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202/521

202 もう少しだ!


 そうそう、ケイに魔法を使って貰う前にちょっとカブとターニャに頼み事をしておこう。


「ケイ、ちょっと待っててくれ」



 俺はカブとターニャに日本で買ってきた20リットルタンク2つに水を溜めて、ここに運んできて貰うよう頼んだ。


「ターニャ、タンクはカブの荷車にのせたままホースを伸ばして水を入れてくれな。先に水を入れると重くてお前じゃ持てないだろうし」

「うん!分かったー」

「了解ですカイトさん!!」



 ――ドゥルルルルン!


 カブはターニャを荷車に乗せて家に向かって走り出した。


「頼むぜ」


 お次はケイだ。

 俺はケイに木の実を渡すと、ケイはサッとそれを口に含んだ。


 ――コオオオ……。

 ケイ体の周りにオーラのようなものが出てきた。ヒュー、かっこいい。


 ゴボッ!!ゴボゴボボッ……!


 ケイの魔法により最初に俺が指定した地面が耕されていく。うほほ、すげー。




 しばらくすると深さ3メートル程の穴が掘られ、その横には高さ2メートルぐらいの山が出来上がった。


「よーし、ケイ。その大穴の横にこの社宅の内側の壁際まで穴を開けてくれ。頼むな!」

「分かった」


 ――ゴボゴボボッ……。


 俺が社宅の中で待ち構えていると、液体が沸騰するように地面がボコボコとうなり、やがて最初の大穴と繋がった。


「ガスパル!配管くれ!」


 俺が言い終わる前にガスパルはダッシュで配管を持ってきてくれた。助かるわ。


「ほいよ。これぐらいの太さで良いか?」

「十分だ!今日からここが便所になるぞガスパル」

「うおお……すげえ。これでどこで用を足すか迷わなくて済むぜ!」


 俺とガスパルはその横穴に配管を差し込んでいく……。

 そして……やがてその先端が最初に掘った大穴に到達した。



「よーし!次は台所の排水管を繋げるぞ!!」


 俺は急いでまた外に出てケイに指示をした。


「ケイ!今度は台所に向かって……こっちだ。こっちに穴を掘ってくれ!」

「……うん」


 魔法に集中しているのかケイは口数がいつもより少ないが、確実に実行してくれる。



 ――ゴボゴボボッ……。


 さっきと同じように大穴から横穴を掘って配管を入れ込む。……これでよし!


「ちょっと試してみよう!ガスパル、外でちゃんと水が大穴に流れるか見ててくれ」

「おう!」


 俺は持っていた500ml1のペットボトルの水を配管に半分ぐらい流してみた。



 ……。



 ――ジャバババッ!


 しっかり水の流れ落ちる音が聞こえてくる!


「うおおーーっ!!やったなカイト!!」

「おうっ!よーし、これで地下の配管工事は完了だぜ」


 おっと、ケイに早く指示を送らねば。


 俺は素早く外に出てケイに次の指示を出した。


「ケイ、今度は残土ざんどの山の上にこのタンクを固定してくれ!あ、配管を通す部分は避けてくれると助かる」

「了解」


 ――ズズズッ。


「おおおーっ!」


 山の上に置かれたタンクの下から土が伸びていき、徐々に土はその状態を変化させ……そして最終的に()へと変化した。

 これでタンクはガッチリと山頂に固定されたわけだ!


「よーしオッケーオッケー。じゃあ最期にケイ、タンクから山の斜傾に沿ってこの配管を伸ばすからこれもタンクみたいに固定してくれ。台所方面とトイレ方面にそれぞれ二本伸ばすから」


 ケイは顔に少し疲れが出始めているようだった。すまん、もうちょっとだ!頑張ってくれ!


「おじさん、これで……終わり?」

「ああ!終了だ」

 ここでやっとケイは笑顔を見せた。


「あとちょっとね。オッケー……やるわ!」


 ズズズッ!


 山の斜面の土が配管を飲み込むように包んでいく。そしてそれが台所とトイレまで到達した!配管を通すための壁穴もしっかり開けてくれた。最高だ!



「よーーし!!ケイ、お疲れさんだったわ、休め休め!!」


 俺がケイをねぎらうように近寄っていくと、ケイは俺の方に倒れ込んできた。


「も、もうフラフラだよ~……しぬぅ~」

「おっとと!」


 俺はケイを背中で受け止めると、そのままおんぶして社宅の中へ運んでいった。


「おうおうなんだお前、やっぱりぶっ倒れてるじゃねーかよ!はっはっはー」


 ガスパルはケイの背中をバシバシ叩いて励まし(?)ているが、ケイは「おぼえてろよー」と言うような顔をしていることだろう。


「サンキュー、ケイ。ゆっくりしとけ」

「……う、うん。やっぱり……こっちの世界じゃ上手く魔法使えない……ね」

「上出来だぜケイ!このベッド、俺が寝心地マックスに改良してあっからよ、しっかり寝ろよ!!」


 ケイは横たわりながら、ガスパルの改良したわらぶきベッドの感触を確かめ、「い、いいじゃん……」と呟き薄く笑った。



 ――ドゥルルルルン!!キキーッ。


 ちょうどその時カブとターニャが帰ってきた。いいタイミングだぜ。


「カイトさん!お待たせしました!」

「お水()んできたよー。おじー!」

「よっしゃナイス!」


 俺は早速カブの荷車に載せられた20リットルタンクを社宅内へ運んだ。


「な、なあカイト。こっからはどうすんだ?」

 ここでガスパルが質問してきた。


「ふふふ、まず台所にはこの蛇口付きポリタンクを置いて、ペットボトルでろ過装置を作って外からの配管との間に挟む。これでいつでも飲み水が出てくるわけだ。凄えだろ!」


「うおおおおっ!やべえええ。これでいつでも水飲み放題だぜーーっ!!」


 ガスパルは感動のあまり、背中をエビのように反って大げさなガッツポーズで歓喜していた。コイツはある意味ここの主だから、そりゃ嬉しいわな。


 もちろん便所の方にももう一つのタンクを設置する。そうすれば水洗便所の完成だ!こっちにはろ過装置など必要なく雨水をそのまま利用するだけでいい。


 そして便器はこれだ。配管の一番径のデカいものを真っ二つに割ったものを使用する。

 このラッセンという中空の木は撥水はっすい性抜群で汚物がくっつかず、しかも長持ちするらしい。便器の素材としては最適だな!

 あ、あとトイレットペーパーもちゃんと置いとこう。



 後は……()()だけだな。


 俺が外に出るとターニャがさっき作った山の上で、貯水タンクを眺めていた。


「おじ、これに雨とかのお水ためるんでしょー?」

「ははは、分かってるじゃねーか。まあ今はターニャ達が俺の家から持ってきてくれた水道水を入れるつもりだけど、そのうち雨水を回収する漏斗を作るぞ!」


「でもどうやってこのタンクからお水を出すの?出ぐちがないよ?」


 ふふふ。俺はその時、家から持ってきたバッテリー式電動ドリルを回転させた。


「なかったら出口を作ればいい!」



 ――キュインーーン!!


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