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㉕ 昼飯作るぞ!


 俺はちょっと考えたが中途半端に修繕するよりはしっかり直し切った方がいいと思った。


「スコップやら道具が足りんな。この道を何とかするのは次に家から出発した時にしよう」


「そうですね」


 カブも納得している。


「帰るのー?」


 とターニャ。俺は「おう」と一言だけ答えた。


 この世界は多分、厳密な法整備やらが行き届いてないと思うので、ある程度自由に山の中の道を作り変えても文句は言われないだろう。

 そもそも誰もこんな所に入って来ないだろうしどんな手を加えたかも知られないハズだ。


「よし、帰るぞ。我が家に!」

「わがやー。家ー」

「はい、じゃあ行きましょうか。もうこんなスリップするような坂はなかったハズなので楽勝です!」



 トゥルルルルン、ガタッガタッ……。


 そんな感じで何とか山道を走り抜け我が家までたどり着くことが出来た。

 あの広い道からこの家までの荒道は3〜400メートルぐらいしかないハズだが、通るのに20分ぐらいかかっちまってる。


「インフラを整えるってのはどこの世界でも必須だな」


 俺はここでの暮らしに必要なリストをメモに書いていたのだが、「道路整備」という新たな項目が追加された。



 ――さて、家に帰ってからも忙しさは続く。


 まずやる事はこの後ろに積んできた蒸留前の軽油をガソリンと軽油に分ける事だ。

 そして、その間に自分とターニャの昼飯を作る。

 よし、早速やるぞ。


「しっこー!!」


 ターニャは玄関を開けるとまずトイレへと駆け込んでいった。

 えらいぞ、ちゃんと場所覚えてたな!


 一方俺の方はカブから後ろの荷車を切り離し、カブを玄関に持ち込み蒸留装置をセットした。

 蒸留に関しては一度一通り出来ていたので手際よくセッティングが出来た。


 カチッ……。


 玄関に置いておいたカセットコンロに火をつける、あ……そうだ。このカセットコンロのボンベも全部で6本しかないんだ。

 コレに関してはこの世界のどこにも確実に売ってない。いずれは台所のコンロを使わないとな……いや、でもカブの話じゃ月一で日本に戻れるんだよな?


「おいカブ?」

「はい、何でしょう?」


「お前、月一回は日本に戻れるって言ってたよな?」

「はい!戻れますよ」

「それは24時間だけってことか?」


「そうです。なのでカイトさん、……えっとー、次に戻れる日本時刻の11月9日の予定はしっかり決めといた方が良いですよ!」


 言われるまでもない。

 ここで俺は真剣に日本に戻った時のことを考え、カブに聞こえるように声に出してみた。


「あったりめーよ。電気、ガス、水道、携帯代は全てクレジット引き落としだ。そして銀行残高には余裕があるから止められる心配はない。それより買うものがいっぱいあるんだ。さっき言ったガスボンベもそうだし、お前のオイル交換用のオイルも必要だし……!?いや……、そもそも俺一月後に日本ではどういう扱いになってるんだ!?会社は1月丸々無断欠勤だし、社員の誰かがウチの家を尋ねて来たりして行方不明届やらが出てるかも知れん……いや、っていうかもしかしたら大騒ぎになってるかも!?……あーなんか考えんの面倒くさくなってきた。後で考えよう」


 長考に沈んでいた俺が顔を上げ、タブレットを覗くと。そこには俺より大分早く思考を放棄したような顔があった。

 なんだその「ZZZ」とかいうのは!?コイツふざけてんな。


「おい!」

 バシッ。俺はカブのシートを軽く叩いた。


「は、はい?」

「お前、自分は生き物じゃないから眠らないんじゃなかったのか?」

「え!?……いやー、ハハ……。僕、カブとかバイクの事は結構知ってるんですが、日本の社会については詳しくないもんですから……ハハッ……」

「勝手に俺を転移させた割に呑気なやっちゃな!全く……」

「す、すいません。力になれなくて」


 ><みたいな顔で謝ってくるカブだったが別に俺はそんなに怒ってはいない。


「別にいいんだ、お前が良い奴なのは知ってるからよ。それより早くガソリンと軽油作るぞ」

「はい!」



 そして蒸留装置の設置が完了した。やはりガソリンは少しずつタンクへと滴り落ちている。いい感じだ、これはこのまましばらく放置だな。

 よし、次は昼飯の用意をしよう。



 ――「ターニャー。飯作るぞー」


 俺が台所でそう呼びかけると、ターニャは大喜びで飛んできた!


「なにつくるー?」

「今日はな、このサバーって魚を焼いて食うぞ。サバーの塩焼きだ!」

「サバーのしおやき?うまい?」

「うめえぞー」

「ういーー!」

 ターニャはその場で飛び跳ねて喜びを表現している。微笑ましいもんだぜ。


 俺は冷蔵庫からまるで鯖みたいなサバーという魚と大根を取り出した。



 よし、大根下ろしをターニャに作らせてみよう!


「ターニャよ。ちょっとお前にスキルを身につけさせてやる」

「すきるー?何?」

「大根下ろしだ。ほれ!」


 俺は大根を丸々一本ターニャに手渡した。

 するとターニャはその感触を確かめ、匂いを嗅ぎ始めた。そして俺に笑顔を見せてきた。


「うん!」


 何がうん!なんだ?まあいいや。


「ほら、包丁だ。昨日もフランスパン輪切りにした時に使っただろ?」

「うん」

「今回はアレにちょっと似てるけど大分難しいぞ!出来るか?」


「やるー」


 目を輝かせてやる気満々なターニャだった。


 俺はちょっと怖くもあったが、こういうのは小さい時からやらせといた方が良いと思った。

 何より本人がやる気に満ちている。こういう時にやらせるのが一番だ!……多分。


 シャコッ、シャコッ!


「え!?」


「これでいい?」


 ターニャは俺が何も説明せずとも大根おろし用サイズの大根を切り分けた!

 正直びっくりした。


「……お、おう。やるじゃねーか。でも難しいのはここからで、外の皮を剥いていくのが大変――」


 シャリッ、シャリッ、シャリッ……。


 と思ってたらターニャは涼しい顔して大根の皮をスルスルと剥いていく!ええ!?


「はい、できたー!」


 やや凸凹は目立つが、その大根はすり下ろす前の大根としては申し分ないレベルだった……!


「マ、マジか!?……スゲエじゃねえかターニャよ。もしかして料理作るの初めてじゃないのか?」

「うん」

「じゃ、じゃあ俺に会う前もちゃんと飯食えてたんじゃねえのか?」


 その質問をするとターニャの表情に曇りが出てきた。


「ご飯つくれって言われて手伝った。でもターニャが食べるのはいつも何かの葉っぱみたいなやつ。草。おいしくない草!」


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