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497 罠を用意するぞ!


 そうだ!家の中整理しとかねーとな。


 一旦家に入って、俺は思い出した。


 なにせ家ン中は強盗に荒らされたままだ……うわっ、俺の血の跡もしっかり廊下に残ってやがる!セシル達が見たら絶対怖がるよな、拭いとこう。



 そして血痕を拭き終わり台所の片付けもなんとか済ませ、他に荒らされたところはないかとあちこち探し回ったところ強盗の仕業だと思われる箇所をいくつか発見した。


 まず包丁が何本かなくなっていて、倉庫の中の鉈やノコギリといった工具類もなくなっている!

 カブによれば、俺を刺したとき犯人は手ぶらだったらしいから、奴は俺達が帰ってくる前にそれらを世界樹の穴に投げ入れてドゥカテーに運んでいたんだろう。


 そして一番謎なのはこれだ。


 俺が机の引き出しに隠しておいた現金100万円がなくなっていたのだ!強盗なら金を奪って当たり前のように感じるだろうが、日本円なんてスズッキーニでもドゥカテーでも使えないぞ!?

 とりあえずお金っぽいものがあったから盗んだのかもしれないが、なんか引っかかるな……。


 大金を盗まれたにもかかわらず、セシルやターニャ達には危険が及ばなかったことに俺はあらためてホッとするのだった。




「ええーっ!!カ、カイトさん……100万円のへそくり盗まれたんですか!?犯人を八つ裂きにしてお金を奪い返しましょう!!」


 なんかカブが物騒だ!?


「なんだお前、俺より犯人に怒ってるじゃねーか!?」

「そりゃあそうでしょう!だってお金は天下の回りものですよ!?カイトさんを刺した上に100万円も盗むなんて……もはや万死に値します!!」


 まあ言われてみればそうだ。しかしこの世界じゃきんのインゴットが簡単に手に入り、それを日本で売ったら毎月2~300万円は手に入るわけだ……というか実際そうしてきた(税務署になんか言われるかもしれんが)。

 そんなわけで、俺の中でお金に対する価値感はかなり下がっている。


 まあ過ぎたことはしゃーない。気を取り直して荒らされた現場を整理するか。




 それから一旦バンと別れ、俺はカブで本部へと向かった。

 クソデカ落とし穴を掘るために人を集める必要があるのだ。


 あ、ついでに刺されたことも話しとこ。話のネタになるだろ。ふふ。



 本部に着いた俺は、早速それまでの経緯を話した。


「な、なにーーっ!マジか!?」

「刺されたんすかカイトさん!?」



 ミルコとガスパルの二人はやはり驚いていた。俺は調子に乗って背中を見せた。


「ほら、これがその傷跡だ!ムロッチ食ってドゥカテー行ったらほとんど痛みもなくなっちまったけどな。ひどい話だぜまったく……」


「うわっ!マジだ……クソがっ許せねえ、ぜってー犯人見つけてぶっ潰してやんぜ!!」

「マジで許せないっすわ。カイトさんになんてことを……」


 二人とも予想外にブチギレていて俺は少し引いた。逆に俺本人は自分でも不思議なくらい怒りが湧いてこないのだが。


「……」


 一方レジーナは俺の傷跡を見て血の気が引いたような顔を見せている。

 そうか、コイツ体の傷とかにトラウマがあるんだったな。すまん。


「ねえカイトさん。ムロッチって病気だけじゃなくて傷にも効くんだね」


 マイペースなメッシュが興味深そうな顔で聞いてきた。


「そうだな。痛みは完全に中和できなかったけどよ。ありゃあ万能薬だわ!はっはっは」



 すると、さっきまで黙っていたレジーナが口を開いた。


「で、でもどうすんのよカイト。その犯人また来るかもよ?」


 俺はニヤリとした。


「ふふふ、だから今からその対策をしようと思ってここに来たんだ」

「対策って?」


 俺は得意気な顔で拳を前に突き出して宣言した。


「超原始的な罠を仕掛ける!その名も落とし穴だ!!」


「えっ!?」

「……ぷっ」


 なんか皆キョトンとしたような顔だな……シャロンにいたっては含み笑いまでしてやがる。そんなおかしいか?


「カ、カイトさん。なんか子供の遊びみたいじゃないですか……?」


 かーっ、分かってねーなお前。

 俺は首をフルフルと横に振って説明を加えた。


「これから作るのは()()()落とし穴だぞ?」


「おー、なんか面白そっすね」

「たしかに!」

「ど、どんなの?カイトさん??」



 ミルコ、ガスパル、メッシュの三人は目を輝かせて俺に迫ってきた。

 やっぱり乗ってきてくれたか。予想通りだ。


「なによ、皆行くなら私も行ってあげてもいいけど?」


 口の減らない奴だなレジーナ。でもありがとよ。


「えー、一人で残るのとかヤダ!私もお手伝いしまーす♪」


 シャロンも手を上げた。結局全員来るんじゃねーか!?来い来い。



 ……というわけで、皆を引き連れて家の前まで戻り、ホームセンターでまとめて買ったスコップを各自に渡した。


「皆、あの地獄のCBトンネルを思い出すんだ!アレに比べりゃ今回の落とし穴なんて屁でもねえ」


「うおーー!」



 夕方ごろから巨大な穴を掘り始めた俺達は、徐々に広がっていく穴を見つめてはテンションが上がってきた。


 やり方はこうだ。一辺が2メートルの『()』の字にある4つの正方形のスペースに4人を配置して、それぞれの担当場所を掘っていく。疲れたらその担当スペースを誰かと交代する。


 最初は4つの穴だったのが、深く掘っていくにつれて自然と隣のスペースとの境が崩れてなくなり、最終的に1つの大きな穴になっていく。


 ――ドゥルルルル……。


「皆さん!頑張って下さーい!!」


 カブもヘッドライトと補助灯の灯りで周囲を照らしてくれている。


 そうやって皆で掘ったおかげで一辺が2メートルの正方形、深さ1メートルぐらいの堀ができ上がった。

 まだ深さが全然足りないけど今日はこんなもんでいいか。


「なんかいい感じっすね」

「いやー、結構久しぶりじゃね?こんなに体使ったの」


 ミルコとガスパルが満足気にそんな話をしている横で、地面にへたり込むシャロンとメッシュ、そしてレジーナだった。


「あ、あんたらバケモン過ぎでしょ!どんだけ体力あんのよ!?」


「ふふっ、レジーナよ、楽しくなるのはこっからだぞ?明日からは人が簡単に這い上がって来れないぐらいの深さになる。そうそう、ハシゴを用意しないとな。ふふ」



 ――ドゥルルルルー、ドゥルルルルー。


 などと明日の予定を話していたらセシル達が帰ってきた。もうそんな時間か!



「ターニャ、セシル!おかえりー」


 出迎える俺を見つけて真っ先にターニャが駆けつけてくる。


「おじ!ただいま!」


 そんなターニャを正面から抱き上げると、たしかに背が前より伸びて体重も重くなっていた。しっかり成長してるな、嬉しいぞ。


「ただいまカイト……え!?この穴何??」


 おっと、セシル達にも話しとかねーとな。



 ……。



 全て話を終えると、エルドを抱えたままのセシルは心配そうな目で俺を見つめ、ターニャはというと――。



「犯人しばくーー!!許さん!!」



 お前もその反応かい……。

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