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152 報酬だぜ!(支払う方)


ん?ルナがなんて?


従業員の一人が嬉しそうに話してきた。


「あ、あの人ウチでめっちゃ人気あるんですよ!男にも女にも。仕事は出来るし優しいし!」


へ、へー。優しい!?俺、すげー睨まれてたけども。


コリーもニヤニヤしながら同意する。


「僕はあの人の声を聞くために出勤していると言っても過言ではないぐらいです!そうやって朝癒されてから仕事して昼休憩ついでにギルドへ行ってセシルさんを眺めて癒されるのがルーティーンです!」


俺は爆笑した。


「ぶはははは!コリーよ、女に癒される事ばっかじゃねーか!?」

「コイツこういう奴なんで」


一同大笑いで場が和んだ。はは、なんだキャットの奴らいい感じだなー。



ここでコリーはギルドでも見せたようなうらやましそうな表情で迫ってきた。


「カイトさん、僕もルナさんと二人で商談したかったですー」

「コリーはあのねーちゃんと話したいだけだろ!ってかこっちは俺一人じゃなくて三人だったぜ?あそこのアイツと、……それからもう一人いたし」


俺はガスパルの方を指差した。お前も話に加われ……と暗に促したつもりだったが、ガスパルはちょっと斜めを向いて手を軽く振って拒否ってきた。

なんだ?人と話すの苦手か?



――しばらくそんな風に談笑したあと、芋を食い終わりコリー達は焚き火の火元を消した。


俺は感謝の意を示した。


「コリー、皆。ターニャ(コイツ)のこと、ありがとうな」

「芋ありがとー!ばいばいー!」

「カイトさん、ターニャちゃん。またギルドで会いましょう。さよならー」

「……」


俺とターニャ、そしてガスパルは再びカブの元へ歩いていった。


ターニャは珍しくちょっと気を使ったような顔をしていた。


「おじ、ターニャいなくてしんぱいした?」


俺は歯を食いしばり顔をクワッとさせてターニャの顔に近づけた!


「したに決まってんだろがー!!うりゃーー!!」


ターニャの頬をグニュッと伸ばしてやると、「う、うひ……」とちょっと笑いながら答えるターニャ。



「でも見つかって良かったじゃん。カイトめちゃくちゃ焦ってたしよ」


俺とターニャのやり取りを見ていたガスパルはそう言って笑っていた。俺もちょっと照れた様に笑いながら、ガスパルに返した。


「まあな、……ところでガスパルはああいう雑談とかって苦手か?」


するとガスパルは得意げな顔で言い放った。


「すっげーーーー苦手……っつーか無理!!ああいう初対面同士の奴らと仲良く笑い合うなんて絶対無理!!カイトはよくあんな事出来るな。あ、でも逆にケンカならめっちゃ得意だぜ?」


「ケンカしたらダメだろ」


俺は呆れて突っ込んだ。

やはりこの男、やから体質が根付いてやがるな……、バダガリ農園行かせたらどうなるんだ!?

などと俺は心配になってくるのだった。



「あ、ターニャちゃん!いたんですね」


そこへターニャの探索に協力してくれていたミルコがひょっこり顔を出して合流した。


「おう、ミルコもありがとうな!コイツ、キャットの社員達の焼き芋会に勝手に参加してやがってな!」


「あっははははは!さ、さすがターニャちゃん。将来大物っすね。でもあんまり心配かけちゃダメだよ」


ターニャは真面目な顔で答えた。


「わかった!こんどからおじに言ってから行くー!」

「よっしゃ。是非そうしろ!」

「うひゅー」


俺はターニャの頭をガシガシ撫で回して褒めてやった。



色々あったが俺達はやっとカブの元へと帰ってきた。


「あ、皆さん、お帰りなさーい!」


なんかカブの声を聞くとホッとするな。

俺は次の仕事の予定をミルコとガスパルに伝えた。


「新聞はまだ先だから、次の俺達の仕事はバダガリ農園!ガスパルに配送ルートを覚えてもらう」

「よっしゃー!どんと来いだぜェ!!」


「あ、ガスパルさん」


ここでミルコがガスパルに忠告した。


「言っときますけど、バダガリ農園はウチの会社スーパーカブの大口取引先なんで――」


ガスパルは首を傾げながら答える。


「んん!?だったら何だよ?」


ミルコも困ったような顔を見せながら悩ましげに言葉を選んでいる。


「えーっと……、まああの、……いつもよりちょっと丁寧な対応をお願いしますよ」

そんな事を言われたガスパルは案の定怒り出した。


「馬鹿野郎。最初から弱気になってどうすんだ!相手が大口だからって舐めた態度で来やがったらぶっ潰すだけだ!!」


俺とミルコは頭を抱えた。ガスパルは続ける。


「そのバダガリ農園で顔合わす奴はどんな奴だよ!?俺も別に普通のやつなら普通に対応してやるぜ?」


俺は非常に困りながらガスパルに答えた。


「バダガリは()()じゃねえ。良いか悪いかはともかく、とにかく普通じゃねえ。規格外のバケモンだ!」


「くっくっく……」


うつむいてニヤァとまた悪そうな顔で笑う。

火に油だったようだ……。俺は後悔した。


「バダガリ農園……、行くのが楽しみだぜ!じゃ、俺は帰るわ。またな!」



そう言ってガスパルはカターナの方角へと帰っていった。


ミルコは心配そうな表情でガスパルを見送っている。


「あの人はもう少し丸くなって欲しいですけどね」

「人間の性格なんてほとんど変わんねーよ。アイツも40近い歳だし。よっぽど何か凄い経験でもないと」

「いやー、人間って歳を取るごとに柔軟さが無くなっていくって本当なんですね!バイクの僕にはよく分かりませんね!」


カブが目をつぶりながら感想を述べている。


「お前はボディーが劣化するだけで、精神は変わらない感じなのか?」

「はい!フレッシュさには自信があります!」

「ふっ、そうか。それは何よりだ」

「カブ君。今後ともよろしくね!」

「はい。お任せください!」


カブはヘッドライトをパッシングさせて力強く答える。


よーし、じゃあ帰るか。


空を見上げると日がやや傾いていた。今日ルナに貸してもらった懐中時計かいちゅうどけいを見てみると時間は3時を示していた。


俺はポツリとつぶやく。


「今日は辺境の村へ行くには遅すぎるな」

「軽油のまとめ売りの話ですか?」

「ああ、これから冬だし需要は……あ!!」


一つ忘れていた。ガスパルに給料支払わねーと!


――ドゥルルルン!


俺はガスパルを追いかけた。

いくらアイツの足が早くても流石にこっちの方が速い。すぐ追いつき1500ゲイル(6000円相当)を支払った。


「え!?カ、カイト……今日って俺仕事してなくね!?」

「一緒に営業に出ただろ?大体時間的にそのぐらいの額だ」

「お、お、おう。いや、……うん。ありがとう……」


ガスパルはしばらく受け取った給料を眺めてポカーンとしていた。そして顔を上げ、真剣な目で俺を見つめて言った。



「俺……、頑張るわ」


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