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160 やったるぜ!


 俺は興奮しながら答えた。


「ウチのスーパーカブの方は2~3日で準備は出来る!新聞配達業務もまだ先だし、ガソリンはもうちょっと備蓄を作っておかないとダメだが2日あれば出来るだろう」


「キルケーの定期便は?」


 俺はちょっと考えてセシルに答えた。


「今んとこ6日に1回の定期便だから、5日も空けばその間に往復はできるだろ?前回のゼファールの時と比べて距離的にはどれぐらいだ?セシル」


「レブルは大体()ぐらいの距離ね」


「ば、倍……か!?」


 流石さすがに俺もちょっと引くぐらいの距離だった。ちょっと体力つけるために筋トレでもしとこうかな……。



 そのとき、玄関から聞き慣れたカブの声が聞こえてきた。


「カイトさーん……。聞こえましたよ!猛烈に遠いじゃないですかー。いやー……、でも楽しみですねー!!あっはっははは……」


 カブの少し自虐混じりの笑い声に俺も自嘲気味に返す。


「ゼファールの時が東京大阪間ぐらいなら今回は東京福岡間ぐらいあるぞー!やべえぞーこりゃあー……」

「ながたび!わくわくー!」

「お前だけはいつも元気だなターニャ」

「うふふー。おじとたび、たのしい!!」


 ターニャはまるでお祭りでも始まるかのように嬉しそうにはしゃいでいる。俺は苦笑いした。


「あ、でも今回俺とターニャだけじゃなくてもう一人……、物量によっちゃ二人連れて行くぞ。アイツ等もやる気十分だろうしな」


 もちろんミルコとガスパルの事だ。こういうときに人材が確保できてるのは最高に心強い。

 そしてセローと予備のカブ90が2台の計4台……、準備は本当に出来ている!


「おー!ミルコにガスパルも付いてくる!?うぇーーい!!」


 ここでセシルがちょっと心配そうに俺を気遣う。


「でもカイト。ターニャも一緒で大丈夫?もし大変なら私が預かるけど……」

「むっ」


 ターニャはセシルに「何をばかな!」とでも言わんばかりの顔を向けて抗議した。


「ターニャぜったい行く!カブとたびするー!!」


 俺はセシルと顔を合わせ、お互いクスッと笑った。

 ターニャの意思の固さは俺達の知る所だ。


「じゃあ行ってらっしゃいターニャ。旅先でカイトを助けてあげてね」

「うん!」


「コイツ結構役に立つんだぜ?ゼファールん時も沼でスタックした時に活躍したしな!なあターニャ?」


「……」


 ターニャはちょっと斜め上を見上げて必死で思い出している。


「……あ!うん。道がドロドロで、カブのタイヤがすべってうごかなかったけどターニャが箱の上にのったらうごいた!てんさい!」

「へー、すごいわね。ターニャもスーパーカブの一員だね!」

「そだよーセシル。次もおじをたすける!」


 セシルは黙ってうなずき俺に確認してきた。


「じゃあカイト、国の方にはそう説明しとくから」

「ああ、頼む」



 思わぬ大仕事が転がり込んできて、俺は大変さと共にニヤリと笑いが込み上げるのだった。



「……カイトさーん……」


 ん?

 カブが珍しく控えめな声色で呼びかけているな。玄関行ってみるか。



「……どうした、カブ?」


「ちょっとハッキリ言っておきたい事があるのです!」


 な、なんだ??カブのこの真剣な表情は!?

 俺は驚きつつもカブの次の声を待った。

 するとそれは意外なものだった――。



「カイトさんは()()()()ですよね?」



 ……何言い出すねん!?


 とりあえず答えよう。


「今年43歳のおっさんですが何か?」


「という事は、そろそろ体に色々とガタが来始める頃です!」


 依然いぜんとして真剣な顔のカブ。

 馬鹿にしているわけではないようだが、カブの真意がよく分からん。


「……まあ、俺は体力ある方だから特に何ともないが。てかお前何が言いたいんだ?」



「カイトさん。次の貿易輸送では無理せず寝て下さい!僕にぶっ続けで乗り続けるのってかなり体に負担かかるハズなので!」



「む……!!」


 なんとカブは俺の体を気遣きずかってくれたのだ……。正直ちょっと意外だ。


「寝るって後ろの荷車でか?」


「はい、しっかり横になって下さい、その間僕が運転しますから。自分が大丈夫だと思っていても体は悲鳴を上げている――というのはよくあるみたいなので……。カイトさんには長生きして欲しいんです!」


「お、お前……」


 俺は不覚にも少し感動した。


 たしかに俺は乗り物に乗ってる時は興奮して妙なテンションになっている事がある。

 疲労を脳内麻薬で無理矢理打ち消しているということか!


 うむ、カブの提案、喜んで受けよう。



「分かった。サンキューカブ。お言葉に甘えるわ」


「任せて下さい!」



 ……。





 次の日、俺は定期便をガスパルに教えるために会社の本部に出向いた。


 するとガスパルはすでに到着していた。あれ?ミルコもついでにいるぞ!?


「あれ?俺()りませんか?」


「いや、せっかくだからミルコにはセローに乗ってもらおう」


 今日はカブとセローの2台で本部へやってきた。

 カブの後ろには荷車、その中にはしっかりターニャが潜んでいて、二人に手を振っていた。


「ミルコ、ガスパル。はいたつがんばれー!」


「おうよ、あったりめーだろ!」


 ガスパルはやる気は十分のようだ。ここでミルコが俺に聞いてきた。


「カイトさん、ターニャちゃんは仕事にはずっと連れて行く感じっすか?」


 最もな質問だ。俺は苦笑いしてミルコに答えた。


「あいつ一緒に行くって言ってきかねーからよ」

「はは、流石っすね」



 ここで俺は思い出した。


「あ、そうだ。後で詳しく話すけど、ウチでデカい案件を受けられそうなんだ。かなりの距離と物量なんだが……お前ら、行けるよな?」


「うおおお!マジ!?もちろんだぜ!なあミルコ??」


 ガスパルは気合の入った顔でミルコを振り向く。

 ミルコは目を輝かせて聞いてくる。


「物資の輸送……え、それってもしかして貿易みたいな仕事ですか?」

「ああ」

「最高っすわ!なんか俺燃えてきました!」


 ふっ。頼もしい奴らだ。


「行き先は隣国のレブルだ。輸送報酬も桁違いにデカいと思うぜ?」


「うおおおおっ!!マジ!?最高じゃねーか!!」


「楽しみっす!!」


 二人の気持ちいい返事に安心した俺は早速今日の仕事に取り掛かった。



「よし、じゃあミルコはセローに乗ってくれ。ガスパルはカブに、俺とターニャは荷車に乗って出発だ!」


「はい!」

「おう!」


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