違うように家の前までやって来たガスパル達の顔を見て俺は恐怖した。


「……カイトォ、久しぶりに俺、人殺すかもしれねーわ。そこにいるンだろ?」


 まるで親の仇でも見つけたかのようだ。


「まあ、腕の一本くらいは、軽くね……」


 ミルコ、お前もか。


 ターニャはそんなガスパル達の雰囲気にただならぬものを感じたのか、興奮してキョロキョロと辺りを見回している。


「たたかい!たたかい!!」



 いやお前らちょっと落ち着け!


「い、言っとくけどお前らの仕事は犯人を痛めつけることじゃなくて、逃げないように見張ることだからな!?」


 するとガスパルとミルコはいつもの顔に戻った。


「分かってるっすよ!」

「演技に決まってんだろカイトォ!?」


 ホントか?



 その後、武器を持ったミルコとガスパルが上から奴を見下ろす中、俺は慎重にハシゴを下ろした。


 奴はガスパルやミルコがいることに警戒するかと思ったが、お構いなしでハシゴに手を掛けて登ってくる!

 もはや空腹と衰弱で判断力を失っているようだ。



 俺達はまず登ってきた犯人を取り押さえロープでぐるぐる巻きにした。

 奴に対抗する気力は残されていないようだ。

 そして、世界樹が光るのをしはらく待つと――!


 世界樹の穴がポワッと光り出す……。



 さて、断罪の時間だ!

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