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185 山賊!?


「はぁっ、はあっ」


 俺は今、息を切らせながら坂道を登っている。もちろん走って。


「さ、坂道ダッシュなんて……何年ぶりだろうなっ、はあっ……」


 坂道は思ったよりも長く、50メートルはゆうに超えている。


 そして坂を登り切ったとき、俺は安堵した。

 そこから先はなだらかな下り坂だったのだ!


「あー良かったーー……早速アイツらに伝えに行こう」



 ――ダダッ。


「おーい。坂登りきったら後はゆるやかな下り坂だ!この坂さえ登りきれば()()だ!」


 俺は坂の下のアイツらのいる所へ戻りながらそう叫んだ。


「おおーー!!」


 二人の威勢のいい歓声が返ってきた。

 見ると、その場所にはかなりの荷物が下ろされていた。


「おじ、ガソリン満タン入ったよー!」


「サンキュー、ターニャ!えらいぞ」

「えへへー」


 ターニャの笑顔に癒された後、俺はまずセローを見た。

 セローにそれまで積み上がっていた荷物は半分程になっている。


「カイトさん。これなら多分余裕っす!」


 パルルルル……。


 ミルコは荷崩れ防止のシートをかけてしっかり結び、セローを運転して坂の方へ移動していく。


 そして半クラでアクセルをふかし少しづつ坂を登っていった。



 ――パルルルルルルッ。!!ギシッ、ガクンッ。ジャリジャリジャリッ!



 しっかり登ってる!!


「おおっ!やったぜミルコ」

 ガスパルも思わずガッツポーズだ。ミルコからも笑顔がこぼれる。


「カイトさん!これは大丈夫っす。行けます!」


「うん、坂の途中で急に角度がつくような場所は無かったし安心していい。そのまま慎重に行ってくれ」


「了解!先に行って荷物下ろして戻って来ます!」



 ――パルルルルゥゥーー。



 しっかり坂を登っていくミルコをしばし見守って、次に俺はカブの方を見た。


「カブ、お前の方はどうだ?」

「……ちょっと試してみます!」


 ――ドゥルルルルッ。


「あ、カイトさん乗って下さい!」

「おおっとそうだった。後タイヤに荷重かけとかねーとな」


 俺はすぐにカブに乗り込んだ。


「……うーん」

「どうした?カブ」

「やっぱり、ターニャちゃんも乗ってくれますか?まだ空転しそうで怖いです」


 カブは真剣な顔つきでターニャをリアボックスに促す。


 するとササッと身軽な動きでボックスに入り、

「ターニャおもり役!」

 と誇らしそうにつぶやいた。


 お、ちゃんと分かってるじゃねーか。いいぞー!



 ――ドゥルルルー……。


「あっ、カイトさん!コレは行けます!」


「よし、ゴー!」



 ――ドウルルルルッ!ジャリジャリッ!


「おおーっ!さすがカブの1速だ。耕運機と呼ばれるだけはある」

「はっはっは。任せてください!日本の道路と違い僕の1速がここでは大活躍ですね!」

「カブは力がつよい!」

「ターニャちゃん。その通りです!」

「せろーはもっとつよい!!」

「……」

「いや、黙るんかい!」


 排気量の差はどうしょうもないぜ。



 俺とミルコはそうやって2往復して、再び荷物を全部積み直した。


 ――トゥルルルルー。


 最後にガスパルが登ってきた!

 ガスパルに関しては荷物の積み下ろしはしていない。なんせ荷物が段ボールだからな。


 そしてこれでこの急坂は全員無事に乗り越えたことになる。


「よっしゃー。これで何とかこの難所はクリアだ!」

 俺は満足感と共に笑顔を見せる。


「おう!やったなカイト!!ってか俺達、結構いい動きしてね?」

「それ、俺も思うっす!ターニャちゃんもしっかり給油してくれましたしね。ははっ」

 皆も同様に誇らしげな様子だ。



「いやー、しっかしこの50メートルの距離を走り切るのに30分はかかっちまったな……もっといいやり方があったかも知れねえけど、これで精一杯だったわ」


 俺は斜め上を見て感想をつぶやく。

 例の「木の実」を俺が使って馬鹿力で後ろから押すというのもアリかと思ったが……あれは貴重品だ。さすがにまだ使いたくなかった。


「いやっ、カイトさん。とんでもないです!あの場面で横着してそのまま登って、荷物やバイクに何かあったら取り返しがつかない。今のこの判断間違ってないっすよ!」

「そうだぜ。カイトはその辺すっげー慎重っつーか頼りになるから俺達めっちゃ安心できるんだ!」


「はっ。そ、そうか……」


 二人の励ましに俺はちょっと照れながら笑った。ターニャもなんか思い出しながらそれっぽい事を言って励ましてくれる。


「いし……いしばしをたたく!おじは」

ことわざと倒置法まで使うとはやるなーターニャ」

「あっはははは」

 一同爆笑。




 ――ドゥルルルン。


 そしてまた俺達は再び走り出した。


 まだ昼をちょっと過ぎた頃だ。走行距離は300キロを超えているが、ガソリンはさっきターニャが3台全部に入れてくれたので問題ない。


 しかしカブにももうちょっとタンク容量があればなぁ……と考えてしまう。4リットルちょっとしかないのだ。




 ……それから俺達はずっと山の中を進み、やがて日が沈んできた。辺りは夕焼けに染まっている。

 走行距離は500キロを超え、それまでに俺達は再び給油をした。そしてもうじき3回目の給油をしなければならない。


 流石にかなりのガソリンを使うな。



 3度目の給油を済ませ、再び俺達は走り出す。

 走っているのが山の中だからか、かなり薄暗い。ちょっと心細くなってきた。



 ――パッパーッ。


 お!?先頭のガスパルがホーンを2回鳴らした。俺達はそれぞれのバイクを停車させる。


「どうしたー?」


「あのよ、別にビビらせるつもりはねーけど……山賊が襲ってくるのって暗い時が多いんだ」


「いや、恐怖でしかねえぞ!」

 でもまあ確かに襲うなら暗がりな気はする。


 ここでガスパルはちょっと悪そうな顔をして俺達に提案した。


「もし盗賊が出たらよ。こういうのはどうよ!?上手く行けば無傷で抜けられるぜ?」


「ガスパルさん、具体的には?」


「ふふ……まずな……」



 ……。



「おおー。なるほどな……!!」

 ガスパルの秘策を聞いて俺は「それはいい!」と本気で思った。

「クックッ……確かにいいっすそれ!」

 ミルコも子供に戻ったかような顔で含み笑いしている。


「面白えしマジで実際使えるんじゃね!?それで行こう!」

「おう!!」

「とうぞくたおす!!」

「い、いや。倒すんじゃないぞ」


 こういう時やたら張り切るのはターニャの性格なのか?



 ――ドゥルルルン。パルルルル。


 辺りはかなり暗くなった。

 盗賊の気配はない。と思っていた最中……。



 ――パーッ!!



 ガスパルのホーンが――1()()鳴った。


誤字報告ありがとうございます!

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