205 宴会と温泉
――ゴクッゴクッゴクッ……。
「プハーッ」
ビールはやっぱり最初の一飲みが至高だな!
そんな感想を抱き周りを見てみる。
――ゴクッゴクッゴクッゴクッ……。
「ぷはーっ!」
「ふぅーっ……」
ビールが一瞬でなくなったのはガスパルと……意外にもイングリッドだった。
「うおっ、早えな二人共!ビールもう2〜3本持ってくるわ」
イングリッドはいつもと全く変わらない笑顔で「カイトさん、お気遣いなくー」と返してきた。飲み慣れてるような印象を受けるな。
方やガスパルは普段あまり見ないような薄ら笑いを浮かべて壁にもたれ掛かっていた。
ミルコも一杯の半分しか飲んでいないようだが、なんとなく気持ち良さそうに見える。
俺はちょっと心配になった。
「な、なあ。この中に酒で暴れる奴とかいねーよな?」
一応聞いとこう。
ミルコが笑いながら答えた。
「あ、俺は大丈夫っす!あんまり飲まないんで……てか雰囲気で酔えるんで。はははっ」
「ミルコがおかしくなったら私が取り押さえます!」
隣のイングリッドがミルコの肩を押さえて力強い笑顔で宣言してくれた。
「そ、そうか」
やっぱり一番心配なのはガスパル、お前だ。
「……うおーカイトー!なんか俺、酒なんかひっさしぶりだからよー。なんかもうすでに気持ちいいわー……ぎゃはは」
はやっ!
そう言いながらガスパルはまたビールをつごうとした。
「へーい、ガスパルさん。それもう空っしょ?こっちでいきましょーはいはい」
ミルコがイングリッドの持ってきてくれた酒をつぎ、そしてまたクイっと一気に半分くらい飲んでしまった。
「ふはーっ!これもうめえー!おいターニャ、ケイ、お前らも飲め飲めー!」
4歳と10歳に酒を勧めるな。
「いらん!ぜったい!」
「バッカじゃん。そんなん飲めるわけないしー。それよりこのオレンジジュースが最高よ!」
当然のように二人に断られたガスパルはしょんぼりして再びクイッと残った酒を飲み干し、ミルコに笑われていた。
そしてイングリッドは普段話さないケイに異世界の話を興味深く聞いたりしていた。
俺はこの時やっとセシルがこの場にいないことに気付いた。
あ、飯作ってくれてんのか!俺も行こう。
「ちょっとチャーハン作ってくるわ」
俺がそう言うとターニャとケイが色めきだった。
「チャーハン!?おじさん、早く食べたーい!」
「ターニャもほしいー!!たべたーい!」
「まあ待っとけ。人数多いけどサッと作ってやる」
「ういーーーー!!」
「イェーーイ!!」
ターニャとケイは手を合わせて喜んだ。
さて、台所行くか。
台所ではセシルがサラダを山盛りにしたものと、ピザをレンジで作ってくれていた。
「カイト、この電子レンジって便利だよね。」
「だろ?ありがとうなセシル」
――チーン!
早速ピザが焼けたらしい。セシルはすぐに焼きたてを運んでいった。
「うおおおお!ピザだぁぁぁ!!」
「うぇーーい!!」
「いただきまーす!……うはっ、チーズが美味いっ!」
「ビヨーン♪」
「……ホント!美味しいですっ。マルゲリータですよねセシルさん?」
「うん、時間がなくて即席のものだけどね。もう2~3枚焼きたいねー」
「ふはっ、うめえーー!」
皆がそれぞれの感想を漏らし、場は一層盛り上がっていた。
よし、じゃあ俺も作るかー!
――ジャアアアア……。カンッカンッ、ジュワーーーー、カンカンッ。
それから10分程経って、大きな中華鍋にどっさりと熱々のチャーハンが出来上がった。
「よっしゃ、出来たぜ!待ってろよー」
俺はチャーハンが冷めないよう、お玉と皿と一緒に中華鍋ごと運んでテーブルに置いた。
「ほいよ、お待たせ。各自皿に盛ってくれ。一応全員分作ってある」
中華鍋からはフワーッと湯気が立ち上り、辺りにニンニクや調味料や炒められた卵の香ばしい匂いが立ち込めている。
「きたーーーー!!おじさん待ってましたーー!!」
「ういーーい!!チャーハンチャーハン!!」
「な、なんじゃこの飯!?めっちゃいい匂いじゃねーか!」
「チャーハンっていうんですか!?わー!美味しそう……」
ターニャとケイが真っ先に皿に盛って即口に運んでいた。はやっ。
「おっほー、マジ美味そう!……ハフッ……おおおおおぉぉぉ!!??」
「カイトさん!いただきます!!」
「私もいただきまーす!」
――モグ、モグ……フハッ、モグッ……。
皆しばらく言葉少なになって、皆の皿からきれいにチャーハンがなくなるまで4~5分とかからなかった。良かった好評だな!
「こ、ここ……こんな美味え飯食ったの初めてだ!や、やばい!?」
ガスパルは口をモグモグさせながら大げさな表情で旨さを表現している。
「ふはー……」
「はー……」
一気にチャーハンをかっこんだケイとターニャは、二人揃って並んでしばらく上を見上げて恍惚とした表情を浮かべていた。
「いやー、カイトさん……」
ん、どうしたミルコ?
「正直お金払ってでも、もっと食いたいっす……」
「いやー、それはちょっと……」
さらにイングリッドも畳み掛ける。
「カイトさん、ウチの実家でもこんな旨味は出せないです……お店出せるんじゃないですか?」
「んんー、そういうのは考えてねえわ。すまんな」
忙しいしそんな暇はないというのもあるが、俺はまず目立ちたくないし接客ってのも基本苦手なんだ。
次にチャーハンを食べ終えたセシルが満足そうに話してきた。
「ごちそうさまカイト。おいしかった~」
「おう。お!2枚目のピザもそろそろ焼けそうだ」
そんな感じで皆飲み食いして騒いだ後、それぞれ色んな話で盛り上がったり子供の相手をしたりしていた。
いつの間にかターニャとケイが皆の前で踊りを踊っている……。
「つよ~い力で悪を打つ~♪イェイイェイ」
「イェイイェイ♫」
「ぎゃははは!ターニャ、ケイ、いいぞ~お前ら。ギャラやるぞ!!」
「正月の親戚か!?無理すんなガスパル。……ってかそれ俺の借金だろーがおい!?」
「へへー、どーもー!ケイ&ターニャでした~♪」
「ありがと~ガスパル~♫」
「はははっ俺も魔法使いになろうかなー」
「やめてミルコ。あははっ」
などと盛り上がり、それからちょっと酔いが冷めた頃、皆で温泉に行った。
――ドゥルルルーン!
「うわっ。カイトさん絶対それ飲酒運転じゃないですかー!違反点数25点で免許取り消しでーす!!」
「異世界無罪だ!道が真っ暗だからお前のヘッドライトと補助灯が頼りなんだ!明日メンテしてやるから行くぞカブ!」
「ううー、しょうがないですねー」
カブは渋々灯りの役目をこなした。
温泉にたどり着き、男連中とガキんちょ二人は即全裸になり湯に飛び込んだ!
――サッパーン。
「うひょー!温泉最高だぜ!!」
「きゃはははっ」
「あー気持ちいいー……」
意外なことにセシルとイングリッドも、酒が入ってたせいか温泉の湯気が多いせいか、普通にお湯溜まりに入ってきた。
気付くと俺はセシルと並んで、ミルコはイングリッドと並んで、ゆったりとしている。
一方ガスパルは……。
「ガスパル、おちんちん。おじより小さい!!」
「わぁ……」
「お、おいコラ。てめーら見るな!こ、これは大事なもんなんだぞ!?」
ケイとターニャにからかわれていて俺は笑った。




